第5話 未遂
「今日から当分の間来栖は欠席になる。当面は二人だが仲良くするんだぞ」
「一宮先生、休む理由くらい教えてくれてもいいんじゃないですか?」
「ここではいえない。篝後で指導室へ来るように」
指導室だって?何か悪いことをしたか?それより、出雲が何故来なくなってしまった。昨夜はあの後泣き止むまで待ち家に帰ったが何も問題はなかったように思える。そしてHRが終わり指導室へ行った。
「昨夜、来栖と一緒にいたな?」
「いましたが、何か問題でもありましたか?」
「篝よく聞けよ。昨晩出雲が自殺未遂をした。原因は体の傷の事を思い出したからだそうだ」
「体の傷は自分でつけたものじゃないんですか?」
「違う。来栖の体の傷は親御さんからつけられたものだ。彼女の親御さんは酒に溺れていてな仕事が上手くいかなくなるとカッターで傷をつけていたそうだ」
「それと今回の件何か結びつきはあるんですか?」
「体の傷を見た人間がいると、不安になり、過去の事を全て思い出してしまう、その結果自分で体に傷をつけてしまうんだ」
何だって!?出雲は覚悟を決めて見せてきたと思っていたが、違ったのか。馬鹿野郎・・・。見せるよりもそのことも言えよ。何で自分ひとりで抑え込もうとしたんだよ。
「何かできないか?みたいな顔をしているが、余計なことはするなよ。誰かが救っても同じことを繰り返す。それに来栖は来栖のやり方があるしな」
「一宮先生は、それでいいと思っているんですか?他の方法を試さなくては本人は・・・。死んでしまうかもしれません!!」
「偽善者ぶるのは辞めてくれ。お前はこの更生教室に来る前までは、知らなかったことだよな?それに同じ奴がいたとして、事情を知ってもそうはならなんだろ。自分が好いているからと差別をするのは人として最低だぞ」
「もういいです。どうにかして、出雲を救ってみせます!!それでは、失礼します」
ドアを蹴りその場を後にした。来栖のやり方を尊重するのは人として当たり前だが、親から受けた傷のせいで、ストレスが溜まった時に自分で傷をつけてしまうなんてことを続ければいずれ必ず死んでしまう。そんなこと絶対にさせては駄目だ。
偽善者か。確かにそうかもしれないが、一宮先生には分からないこともあると思う。
「イッチーさ、篝君なら救えるって信じているの?」
「月野木、一宮先生と呼べとあれだけ言っているだろう」
「怖いんでしょ?救えなかった時に自殺する人たちが」
「生徒の分際で余り余計な事を言うな。授業を始めるから教室へ戻れ」
「全く、分かりやすいよね。はーい」
学校を早退し、家に帰ろうともしたが、母さんに事情を説明しても意味がない。だから直接出雲の家に向かうことにした。無事に何事もなく到着しチャイムを押したが応答がなかった。オートロックなので、無理やり中に入るわけにもいかない。とりあえず、応答があるまで待つことにした。数時間後突然後ろから声をかけられた。
「人が住んでるマンションの下で待っているなんてストーカーもいいところね」
「おいおい、勘違いされるような事を言うのはやめてくれよ」
「そう?まあいいわ。とりあえず、ここで話しても時間の無駄だから部屋で話しましょう」
よし、第一段階クリア。また昨夜のように、出雲の後ろについていきながら、部屋に入ってみるとそこには・・・。
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