不条理をぶっつぶせ!
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「先生、この写真、見て下さい」
そこにはショッピング・モールがすっぽり入る程の巨大な円形を型どった施設が映し出されていた。ちなみに円形の城壁に当たる部分は団地になっている。
「これはカルト教団のモノか?」
先生と呼ばれたマンガ家はアシスタントに、そう返した。
「いえ、工場ーーと本人達は宣言しています」
写真を手渡した佐藤は詳細を述べる。
日本政府に不満を持ち、相続税を将来、ゼロ円にし、いつの日にか公国として日本より、独立を目指している事も付け加えた。
「しかし、元・貴族等は居ないのだろう?」
先生に問われ佐藤は肯定していた。
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「何を製造している?」
先生は更に問うた。パワー・グミ・・ですと答え、食すれば精神を操作され服従してしまう効力があると佐藤は説明した。
「違法だろ!」
先生の訴えに佐藤は否定せず、独裁国家の首長クラスに輸出しているとも公開した。
「かなり、儲かっているんだろう?」
やはり行き着く所は金だ。金が無ければ人を指導する志に余裕は生まれない。
「地下にシェルター状の王室(主催者室)があり、その脇に工場があります・・」
佐藤は得意気に機密を伝えた。更に王室のある中央棟の地上階には幹部ではなく、入居したての一般・作業員を居住させている情報も放出した。
「人が石垣、人が城か・・」
先生は、空爆に苦しむIS(イスラム国)とは違う防備の方法論にアイディアを見せつけられていた。
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「面白いが・・ちょっと古いな」
先生は、そう発し、写真を突き返した。
佐藤には情報の出ドコさえ尋ねない。要は、マンガの題材になるか、否か、であった。
先生は父親が死んでから相続人となり、連載が完了していた事もあったが新作を立ち上げず、敢えて、無気力に過ごしていた。
「二百万(円)で済んだ」
相続税の話である。いか程の相続なのか佐藤は羨んだ。彼の貯金は半生、十万が限度額だ。
「独立のチャンスだろ」
背中を向けかけた時、先生は佐藤にそう方針を投げ放った。プールに出掛けると云って、またラブ・ホにでも行くのだろう。デリヘルの名刺が時によく財布から食み出ている・・
「おい、聞いてて、悪かったが・・」
廊下に居た先輩アシスタントの田中吾が声を掛けてきた。無論、先生が外出してから、である。”オレと組んで、その原案、やらないか?”先輩の誘いはハツラツとしていた。
*****
「実は、この写真、CGです」
佐藤はデッチあげである事を説き始めた。
「そんな事は、どうでもいいんだよ」
田中は先生が独立を許した事に光を感じた。
やる気の無い人間に良い原案を渡しても意味が無い。いっその事、この作品で逆転劇ーーと、いこうじゃないかとも促した。
「しかし、ボク達は所詮、落選組ではないですか・・」
佐藤の弁は実直を表していた。
「まず、今回、二人で組むのは初めてだ」
田中はプールに準備体操しないで飛び込んでみようとも云った。また
”金持ちが更に金持ちになる法律が悪いんだ。政治家が相続税・百パーセントにする訳が無ェ。そんな事したら、自分の息子が立候補・出来ねェだろ!”
そうも、叫んだ。
ようやく佐藤の顔に笑みが生まれた。
作品は残す事に意義がある。即ち、不条理に守られている奴達がダッセイだけなんだーーと。
(了)
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