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第八話 狙われている者

 ミレイの涙が止んだのは十分ほどの後だった。ミレイがベッドの上で座ったままミナと話していた。ミレイの泣く姿を覚える雄一が混雑を感じた。彼女の泣く理由は分かるだろうとも雄一はあっちの世界でもう死んでいるのに、彼は悲しさを感じてもなく、泣きたい気分は愚か。然も不安で居ていてもそれは哀情にならない。


 たぶんこの世界にきたから無感情の人になった。


 たぶん元より、あの世界に自分は無感情な人なのだったか。


 でもそれを知る術は今にない。


 雄一はため息を漏らすと口を開く。


「で、ミレイってどうするつもり?」


「ミツキちゃんを追い続けるの。ずっとそうやってきたからね」


 ミレイはミツキを追いかけるのに慣れているので追い続けるのだ。その上、守らなければいけないというより、守りたい気持ちでそうやってきた。


「あいつ気付いてないのか? ミレイに追われてるって」


 雄一がそう聞くと、ミレイが手を顎にやり、迷いそうな顔で答える。


「そうだと思うけどね……とにかく、気づいたとしてもあたしは止めない」


「ふふふ、いいですね」


 ミレイそう告げてところにミナが手で口を抑えて笑った。


「なにが?」


「私もミレイちゃんのようなお姉さんがほしいのです」


 ミナがそう言った途端ミレイが自分の赤くなった頬を掻く。


「そ、そう」


 照れくさそうな顔でミレイが沿う言って誤魔化すように笑みを浮かべた。


 ミレイという女子は出会ったときから大人っぽくて信頼になりそうな精霊でミナが姉さんに思えた。尚ミツキのこと心配して大切にする友達なので助けるのだ。


「まあ、約束したから俺たちもミツキを追うぞ」


 雄一のセリフにミレイの前の照れくさい表情が軽蔑そうな表情に変わり、また冷たい視線で雄一を見て口を開く。


「あんたそう言うのをやめて。キモいから」


「あのな」


 ミレイが話題を変えるように咳き払いしてミナに視線をやった。


「……じゃ、じゃあ、あたしは先に行く。三まで数えてミナちゃんたちあたしを追ってきて」


「わかりました」


 ミレイがそう言うや否や目の瞬きの間で彼女の姿が消えていった。ミナが目を瞑ってミレイが示した通り数えるらしく五秒経つと雄一の右手を取ってすぐに部屋から二人が失せた。


 森にいたときミナが説明したそのまま、瞬間移動は灰色空間の出入りためにしか使えない。しかし、ミレイから受けてもらった彼女の髪にある菊っぽい簪という精霊の宝物のおかげで、灰色空間からミレイの位置まで瞬間移動できる。即ち、灰色空間は懸け橋の如く機能をするということなのだ。


 気がつく前に雄一たちは宿屋の部屋ではなくて広場の真ん中にいた。雄一は彼の右側に立っているミナに視線をやり、そのまま左側へ視線をすると一メートルほどの近くのベンチに座っているミレイの姿を見取った。ミナと雄一はベンチに近づき、ミレイの両方で座った。


「ここは?」


「シルデス村の隣の村なの、ハジマ村って」


 雄一の問いにミレイがミナと雄一を見ることなくそう答えて彼女の前にある木製の建物をじっと見つめる。


 二つの村は大体似たが、ハジマという村はシルデス村村より人が多そうで、賑やかな印象でもある。この村の広場の真ん中でシルデス村のごとき彫像があった。だが、シルデス村の菊花の彫像ではなくて藤花の彫像だった。


 ミナはミレイが眺めている建物へ視線をやりながら口を開く。


「ミツキちゃんはどこですか?」


「あそこに入ったばかりだ。泊まるはずだから明日まで出ないかもしれないね」


 ミレイがそう言い、眺めている木製の建物を示す。その建物の三階のところで宿屋に書いてある黒板があった。雄一もそこに視線をすると、ため息をはきながら立ち上がった。


「村歩き回ろう」


「……そうね、暇だし」


 雄一の誘いにミレイとミナは断りもなく立ち上がり、雄一と並んで歩き始めた。


 広場から左に曲がり、商店街らしい道へ向かっって、そこに通りところで雄一は何かを思い出した真似をして話す。


「ところでさ、ミレイはあの宿屋の受付譲さんじゃねーのか? 仕事サボってもいいわけか」


「サボってないよ……先に言わなかったよね……まあいいよ。実は数か月前、あたしが魔法であの宿屋を築いた。いつか、ミツキちゃんはシルデス村に行くかもって思ったから」


 アレそう言うミレイに怪訝そうな眼差しを向けながら雄一はもう一度問いをかけた。


「なんでわざわざあの村に?」


「あの村でミツキちゃんとあたしは初めて出会った場所なんだから……でも長い間でミツキちゃんはシルデス村に行くことはなかった。あたしたち大切な村だよ」


 二人が最初に出会った村ミツキが帰るかもしれないのであの宿屋を造ったと言うミレイ。彼女がずっとミツキを追ってきたつきまして、ミレイたちにとってあの大切な場所でミレイが他のところでもなく自分の宿屋で泊まるのが些細でも大事なことなのだろう。


