番外編 一宮と結城凛
「結城、今日も相変わらず暗い表情をしているな。また寝れなかったのか?」
「青葉先生こそ、目の下クマだらけじゃないですかー!」
「そういえば、最近はあの症状が出なくて安心だな」
「全ては先生のおかげです」
結城凛は、時々人殺しという症状が出てしまう。最初の頃はそれが酷く、一週間で6回も起きたりしていたが、更生教室へ来てからは、それもなくなった。私も全力で止めたり、怒鳴ったりと様々なことをしたのが懐かしい。そしていつもどおりの日課が過ぎ、放課後になり事件は起きた。
「イッチー大変。りっちゃんが、男子生徒に刃物で斬りかかろうとしてるって」
「どこでやっている?」
「体育館みたい。早く行かないとまた大変なことになりそう」
更生教室の生徒が、一般在学生に問題を起こすという行為は、罰せられる対象になってしまう。早く止めなくてはならないが、教師である私が皆の目の前で暴力を奮ってしまったら、大問題になりかねない。そんなことを恐れてしまっては、最悪な事態にもなってしまう。自分の保身よりも、結城を救ってあげなくてはならないな。
体育館に到着すると、床は血で赤くなっていた。結城の近くには、男子生徒が二人倒れている。遅かったか・・・。
「おい、結城早くナイフを捨ててこっちへ来い」
「りっちゃん大丈夫だからこっちへおいで」
「うるさい!うるさい!うるさい!また、そうやって丸く収めようとしてる事お見通しだから、しかも、今回はもう刺しちゃったし。人間ってさ滑稽だよね。刺すと血を出して倒れちゃうんだもん」
「馬鹿野郎!結城、お前がやってることは立派な犯罪だぞ?」
「分かってる。だから楽しんで人を殺してるんだ。久しぶりのこの症状だし、もっと楽しもうかな」
「月野木。悪い男子生徒を保健室へ連れて行ってやれ。それと、ギャラリーのところにいる女子生徒も避難させろ」
「イッチー?もしかして、暴力で解決しようとしてる?駄目だよ?先生が生徒に暴力振るったら辞めさせられちゃうよ」
「生徒を助けるのが教師の役目だ。それでクビになるなら、上等だ」
周りにいる生徒全員を避難させることに成功したが、相手は刃物を持っている。うかつに近づいてしまっては、刺されてしまうだけだ。でも、ここに来る時にもうその覚悟は出来ていたか。
「来るな。来るな。それ以上近づいたら本当に刺すよ?青葉先生でも許さないからね」
「ああ、いいだろう。気が済むまで刺すがいい。ただあまり大人をなめていると、痛い目に合うのはお前だけどな」
一瞬の隙を見逃さずに、結城を殴り、その場に倒した。
人ってさ?救おうとした人間がまたもとに戻ると絶望と悲しみで感情の制御ができなくなるんだよ。
倒れ込んだ。結城を顔の原型がなくなるまで、殴り続けた。
そして、私は生徒に暴力振るった。教師として更生教室の担当から、担任になってしまった。
今回は、一宮の過去です。
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