理想 4
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俺はルセル。ハウレリア王国国王から、ナバラの街を襲ったドラゴンを討伐したことから英雄の証を得た冒険者である。今回の依頼は漆黒の森にある古いダンジョンの調査。大司教様は魔力の流れを感じることが出来、その結果、今攻略中の漆黒の古ダンジョン内で膨大な魔力が消費されたらしい。
(たしかに、本来ならば入口入ってからすぐにモンスターがいるはずだが現在57層で戦ったのは10匹程度だけ。何かがおかしい。)
それに加え、ダンジョンの壁が古いとはいえもろくなっており、いつ崩れてもおかしくない。しばらくすると、何やら声が聞こえてきた。
「もう!なんで開かないのよ!こんな薄暗くてジメジメしたところなんてイヤッ!」
そこにはビスマス結晶のような色の魔力門があり、その扉を一生懸命開けようとするサキュバスがいた。紫がかった黒い髪と翼。きわどい服。背は155㎝ほどでサキュバスにしてはスレンダーな体系。そう、あるといえばある部類である。サキュバスは魔族の中の1つ、つまり敵である。今も勇者パーティを中心に戦争が起こっている。
「早く開きなさいよー!もうっ!」
ボキッ
鈍い音を立て魔力門の取っ手が折れる。方足を扉に突っ張るようにして無理に開けようとしていたサキュバスはバランスを崩し転がっておれの前へと倒れてきた。
「痛いじゃない!って、え?人族?」
俺とサキュバスとの目が合う。
「きゃーーー!」
すさまじい声で叫びながらダンジョンの奥へと走り去っていった。すると、すぐに叫びながらこちらへと走ってくるサキュバス。その後ろにはキメラが3匹。おそらく叫び声に反応して集まったのだろう。
「私を助けなさい!」
「なぜ?俺はあなたの敵ですよ。」
「あんたはまだこうやって話が通じるけどあいつらは違うでしょ!だから助けな…助けてください!」
俺は剣を抜き、切った。
「ヒィッ!」
ばらばらとキメラたちは崩れ落ち、一方のサキュバスは俺の後ろで腰を抜かしていた。
「た、助かったわ。礼を言うわね。」
「なんでそんな偉そうなんだ。別に助けなくってもよかったんだぞ。」
「そ、そうわね。助けてくれてありがとう。」
「まあ、ここまで弱そうな魔族は初めて見たしな。」
「なっ!まぁ、そうね。私は何もできなかった。」
「で、なんでこんなところに来たんだ?」
「そ、それはね。」
彼女の名前はリセリア・ヴェルフェゴール。今戦っている魔界の王、ゴルゾーラ・ヴェルフェゴールの一人娘らしい。戦争が激化してからというもの、父と遊ぶことが出来なくなり終いには初めて怒鳴られた。自分にかまってほしいのと仕返しをしたくて、父が大事にしていて戦争では戦況をひっくり返すような代物、魔力門を使ったらさっきのところに出てしまい、自分ではどうすることもできなくなっていたところだったそうだ。
「ちなみにここはダンジョンの中だ。魔力門を形成するときには大量の魔力を消費する。考えられたものだな。」
「えっ!てことは私ここを出るためにはダンジョンを進まないといけないの?」
「進むんじゃなくて上っていけば出ることはできる。」
「じゃあ、上に…」
リセリアが何かを言おうとした途端、すごい音がダンジョン内に響いた。上の階(地上)からは砂煙が押し寄せてきた。
「けほっけほっ。いったいなんなのよ、今度は!」
「どうやら、魔力門で消費した魔力が大きすぎてダンジョンが形を維持できなくて上の部分が崩れたようだな。」
「えっ!じゃあ外に出られないじゃない!」
「外に出るにはもう一つ方法がある。」
「なによ!」
「ダンジョンを攻略すること、つまり最深部まで行ってダンジョンコアを守っている守護神を倒せば外に出られる、はずだ。」
「はずって何よ!」
「今までにダンジョンをクリアできたのは、人族の第1代の王のみで、そこからダンジョンコアをもって生還し、城に絶対防御の守りの範囲魔法を作り上げたという話があるからだ。」
「おとぎ話じゃない!」
「そうとも言えるが、城には実際に見たこともない大きさの魔石があってそれで防御の範囲魔法が張られている。この話は嘘とも言い切れない。それに上層部が崩れてしまった今、方法はこれしかない。」
