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第48話 わたしの新しい人生(3)

 その後、新聞などの媒体を通して、式典以降のおおまかな流れを知ることができた。


 王太子が起こした不祥事に王都は騒然としたようだが、移ろいやすい人々の関心はそう続かずに、落ち着くところに収まったようだ。


 リアム殿下が率先して調べを進め、王太子たる資質が疑われる行動の数々が明るみに出たアーサー第一王子は廃太子となり、島流しとなった。


 当然その余波は大きく、王になるはずだった息子の凋落にショックを受けた王妃は倒れてしまい、公務どころではなくなったらしい。


 気落ちした王は責任を取るため退位の意向を示し、その後継として脚光を浴びたのは、言わずもがなリアム第二王子だった。


 その擁立にほとんど反対がなかったというのが不思議だったが、ルシウス様いわく、リアム殿下は特務隊時代に重臣たちの後ろ暗い秘密を押さえていたというから驚きだ。

 意外と抜け目のないあの方がこんな未来を想定していたのかどうかは、本人のみぞ知るところである。


 それから、わたしにとって最大の気がかりであった父ルドルフの件も決着した。とある港で捕まった彼は、爵位剥奪のうえ無期労働の刑を言い渡されたという。


 税金逃れにはじまり、鉱石船を使ってアーサー王子の密貿易に加担したことに加え、過去の横領や詐欺など複数の罪に問われた父。

 その心はわからないが、彼の自白の中に、娘のわたしに関わる証言はなかったらしい。


「大丈夫か、アレクシア」


 この話を部屋に持ち帰り、腰を落ち着けて説明を尽くしてくれたルシウス様が、わたしの心情を慮って表情を曇らせた。


「はい。これ以上ない、ありがたいご判断だったと思います」


 肉親としての情があるわけではないが、もし父が死刑になっていたら、わたしの心にもなにがしかの傷が残ったと思う。父には命が助かったことをありがたく思い、反省するまでしっかりと働いてほしいと願うばかりだ。


「君への咎めはないから安心していい。むしろ陰謀に巻き込まれそうになりながらも前王太子の悪事を暴いた立役者であると、議会で結論づけられた」


「ほ、本当ですか? でも立役者だなんて……」


「俺がなんら気を回すことなく、満場一致で決まったんだ。君はもっと自信を持っていい」


 彼がわたしを励まそうと、それまでいた場所を移し、隣にきて肩を抱いてくれる。

 優しさに甘えて体をもたせかけ、目を閉じて安らぎに身を委ねた。


(自信というには実感がわかないけど……)


 わたしが積み上げてきた行動がなにがしかの成果に繋がったのだとしたら、喜ばしいことだと自分を誇った。


 しばらくしてシャドナ公国からも、訴状の一件についてあちらの過失を認める報告と謝罪があった。

 姫の虚言に振り回されたシャドナ公爵は深く恥じ入り、アルテナ王国およびレオパルド家へ相応の補償をする意向だという。


 それからイレーヌ姫については戒律が厳しいと有名な修道院に送ったとの顛末も記されていた。


 承諾ついでにこちらが受け取ったままになっていたルビーのアクセサリーの返却も済ませ、すべての目途がつく頃には、季節がひとつ進んでいた。


     *


 澄んだ夜空に三日月が浮かぶ晩、屋敷の敷地内にある聖堂で、わたしたちはふたりきりで誓いの式を挙げた。


「アレクシア。命尽きるまで、君を愛すると誓う」

「はい、ルシウス様……あなたと添い遂げると誓います」


 慎ましやかに手を取り合い、指輪の交換を行う。


 ふだんつけられるようシンプルな形にしてもらった結婚指輪は、ルシウス様とお揃いのデザイン。先代から引き継がれた儀礼用の金の指輪を溶かし、わたしたち専用のものとして生まれ変わらせたものだ。


 特別なこの指輪には、永遠を意味する精巧な彫りが入り、それに飾り立てられるように互いの瞳の色をした宝石が埋め込まれている。


 その重みを噛み締めながら見つめ合い、唇をそっと重ねる。すでに慣れ親しんだ感触だけど、熱が触れた瞬間には大切な人の特別になれたことを再認識して、目の裏が熱くなった。


 わたしにとっては初めての結婚式であるが、世間的にはすでに行われた式であることから大袈裟にはしないと決めて、広くは知らせずにおいた。


 それなのにいざふたりで聖堂を出ると、ガラス灯で明るく照らされた広場にはロキ君やヒルダさん、ジョニーさんをはじめとする屋敷の面々が集い、笑顔でわたしたちの到来を待っている。


「旦那様、奥様、おめでとうございます!」

「お幸せに! ずっと我々の主人でいてください」


 祝辞の声を投げかけられ、感極まって動けずにいるわたしをルシウス様が抱き上げて、周囲から「ヒューッ」と歓声が上がった。

 おまけに花籠を持ったロキ君とヒルダさんが楽しそうに花びらを散らしており、視界が色彩豊かで賑やかだ。


「みんな、ありがとう……!」


 愛する人の腕に抱かれながら、夢のような花道をくぐり抜ける。

 温かい拍手に包まれて、わたしはようやくの確信を覚えていた。


 もう胸を張って言える。この手で幸せを掴み取ったのだと――。


お読みくださり大変ありがとうございました!

もし気に入って下さったら、下の☆☆☆☆☆からの評価などをしてくださると、励みになります。


次話は最終回。幸せいっぱい、ほんのり【R15】になります。

よろしくお願いいたします……!

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