第2話 異世界での放置プレー
「へあ?」
思わず変な声が出てしまった。
状況が全く見えない。
俺は昼休みに自席で弁当を食べていた。
ふと視線を上げたら、木や葉がうじゃうじゃ生えている森の中だ。
「どゆこと?」
俺は自席で弁当を片手に持ったまま固まった。
――もしや、これって異世界召喚ってやつか?
で、森の中にそのままポンと……。
――嘘だろ。
せめて、外でも町の中とかにして頂きたかった。
「ほんで、俺を呼び出したのは誰だい?」
俺はあたりを見渡しながらそう呟く。
「ですよねー」
誰1人としておりませんでした。うん……。
――なんで!?
これじゃ召喚っていうよりただの放置じゃねぇか!
そんなプレイ俺は趣味じゃな……望んでないんだけど!
「て、やばくないか! 異世界なら魔物とかいるかもじゃんか!」
召喚主よ覚えておけよ。
どんな美少女が召喚主でも一晩と言わず何晩でも……、整理的欲求です。仕方ない仕方ない。
そう自分に言い聞かせ、お弁当を一気に平らげ異世界召喚の基本である状況分析をさっさと始める。
まずは持ち物かな。
机、椅子、空の弁当箱、スマホ、高校の制服、それと箸。
「詰んだわ」
――なんもできねぇーー。
試しにスマホに電波が来ているか見るも、
「来てないよねー。異世界だもんねー。森の中だもんねー」
――あかん。
これで魔物にでも見つかったら、絶対死ぬわ。
神様仏様どうか私をお守りください。
《ガサリ》
「ヒェッ」
恐る恐る後方に視線を送ると、茂みがかさかさと動き、動物の唸り声もついてきた。
俺は弁当箱と椅子と机に別れを告げ、これまでにないくらい思いっきり走り出した。
その走りはまるで風のよう……でもなく、ただの運動不足な高校生が険しい顔をしてがむしゃらに走っているだけだった。
――これからは神も仏も絶対信じねーぞ!
後ろから先ほどの動物が発した、体の芯まで響く恐ろしい咆哮が飛んできた。
――すみませんでした! 後でいくらでもお祈りでもなんでもするから命だけはお助けください!
走れ、俺。
そして逃げ切れ!!
箸を片手に全力疾走している男子高校生の姿は、さぞ滑稽なんだろうな。
その立場が俺じゃなければね!
その後のことはあまりよく覚えていない。
ただ森を抜けた後、奇跡的に家を見つけたことと、食後で脇腹が切られたように痛かったことは覚えている。
今は森を抜けた先に会った家に勝手にお邪魔している。
「た、助かったーー」
震える声で俺はそう漏らした。
そんで、ここはどなたのお宅なのだろうか。
一言で言うなら、『汚い』
生活感ゼロだ。
空き家なのだろうか。
もう夕方だしとりあえず今日はここに泊めさせて頂くとして、明日までに誰も来なかったら掃除でもしよう。いくら何でも汚い。
「シャワー浴びて寝るかー」
――あ、シャワーないんじゃ。
案の定シャワーはなかった。が、水を浴びる所はあった。
「あんだけ走って汗まみれなのに風呂入れないとか……。てかここの人たちって風呂入れないのか……かわいそうだな」
そういいながら仕方なく服を脱ぎ、冷たい水で汚れを流した。
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