「……いやでも、彼女が泊まった期間でお前は受付譲さんだと気がつかなかった」


「あたしは潜んだ。代わりに、あたしは潜んだときに食堂のばあさんが受付係をやった……というより、食堂のばあさん宿屋係してる、今は」


 ミレイがそう言うと雄一は食堂係のばあさんを覚えた。誰だあのばあさんと雄一は聞きたかったが結局何も言わなかった。雄一は黙ったせいで、今回はミレイが怪訝そうな顔をしながら彼を見る。


「で、あんたは?」


「俺はなに」


 その質問は曖昧すぎてと言わんばかりセリフを言いながら雄一は小首を傾げる。


「あんた何者なの? だって、精霊に守られているでしょ」


「いや、なべてそうではねーのか?」


「そうじゃないよ。自分を守る精霊がいたらそれは何かの壮大な目的があるという証明だもん」


 雄一は何者だと聞くミレイ。その上、精霊に守られているということは雄一が思った以上すごいニュアンスを含んでいるのだ。


「そうか? やばいな」


「実際、川宮さんあちらの世界から来ました」


 雄一の答えにミナがそれを言い添えた。ここまでその事実を知らなかったミレイは一驚しそうな顔でミナを見る。


「あちらの世界? 可哀想だね」


「まあ、あっちの世界で死んだんだな」


 雄一そう言うとミレイがため息をつき、困った顔つきをした。


「それより、狙われている。その故、殺される可能性は高いよ」


「…………あぁー、なに言った?」


 聞かなかったふりをして雄一は二、三度ぱちぱちと瞬いた途端固まった面持ちをする。


「あたし、あっちの世界から来た人と十人ほど会ったことがある……みんな死んだ、じゃなくて、殺されたんだ。はぁ、面倒くさくなるかもしれないね、あんたは」


「俺を見捨てる気か!?」


 あっちの世界から来た人がすぐに死ぬ。いいえ、すぐに殺される。雄一には不安を憶えさせでありながらも、本当は彼はすでに死んでいると言えるけれど殺される可能性は高いというものには怖くないと言ったら嘘になるものだ。


 どうやらミレイはまたため息をついて口を開く。


「そうじゃない。あんたを助けるよ。でもね、たぶん無駄なんだ」


「どういう意味」


「言ったでしょ。狙われているって。誰にだと思う?」


 誰に狙われているのかという修辞疑問に雄一は二度と考える必要でもなく答えを出す。


「総偽精霊に?」


「正解」


 あっちの世界の人は総偽精霊に狙われている。ミレイの先に言った「可哀想」の意味をだんだんと分かってくる雄一はまた言葉を出す。


「どういう訳で俺たちを、あっちの世界の人を狙うのか?」


「わからない。おそらくあんたたちは精霊に守られているからね」


 あちらの世界から来るからこそこの世界に与えられた発達しなければならない目的がある。その目的による、精霊をもらう。精霊に守られているので総偽精霊に狙われて殺される可能性は低くない。つまり、この世界にくるのはあちらの世界の人には良くないことだと言える。


「……はー、面倒だな」


 そう言う雄一にミナ首を傾げながら口を開く。


「怖くないですか、川宮さん」


「ちょっとな」


「私、怖いです」


 精霊からそれを聞きたいことでもなくても無理のないものだ。守る精霊だとしてもね、実はミナはただの女の子である。雄一はそれを考えて微苦笑交じりで話す。


「頼りにならないな、お前……大丈夫だミナ、俺はお前を守るぞ」


「…………」


 雄一の言葉にミナが以外な反応でもなくて、相変わらずの赤くなる頬と毛先。その照れくさいミナに相変わらずのミレイと雄一の反応。


「「可愛い」」


「からかわないでください!」


「あははは」


 ミナの突っ込みにミレイと雄一が笑い出してミナも恥ずかしそうな顔で笑う。その話のあるところで、雄一たちは商店街を過ぎ去ったのを気づいて、今の周囲の風景はゴミまみれの横道だった。雄一は振り返ってみようと遠いから来る眩しい光を見て取る。けれど、その眩しい光は雄一は思った以上速く、彼の頭に近づいてくるのを気がつくと避けるため左へ動いて、雄一のすぐ後ろにいたミナがミレイに引っ張られた。


「へっ!?」


 状況を理解できず雄一は振り向き、その眩しい物のほうへ視線をした。地面に刺さった縦のままの刃針(はばり)だった。太陽の反映で光が映されていたゆえそんな眩しく見えた。


 ミナとミレイに声をかける前、雄一は足音を聞いて、刃針の来たほうへまた振り向く。緑色なトラックスーツを着、瘡蓋だらけの男だった。


「早ぇな、オマエ。ありゃ? 呪われた子の精霊じゃんか。あいつは元気?」


 雄一とミレイを見ながらそう言う。女神というのはミツキのこと話しているかもしれないと、雄一は思った。


「こいつまさか」


「そう、偽精霊だ」


 その男は偽精霊だと確認した雄一ただ彼を見つめる。偽精霊が嫌そうな笑みを浮かべ、話す。


「おれは誰だって面白くねェ。面白いってのはこいつを殺すにきたッてことヨ」


 そう言う偽精霊が右手に持つ刃針を上げ、雄一を指す。俺を殺すにきたかと思った途端雄一は唾を飲み込んで、青くなっていくミナの髪を見た。

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