第1話 退屈
「ニュース速報。渓谷線は人身事故の影響で遅延しております」
またか、毎日沢山の人が自ら命を捨てるような行為をしている。それが悪いことかと聞かれたら、個人の自由だから知らないと答えてしまうだろう。
「明彦ーご飯よ。早く食べないと遅刻しちゃうから起きてきなさい」
午前6時40分俺篝明彦の1日はスタートする。
「おはよう。母さん」
「おはよう。今日も夜遅くなるから適当にご飯買って食べて頂戴」
「分かった」
俺の家は母子家庭で、母さんは夜遅くまで仕事をしている。そのおかげで高校へ通えているが、家族全員が揃ってご飯を食べるということができないのは少しさみしい思いがする。それにしてもアジフライ今日も美味しかったな。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
本当に家族かと思ってしまうほど、母さんとの会話は単調だ。お互い余計な気を使うことが嫌な性格だからこのほうが助かるが、近所の人はあまり良く思っていないらしい。それは各家庭で違うのだから、その価値観で判断するのはやめてほしい。
あーもし、学校というものがなければ、今頃何をしていただろう。毎日地味男と言われ、いじめられ、助けを求める友人など一人もいない。そもそも人に助けを求めるのは弱い人間がすることで、強者は一人でも解決できる。てか、俺には友達を作るより、一人のほうがお似合いのような気がする。いつもと同じ時間に乗る満員電車、こいつもストレスの一つかもしれないな。
「ちょっと貴方何するの?この人痴漢です」
「え?いやちょっと?」
「君、ちょっと一緒に来てもらうよ」
俺の人生は底辺から最底辺になってしまった。痴漢冤罪で事務所へ連行された。
「君、いつもこういうことしてるの?」
「あのいや?何にもしてないですが?」
「そういうこと言う人多いんだよね。言い訳しないで認めたほうがいいよ」
「だから、違いますって」
その後、警察が来たが、細毛検査までしてもらうと無実が判明した。駅員さんは何度も謝ってきたが、同じ学校の生徒が沢山乗っている電車での出来事はすぐに拡散されるだろう。案の定学校へ到着すると「痴漢常習犯」、「地味男、犯罪者になる」などと机に書かれていた。
それを見て、笑うものもいれば、見て見ぬ振りをするやつもいる。そりゃ自分がターゲットにされなきゃ幸せだもんな。
「はぁー死にたい」
独り言を言ったが、たまたま聞いたやつが「地味男が死にたいってさー」などと大声で言うものだから周りからは死ね死ねコールの連発だった。そうか。今日が命日ならば、やりたいことをやって終わればいいじゃないか。
今までの恨みを晴らしてから死んでやる。俺は隠し持っていたポケットナイフを持ち、いつも馬鹿にしてきた学生へ向かい走っていた。たちまち教室は大騒ぎ、女子たちは謝りはじめたが、もう遅い。ここまで崩れたロジックはもう治ることはない。
もう・・・・。終わりにしようじゃないか。
今日僕は投稿する。
あと2話20時、21時と更新されます。
評価をお願いします。数字がモチベーションに繋がります
ブックマーク登録もお願いします。