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「魔女狩りに遭うなら返り討ちにすればいいじゃないか」

作者: 千子

「魔女狩り?」

数年前に拾ってきた人間の子供が汗を垂らして走って帰ってきた。

「そう!魔女を集めて殺しちゃうんだって!」

「おや、それはこわい」

けらけら笑いながら答えると、子供は顔を赤らめて怒った。

「なんで笑っているんだ!あんたもみんなも何もしていない!なのになんで殺されなきゃいけないんだ!」

自分のことではない理不尽に泣く子供の背をゆっくりと擦って落ち着かせる。

「大丈夫。みんな死んでいないよ」

「え?」

「人間に捕まるほど魔女は馬鹿じゃないさ」

みんな身代わりのゴーレムを自分に似せて遠くへ逃げおおせている。

「しかし、この辺もそんなに物騒になったのならこんな辺鄙な場所もいつ狙われるか分かったもんじゃないね。他国でも行くか」

考えて、顎に手を当てる。

どこがいいか。

寒いのも暑いのも嫌だな。

居心地がいいこの場所を離れるのは名残惜しいけれど、それでも厄介事に巻き込まれるよりはマシだ。

「さて、そうと決まれば引越しの準備だ。お前も準備しな」

子供は目を瞬かせた。

「俺も連れて行ってくれるのか?」

「こう見えても面倒見はいいんだ」

へらりと笑うと子供はまた泣く。

この子供はよく泣く。大きな瞳が溢れないか時折不安になる。

「泣き虫さん。早くしないと置いて行っちゃうよ」


笑ってそう言っていたはずなのに。


それから数年後、他国でも魔女狩りはあった。

わざわざ森を焼き、自国を苦しめてまで駆除したいものかねぇ。

煙の匂い、焼ける木の音も全部不快だ。

「まさかまんまと人間に捕まるなんてねぇ」

「人間の子供を人質にするなんてなんて奴だ!」

「人質じゃなくてうちの子だよ」

「魔女が!人間の子供を攫って何を言う!」

あ、話が通じないタイプだ。

そう思っていると、前の方から悲鳴が聞こえた。

少年は青年になり、剣の腕前は確かに誰よりも強くなっていた。

煙を掻き分けて現れるのは、泣き虫というにはすっかり精悍な青年だ。

「何をやっているんだ。早くしないと置いていくぞ」

手足を縛られていたロープを切られ自由の身になる。

「いつの間にそんなに強くなったんだか」

「守りたい人がいるなら、守れるようになるべきだろう」

周囲に人が集まってくる。

青年になった子供は笑って言った。

それには覚悟が決まっていた。

「魔女狩りに遭うなら、返り討ちにすればいいじゃないか」

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