第4話 出雲
「よし、宿題はこれで全部だ。各自来週の月曜日まで提出するように、それと休日だからといって、羽目を外しすぎないように」
このクラスにやってきて四日が経ち初めての休日を迎える。ようやく休めるというと思ったのは始めてだ。しかし、出雲、葵はどうしてこのクラスに来たのだろうか?見た目も普通で虐められそうでもなく、至って普通の女の子じゃないか。
「まーた下らないことでも考えてるのかしら?」
「いや少しな」
「それより、明日予定は開いてるかしら?」
「開いてるの分かって聞いてるよな?要件は?」
「買いたいものがあるからついてきてほしいの!いいかしら?」
「はい。喜んで」
やった!人生初デートはこんなスペックの高い美少女となんて、あー楽しみだ・
「言い忘れたけど、デートではなく友達と遊ぶって感覚だからね?」
人の心を読めるんですか?少し期待した俺の純白な心を砕かれた。
そして、当日待ち合わせ場所には10分も早く着いてしまった。流石に張り切りすぎてしまったかと反省しようとしたが、出雲はもう到着していた。
「すまない。待たせてしまったか?」
「そうね。普通20分前に到着するのが常識じゃないのかしら?」
「おいおい、10分前に到着したやつに向かっていう嫌味は切れ味がすごいな」
「まあいいわ。早く行きましょう!」
珍しく率先的な出雲の後についていくと、到着した先は服しか売っていないビルだった。あ、そういうことか。自分の役割を思い出しながら、少しでも期待した自分が恥ずかしくなった。始末屋(なんでも屋)だから荷物持ちをするために、呼び出されたのだろう。
「ようやく、気づいたみたいね」
「まあ、いいよ。家にいても負のオーラで死にたくなるかもしれないしな」
「まだそんなことを言うの?」
「悪い!冗談だ」
出雲のショッピング速さは世界記録でも出るんじゃないかと言うほど高速だった。何故か試着せずに買っていたが、体を知り尽くしているからなのだろうか?それから15店舗周り俺の両手には大きな袋が6個くらいある。重くて手が千切れそうだったが、弱音を吐いたら負けのような気がしたので我慢した。
「どう?こんなに買う女は嫌いかしら」
「いや、試着せずにこんなにかって大丈夫なのか?」
「どういうことかしら?」
「サイズ合わない服とかあるんじゃないか?」
「そうね。でも仕方ないわ。色々事情があるからね」
事情ね。まあそれが本人の過去に関係しているなら詳しくは聞けないな。
「よし!じゃあ家まで全部持ってね。頼りにしてるから・・。」
「はーいはーい。行きますか」
ん?待てよ。家に行けるのか?ラッキー異性の家に行くなんて始めてだ。ご両親にも挨拶をしないとな。
「言っておくけど、マンションだからオートロック機能で貴方が入る前に閉めるからね?」
「いやいや、中を見せてくれてもいいじゃないか」
「いいけど、見ないほうが幸せかもよ?」
「まあついてから判断するからとりあえず行くか」
手が千切れそうな感覚から腕が千切れそうな感覚に変化しつつ、無事に、出雲の住むマンションに到着した。そして、玄関まで運び帰ろうとしたら大雨が降ってきた。
「雨なら仕方ないわね。上がっていいわよ」
「ラッキー。おじゃましま・・・す」
家の中に入り、部屋へ行ったが、中は衝撃的だった。壁一面に殺す殺すと書いてあり、血のようなものも飛び散っていた。そして床には大量のカッターなども落ちていた。
「どう?私の部屋は?ドン引きしちゃった?」
「んーなんつーか。色々大変だったんだな」
「なんでそんなことが言えるの?こんな部屋を見て異常だと思わないの?」
「別に思わないし、更生教室に来るなら事情があると思ってたしな」
「そう、なら特別にもう一つ見せてあげる」
これが、彼女の真の姿なのだろう。虐められ、殺したいくらい相手を憎んでいた。でも、それをしてしまうと、自分が悪くなる。だからあの時俺にあんな風に言ってきたのか。そして出雲は俺の前で服を脱ぎ裸になった。
その体は、傷だからで残酷だった。刺された後なのか?刺したあとなのか?それとも切った痕なのかわからないくらい。
「今度はドン引きかしら?」
「いや、ひかないよ。お前本当に頑張ったんだな」
この言葉を言うと出雲は泣きながら俺の方へ来た。
「大丈夫だ。皆お前を見捨てたりはしない。だから、弱音を吐く時は体じゃなく、俺に当たれ」
その後しばらく出雲は泣いていた。
出雲?いずもりーん
ブックマーク、評価をお願いします
数字がモチベーションになります。