「で、でも…」
「ここで野垂れ死ぬよりましだと思わないのか。」
「でも、自慢でも何でもないけど、私は戦ったことなんてないわよ。」
「魔族は魔力を人族よりもはるかに持っている。俺が教えるから覚えていけばいい。」
「そ、そんなことしてもいいの?敵に塩を送る様なものだけど。」
「君が言ったんだろう。俺たちはこうやって話が通じるけどこいつは、このダンジョンは話が通じない、だろ?決着は外に出た時にすればいい。」
「た、確かにね。」
ぐっぐぅ~
盛大におなかが鳴った音がした。リセリアは顔を真っ赤に似てこっちを睨んでいた。
「し、仕方がないじゃない!ずっとここに閉じ込められていたんだから!」
「じゃあ、飯にするか。」
「えっ!で、でも人族の料理なんて…」
「お、おいしいわ!これおいしすぎるわ!なんて料理なの!」
「これはシチューという料理だ。牛の乳をメインに野菜や肉を入れて煮込み料理だ。」
「このパンととっても合うわ!」
「お口に合ってよかったよ。」
「ま、まぁ、人族にも1つや2つ良いものは持っているようね。」
「じゃあ、もう食わなくていいぞ。」
「噓です!人族の料理はおいしいです!」
魔族でも3大欲求には逆らえないようだ。
58層は先ほどのキメラがいただけだったようですんなりと59層への階段は見つかった。
「服をつかまないでくれ。歩きづらい。」
「で、でも…」
「しかたがない。」
俺は亜空間倉庫からひもを取り出し、無理やりリセリアの腰に回して取り付け、端を俺のベルトに巻き付けた。
「なんでこんなことするのよ!」
「君がくっついてくるからだろう。こうすれば万が一何かあったとき、君はすぐに隠れられるし俺は戦いに集中できる。」
「そ、そうね。」
しばらく進んでいっても、ほかのダンジョンと比べて数は少ないが深くなるにつれ強くなってきてはいる。反撃を食らうことも増えてきた。
「今日はここで休むことにする。」
「だ、だいじょうぶなの?」
「おそらくは、大丈夫だ。だが、魔力門によってこのダンジョンは今、空腹状態だ。おそらくこの先は何が何でも俺たちを食べようとしてくるだろう。」
「た、食べるって?」
「魔族は知らないのか?ダンジョンだって立派なモンスターだ。冒険者などをお宝で釣ってダンジョン内に生み出したモンスターを使って冒険者を殺して食べるのが目的だ。このダンジョンは古くしかも山奥にあって空腹状態だったところに魔力門によって飢餓状態になった。自らの体を削るほどに、だ。このダンジョンは何をしてくるかわからない。だからおそらくは、と言った。」
「安心して寝られないじゃない!」
「そういうものだ。俺が見張ってるから、ほらこのテントで寝ろ。」
「あんただって何してくるかわからないじゃない!私はサキュバスよ!あんたが欲情して…」
「俺は胸が大きい女性が好みだ。」
「なっ!あっそう。じゃあ安心ね。」
勢いよくテントの入り口の布を閉め、リセリアは横になった。しかし困った。ある程度長期間潜ることは考えたが、戻ることもかなわなくなったし、なぜか喰い口が1人増えた。食料のペースは考えた方がよさそうだ。ダンジョンでは手に入らなそうだしな。ストレージ内は時間が停止するので食料は腐らないので安心できるが。魔除けと入口に音の鳴るトラップを設置し俺も体を休めた。
どうやら朝になっても状況は変化しておらず、唯一変わったのはリセリアの髪であった。寝ぐせでぼさぼさになった姿は残念ながらよりサキュバスらしさを薄れさせる要因となった。
軽く朝食を食べてダンジョンを突き進む。進むにつれ壁から色とりどりの結晶が生えて神秘的にも見えるし禍々しくも見える風景となった。出てくるのもドラゴンといった骨の折れるものが現れ始め、徐々に攻略のペースは落ちていった。現在80層、本来のダンジョンではこうはいかなかっただろう。不幸中の幸いとはこのことを言うのだろうか。
「それで、私に何をさせる気?」
リセリアに杖を持たせ、持っていた魔導書を渡したのだ。
「これが人族の魔導書で初級から超上級まで載っている。リセリアにはこれから魔法で援護を頼みたい。正直言って今の状況では俺一人では攻略は不可能と言わざるを得ない。だから君の手助けが必要だ。」
