第7話 誤解
「今日はありがとう。また明日学校で会いましょう」
この一言を信じて家に帰った。
「母さん、おはよう」
「これ貴方の学校の生徒さんじゃない?」
「・・・・」
ニュースを見ると市立三日月高校の生徒が自殺未遂と報道されていた。未成年だから名前は出ないが、容姿が黒髪ロングに、体の傷と言っていた。出雲か・・・。こんなものを見て、家に大人しくいれるわけもなかった。学校へ行く準備を終え、1時間も早く学校へ向う。
出雲どうしてだよ。なんでだよ。言葉は届かなかったか。それとも俺が腹を切ったからって自分を追い込んだのかよ。考えると益々心配になってしまう。今は急ぐことにした。
「一宮先生!!!」
「どーした。そんなに焦った顔をして、何かあったのか?」
「今朝のニュースを見て、また出雲が自殺未遂をしたのかと思いまして」
「人をすぐ殺そうとするなんて、篝君は最低な人ね」
「出雲!!!!!」
良かった。この一言に尽きる。
「篝、お前は心配性にもなってしまったか?それとありがとうな」
「先生・・・・」
「ふたりとも、人が見ている前で友情ごっこはやめてくださる?朝から気分が悪くなる」
「ごめん!それとおかえりなさい!」
ようやく日常に戻った。いつもどおりの4人の空間。空気は美味しい。誰もが来栖出雲の帰還に喜んでいた。しかし、幸せな時間は突如と終わりを告げる
「お前ら、私の教員生活は今日で終わる。短い期間だったが、楽しかったありがとうございました」
「一宮先生何を言っているんですか?」
「イッチー定年までまだまだでしょ?」
「先生・・・」
「何を悲しい顔をしている?来栖出雲が戻ってきてくれたんだ。そんな悲しい顔はやめてくれ。それに後任の先生も決まった」
このタイミングで先生を辞める?確かにこのクラスの担任ということは、何か問題を起こした人間であるということは間違いないが、それなら採用すらされないだろ。だったら自分でやめることを決めたのか?いやそれも考えにくい。
一宮先生の発言により、重い空気に変わりそのままHRは終わってしまった。こんなことになるなら、最初から言えよ。何で辞めるのかくらい生徒に教える義務はないのか?駄目だ。このままだと負に落ちない。直接理由を聞きに行くか。
「一宮先生、今いいですか?」
「おう。どうした?」
「何故辞めるのでしょうか?」
「大人の事情でな、私も気に食わないが、仕方のないことだ」
「どういうことですか?」
「今朝の自殺未遂のニュースがあったと思うが、あれは私の元教え子でな可愛がっていたんだが、ある日間違いを正すために揉めた時に喧嘩をしてしまってな。それで手をあげてしまったんだ。学校はこの事実を隠蔽してお咎めなしになったんだが、報道のせいで誰かが告げ口をしたらしい」
「その暴力をふったのは怒りのせいですか?それともその生徒のためにですか?」
「そんな事聞かなくては分かるだろう。もう授業が始まるから教室へ戻れ。さっきも言ったが、来栖を助けてくれてありがとうな」
納得がいかない。そもそも今回の自殺未遂は全く関係のないことじゃないか。多分これ以上追求されると他の事もばれるからトカゲの尻尾斬りだろう。でも、こんなことで一宮先生を辞めさせるわけにはいかない。
俺は再び、人を救う作戦を考えることにした。
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