欠落
掲載日:2025/02/07
星に手が届きそうな夜はいつも耳鳴りがする。
待ちくたびれたよ、聞かん坊。
後ろ髪を引かれて見やるも、霞がかった白桃がひとつ。影の影は?
花が。両手に溢れんばかりの花が。
軽く伸ばした手をさっと握りしめる。
捕まえた?
霊魂に瀕しても似たような振る舞いをするのだろうか。
子供の無邪気な声が腹に染みる。
空き缶がコロコロと転がっていく。
手をぱっと開く。
もちろん何も捕まえてなどいない。
散ってしまった花びらなど誰の目にも止まらないのだ。
完璧な造形の赤いバラの花でさえ。
ワシの風切り音。カニの筆使い。羊の手紙。
ゲームセンターのメダルを人差し指と親指で作った輪っかに潜らせる。
そうだ。
明日は欠けた豆腐の角を探しに行こう。
ぽっけから機械仕掛けの木枯らしを出して地面にそっと置く。
ねじをジリジリと回していく。
ちょうど4回転半ぐらいでいいかな。
すっと手を離す。
さあ行っておいで。
窮屈なのは頭蓋骨の中だけでいい。
3色問題。正2角形。片翼の天使。0等分したケーキ。
欠落とは形を変えた美しさなのだ。
紀元前1423年の薄明。
かつての星は海。
いつかの月は太陽。
美しい物は満たされているのと同じぐらい欠けてなくちゃならない。
完璧なまでの美を欲せ。
歪なまでに。
そうして星と踊るのだ。