「だから、私戦ったことないって言ってるでしょ!」
「今から身に着けさせる。正直言って君は雑魚だ。仮に俺を倒して一人でここを出られても人族に捕まるのは確実だ。その時にも役に立つと思うが。」
「あっそ。まぁいいわ。教えてもらえるものはしっかりと学ばせてもらうわ。」
駄々をこねるかと思ったが以外にもすんなりと魔法の勉強は始まった。さすが魔族といったところ、初級程度はもともと知っていたものもあってすんなりと行けた。中級も初級の応用のため魔力によって解決したところもあったが、発動自体は問題はなかった。詰まったのは上級。中級の発展のようなものから独自の法則で発動するものがあり覚えるのに一苦労するのだ。あぁもう!とかなんでできないのよ!とかいいつつも練習はやめようとはしなかった。徐々に戦いに参加し2人で戦うことを始めた。
「戦うのはやっぱり難しいわね。魔法は発動までに時間がかかるし敵は動くし。あんたにあてそうになったこともあったわね。」
「最初はそんなものだ。だが、初めてにしては良く当てているし必要な魔法がわかっている。いい腕をしているよ。」
「ふ~ん。ま、まぁ、あんたがここまで教えてくれたおかげもちょっとはあるかもね。」
「よし、休憩は終わりだ。あと2階層は進みたいからな。」
「わかったわ。」
なんやかんやでこの奇妙なパーティが心地よくなってきたのは気のせいだろうか。
第85層。そこは見たこともない奇妙な大きなモンスターがいた。頭には大きな髑髏。体は巨大なムカデのような骨。ムカデは外骨格なので人族のような骨はないがもしあったらこのようになっているのではないかといった姿。アンデットのモンスターである。床も壁も天井も自由自在に動き回り、足は1本1本が剣のように襲ってくる。どくろの口からは明らかにどうであるといったものを吹き出し攻撃をしてくる。
カキン!
これは剣と足が交わったときの音。全くダメージが入っていない。むしろこっちの手がしびれるのだ。
「うろちょろして全く当たんないじゃない!」
体は大きいのに素早いのでまだ実戦経験が浅いリセリアにとっては難しい。ならば、
「リセリア、やつを狙うのはあきらめろ。やつの動ける場所を狭めるように攻撃を切り替えろ。」
「わ、わかったわ!」
地面に氷結魔法がぶつかりアイスリンクのように滑るようになる。図体がでかいこのモンスターにとっては1つ滑るだけでバランスを崩す。その時を狙って間接に剣を突き刺す。すると明らかに効いたのかじたばたしだした。
「この調子だ!」
「わかったわ!」
徐々に息があってきている。やつの足場をつぶすことは俺の行動範囲も狭くなるということ。しかし、俺が動く部分は避けて魔法を発動している。そしてついに、
「ギヤィリィ~!!!」
モンスターは消えてなくなった。ドロップ品はあの足1本。久しぶりの長期戦であった。剣を床に突き刺し、方膝を地面につき肩で息をする。
「だ、大丈夫?!」
「あぁ、大丈夫だ。リセリアの魔法、よかったぞ。今回はリセリアなしじゃ突破はまずできなかった。助かった。」
「///。ま、まぁ、私は魔族ですし、魔法ぐらい上達はあっという間にできちゃいます!」
「頼もしいな、これからも頼む。」
「わかったわ。」
「ほら、横になれ。今日はいつもより魔法を打っただろう。」
「あんたこそ、今日は膝ついて息してたじゃない。ここまでちゃんと休んでないから体力が落ちてるんじゃないの。ほらここ。」
リセリアは自分の太ももをたたく。
「なんだ、いまさらサキュバスらしいこと始めたのか?」
「今日はこういう気分なの。つべこべいわずに、ほら!」
頭から伝わる暖かさ。床とは違う柔らかさ。俺はあっという間に寝てしまった。
「…ら、ほら。いい加減起きなさいよ。」
今までとはうって変わって優しい声で起こされた。
「あぁ、おはよう。よく寝られたよ。」
「よかったわ。」
「今度は君が寝るといい。」
「私はいいからね!」
「わかった。」
「じゃあ、おやすみ。」
「おやすみ。」
人族と魔族。今戦争をしている両者は今、手を助け合っている。長く続く戦争はいったい何が原因なのだろう。手を助け合っていくことはできなかったのだろうか。そんなことを思ってしまう今日の出来事だった。
