第10話 フィリムの目覚め
私は目を覚ました。
最悪な夢を見ていた気分だ。私はさっき殴られ蹴られ斬られ刺されて死んだのだから。
死んだのが現実なら、今の私は何なのだろうか。
そこで気が付いた。私の身を包む優しくてあたたかなものを。
毛布だ。私は生まれて初めての感覚につい身をよじってしまう。
物心ついたときに両親を殺されて、運よく生き残った私。
ずっと命をつなぐのもやっとだったこれまでの私の人生では、毛布にくるまることなど夢のまた夢の話だった。
しかし毛布の心地よさでは到底私の混乱を解消することはできなかった。
なぜ生きているのか。
まさか、死んでいなかったのか?
ミナトはどうなったのか?
まさか死んでしまったのか?
そんな風に際限なく疑問が湧き上がってくる。
抑えようにも抑えられないそれに、考えるのを止めたくて柔らかな枕を力いっぱい抱きしめ縮こまった。
しばらくして脳内が落ち着いてきた頃、私はついに起き上がった。
「ふぇ?」
やはり知らない場所。
だが問題はそこじゃない。
広い部屋に汚れ1つない壁紙、ほこり1つない完璧なカーペット、美しい窓に景色。
そこはもはや私の踏み入れていい場所ではなかった。
私はベッドからゆっくり這い降りて、窓のそばへ寄った。
そこから見えるのは広大な草原。日光に照らされて温かそうに平和に揺れている。
私はしばらく外をただじっと眺めた。
それから意を決して扉の向こうへ出ることにした。
そして扉を開けると私はまたしても息をのむことになった。
広くて美しい廊下、私が小さくなったかのような気さえする。
私はその廊下をただまっすぐ進んだ。
途中で不思議な格好をした髪の短いエルフの女性を見つけた。
その格好は白色と黒色でできていて可愛いフリルがついていたりする。
私は声をかけられず黙って少し離れた所で見ていると、彼女は私に気付き近寄って来た。
「起きましたか。お体で何か問題はございませんか?」
彼女は心配そうに私に声をかけてくれた。
「はい……、大丈夫です」
すると彼女は「ついてきてください」と言ってから歩きだした。
私は少し感覚を開けて彼女についていった。
階段を2階上がって廊下を進んだ先に、大きな立派な扉があった。
彼女はそこで立ち止まりノックをしてから、
「フィリム様がお目覚めになられましたのでお連れしました」
と言った。
なぜ私の名前を知っているのだろう。
少しの間の後、扉が開きそれに伴って彼女は部屋に入っていった。
私もそれに従って恐る恐る入った。
中には人が3人いた。
おかしな服と髪の男性、薄赤色の髪の女の子、それに……、ラミリアだ。
生きていることに対する驚きがあるも、なにより気まずかった。
私が部屋に入り扉が閉められると、大きな椅子に座っている男性が口を開いた。
「フィリム様も起きましたか、体長はどうですか?」
彼は穏やかな口調で私に聞いた。
「大丈夫です……」
と答えた私は、やはり抑えきれない疑問を言葉にしてしまった。
「あの、なんで私は生きているんですか? ミナトは生きていますか? どうなっているんですか?」
男性は私の問いに首を振った。
「わかりません」
それは私の不安をさらに掻き立てるには十分なものだった。
しかし、すぐに男性は言った。
「けれど、ミナト君なら生きています。この屋敷でぐっすりと眠っていますよ」
男性のその言葉によって私の不安はだいぶ小さくなった。
しかしだからと言ってこの混乱が解消されたわけでもない。
でも、私はそれ以上何も言わなかった。
するとまた男性が口を開いた。
「フィリム様、まずは落ち着いて生き返ったということを受け入れてください。そして……ラミリア様と話す必要があると思いますので、外へでも行かれてはいかがでしょう?」
やはりラミリアに伝えなければならなくなった。
もう今更隠す必要なんてない。洗いざらい言ってしまって少しでも楽になりたい。
そう思って私とラミリアは先程のエルフの女性に連れられて、玄関を出てすぐの庭園へと向かった。
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