目的のタキ
変わった有料駐車場「目的のタキ」に来た俺は、タキさんと話すのだった……。
「目的のタキ」
という変わった駐車場がある。
タキさんというオーナーの経営する有料駐車場だ。
本名は俺も知らない。
「目的のタキ」は利用料金がかなり安い。
駅まで徒歩圏内なのに、24時間駐車しておいても500円。
ワンコイン駐車場なのだ。
ただ、なぜかいつもタキさんが居るという不思議な駐車場だ。
タキさんは話せば気さくでいい人だが、
見た目がかなり恐ろしい。
知らないで道で出会ったら、
その筋の人か、凶悪犯に思えるかもしれない。
年齢不詳だが、おそらく40~50歳代だと思う。
身長はそんなに高いわけではなく175cmくらいだ。
体つきが何しろガッシリしていてゴツい。
サングラスで目つきはわからないが、威圧的が半端ない。
声は低く聞きやすいが、もしドスを利かせて怒鳴られたら、熊でも逃げるような気がする。
髪は、パンチパーマで昭和の時代ぽさを感じるが、タキさんには妙に似合っていて不思議だ。
さて、俺はいつものように「目的のタキ」に、中古の軽自動車でやってきた。
「おう、元気か?」
タキさんが気さくに声をかけてくる。
相変わらず怖い。でも、いい人だ。
「今日の『目的』は何だ?」
「えーと、渋谷のライヴハウスで、推しの生誕ライヴがあるんで、青のサイリウムをガチ振りして、お祝いしに行きます」
「地下アイドルか?」
「そうですね。インディーズしか出してないし、ライヴの規模も大きくないですが、何しろメチャクチャ可愛いんですよ!」
「それは良かったな。で、何をどれだけ頑張るつもりなんだ?」
「俺の推しはその1人だけなんで、声が枯れるまで盛り上げようと思います。あとお酒が好きな子なんで『ワッショイ』という酒をプレゼントして、一緒にチェキを10枚取って、プライベートチェキ券をゲットします」
「そうか。頑張ってこいよ」
「はい!!」
そして、タキさんが鎖を持ってきて、俺のボロ軽自動車の前輪に巻きつけ、駐車場のフックにロックした。
「わかっていてるよな?『目的』を達成しないと、ロックは外さないぞ?」
「はい!必ず最高の生誕ライヴにして見せます!」
「その意気や良し、行ってこい!」
「はい!ありがとうございます!」
そして、
俺は全力で推しの生誕ライヴに臨んだ。
「目的のタキ」に着いたのは終電だった。
しかし!
いつもいるはずのタキさんがいない。
困って俺と同じように立ち往生している人に尋ねると、
タキさんは道路交通法違反で逮捕されたらしい。
俺は自分の車が出せなくなった。
もう出がらしです。
「目的のタキ」という有料駐車場の夢を見たので、それを題材にもらいました。
1000文字に収めるので、どうしても前厚型になりがちです。
もっと展開を考えて、練るべきだと思いました。