それから2人の仲は急によくなり、連携も深まっていった。リセリアは自ら言っていた通り、魔法の上達はすさまじく強くなる相手に対しても臆することなく着実に判断し攻守の駆け引きができるようになった。そしてついに、
「来たね。」
「あぁ、ついたな。」
今までとは違う、大きな石門が目の前にある。この先にダンジョンコアを守る守護神がいるはずだ。
「大丈夫か?」
「私たちなら大丈夫でしょ!」
「そうだな。」
俺とリセリアは石門に触れた。するとゆっくりと門が開いた。
開いて中に進むと地下深いはずなのに上から光が差しそこに何かが浮いている。
「あ、あれ!あれたぶんダンジョンコアじゃない!」
白い新球の物体が浮いている。2人で近づいいていくと急に砂ぼこりが舞い出し、コアの周りをまわっていく。そして徐々に形が作り出され、結果、高さ5mほどの砂の巨人となった。甲冑をかぶり大剣を構え立っている。
「くるぞ!」
砂から作られたとは思えないいかにも固そうな見た目。剣が壁に触れたと思うと壁をえぐり傷をつけた。そして、動きも早い。おそらく当たっただけで良くて吹き飛ばされるだけ、最悪は一撃必殺も考えられる。攻撃をかいくぐって剣を当てるがすぐに修復されてしまう。リセリアの凍結魔法による体勢崩しも厳しそうだ。しかし、しばらく戦っていると攻撃パターンが見えてくる。リセリアも同じようで魔法攻撃も当たってきている。足に直接凍結魔法を当ててそのあとに爆裂魔法を当てると大きく体勢を崩す。これが見えてきた糸口だが相変わらずすぐに修復され、動きも鈍らない。ダンジョンコアが核となっているのだからこちらの体力が底を尽きるのが先だろう。
「ライ!あいつの首元、何か光ってる!」
爆裂魔法によってえぐれた首元から白く光るものが見える。
「あそこにダンジョンコアがある!あそこを狙った方がよさそうだ。足元を凍結と爆破で体制を崩させた後に爆裂を首元に頼む。俺は注意がそっちに行かないようにこのまま気を引いておく。そして最後にとどめを刺す!」
「わかったわ!」
できるだけリセリアの正面に来るように気を引きつつ相手を動かしていく。即死級の攻撃をよけつつするのは一苦労では済まない。そして時はきた。
「今だ!」
リセリアに対しちょうど真正面でなおかつ両手の振り下ろし攻撃。これほど良いタイミングはないだろう。
「はぁ!!」
守護神の右足に凍結、爆裂が当たり大きく体勢が崩れる。そこに爆裂魔法がさらに胸元に当たる。見えた!
「はぁ~!!」
リセリアがさらにバフをかけてくれたおかげで動きやすくなっている。そしてそのまま剣をコアへと突き刺した。
守護神はあっという間にただの砂となり崩れ落ちていった。剣には貫かれたダンジョンコアが白く鈍く光っていた。
「やったー!」
感極まったのかリセリアが抱き着いてきた。俺は優しく抱きしめ返した。
ゆっくりと抱きしめた手を外すと涙を溜めたリセリアがにこやかに俺の顔を見てきた。初めて会った時には想像のつかないほどのにこやかさ。そこには、疲労感も見られたが安堵の気持ちが現れていた。俺は優しくリセリアの手を握るとリセリアも優しく握ってくれた。
剣に突き刺さったコアを外すと、傷がふさがり1周り小さな球体になった。白い光を放ち、魔力を感じる。城に合ったものは両腕で抱えないといけないほど大きいものだったがこのコアはだいぶ魔力を消耗したのか片手で持てるほどであった。
戦いに夢中で元々あったのかわからないが、奥にも天井から一筋の光が差し込めていた。手を握りながら2人は歩いて行った。そこにあったのは直径3mほどの花の土台。皿のように中央がくぼんでいる。おそらくこれが上へと導く装置ではないだろうか。
「これで外に出られるんだね。」
「おそらくは、ね。もしかすると下へとさらに追いやられるかもしれない。」
「でも、大丈夫だよ。だって私たちだもん。でしょ?」
「あぁ、そうだな。」
「うん!」
2人が乗ると手にしたコアが光りを増し、俺たちを囲い始めた。そして、ふわっとしたと思うと上へとダンジョンの層を貫きながら進んでいく。どうやら、花の模様ではなく、土台はガクで俺たちを囲っているのは咲きたて真近のつぼみのようだった。
外に出ると囲っていたものは花が咲くように開き、消えていった。そこには、ダンジョンの入り口はなく、森にぽっかりとあいた何もない場所になっていた。上を見上げると瞬く星々が輝いていた。
「星なんてしばらく見てなかったわ。」
「そうだな。」
戦争に加わってからというもの、星を見る時間すらなかった。でも今はこうやって魔族と手をつなぎながら星々を眺めているのだ。触れ合うこと知らなかった両者が力を合わせ、ことを成し遂げた。今必要なのは俺たちのような存在なのだろう。
「あのね、」
リセリアが静けさを遮って話し始めた。
「私ね、この戦争を終わらせようと思う。初めて私がお姫様であることをよかったと思うもん。直接お父様に話をしてくる。お父様はよくこういってた、『人族と魔族は消して分かり合えない。寄り添うことはできない。戦うほか道はない。』って。でもさ、今の私たちを見ればそんなことは嘘だってわかるもん。こうやって手をつないで、ダンジョンだって攻略できちゃった。そして、この手を離したくないって思ってる。」
「そうだな。」
「ねえ、このコアを使って魔力門作れないかしら。そしたら、私たちでお父様のところに言っていってやるの。」
「残念だけど、このコアじゃもう魔力門は開けない。転送魔法なら大丈夫そうだけどな。」
「じゃあ、手紙を書くわ!でも紙が…」
「これを使いな。」
ストレージから紙と万年筆を取り出した。
「うん!」
-お父様、お母様へ-
まずは、勝手に魔力門を使用し、家出をしたこと心配をかけました。ごめんなさい。今私は人族の領地で人族の人と一緒にいます。魔力門はダンジョンの中につながっていて、私ではどうしようもなくなっていたところに、彼は調査のためにダンジョンにきてたまたま会いました。ダンジョンはもともと古く、それに魔力門で大量の魔力を使ったことで上層部が崩れ、私たちはダンジョンを踏破しなくてはいけなくなったのです。私は最初、何もできなくて隠れて彼に守ってもらうばかりか、わがままを言い、今思い返すといつ殺されてもかまわないような存在でした。それでも彼は私に食事を与え、寝るときはいつも私を十分に寝かせてくれて、そして魔法も教えてくれました。私も徐々に2人で踏破しなければならないと思い、一所懸命になって魔法を学び、活躍しようと思ったのです。そして先ほど、ダンジョンの主、守護神を倒しダンジョンを踏破し、無事に外に出ることが出来、この手紙を書いています。お父様はよくこうおっしゃっていましたね。『人族と魔族は消して分かり合えない。寄り添うことはできない。戦うほか道はない。』と。でも私はそうは思いません。お互いに手助けすることが出来るし、話も通じます。同じ目標に向かって努力し、成し遂げることもできました。私はこの戦争をお父様が終わらせることが出来ると思っています。“言葉を通じて”です。だって、わがままだった私ができたぐらいですから。私はしばらくは彼とは離れたくないと思っているので帰るまではもう少しかかります。そのころにはすでに戦争が終わっていることを望みます。
リセリア・ヴェルフェゴール
残念ながら、手紙だけでは戦争は終わらなかったが、俺とリセリアはまず魔界へと向かい、リセリアの父と母にあった。母の記憶を見る能力で納得がいったのか、魔王は重い腰を上げ、この長きにわたる戦争は幕を閉じた。人族の代表は勇者一行でちゃんと話の通じる相手であった。この先は残念ながら政治の話なので俺にはわからない。でも今は、俺の目にはリセリアと俺とリセリアとの子供たちが同じ格好で昼寝をしているのが写っている。町は賑わいを見せ、さっきまで4人で散歩をしていた。人族と魔族は貿易を開始し、今まで触れ合わなかった文化がまじりあい、生活が豊かになっていっている。
可愛い寝顔をしているリセリアのほほを軽くつつく。
「ん~。あれ、旦那様、どうしたんですか?」
「ごめんな、起こしてしまって。」
「ううん、いいの。」
リセリアは俺の横に腰かけて頭をコテンと預けてきた。
「ちょっと昔のことを思い出していただけさ。」
そして、今の幸せをかみしめていただけさ。
レビューや感想、お待ちしています。