☆幕間☆
「はぁ……疲れた……」
花村薫は、熟年の記者、トシとのインタビューを終えてから、ヒーロー研究会の部室に来ていた。
怪人のカズノコシティ襲撃に立ち向かったヒーローとして、あれもこれもと聞かれて肩が凝ってしまう。
腕を回しながら小さく溜息を吐いて、部室に入ると目に飛びんできた机に乗る大量の紙を見て、項垂れながら、一層長い深い溜息を口から吐き出す。
いつもなら日記程度で済む報告も、今回の件ばかりはそうもいかないらしく、何度もやり直しがかかって戻ってくるのだ。
正直、寝る間も惜しんで書いたものをまた書き直す作業は苦痛が伴う。
それに加えて連日のインタビュー。
薫は疲れが溜まり隈の残る目を擦りながら机を整理しだす。すると、紙の間から、頭を机の上につっぷしたままの玉置梢が白い煙を出してるのが見えた。
「こずこずー、そんな寝方してると眼鏡が歪んじゃうよ。」
薫が声をかけると返事をしてきたのは、横に居た立松陽平だった。
「花村、玉置の奴はそのまま放置しといてやってくれ。今日もクラスメイト達や記者達からは、あれやこれやと根ほり葉ほりの質問漬けだったんだ。」
「まぁ、そうよね……」
「でも、マジだったんだなぁ。タマキキャットが玉置だってバレったてよ。ヒーローの身バレ自体がスクープの大事件だが、それがタマキキャットだもんなぁ。」
「私もあれはびっくりした。映像見たけどさ。まさか、あんな風に映っちゃうなんてね……」
「だよな。」
「でも、こずこずが無事でよかったよ。あのままだったら間違いなく殺されてたもの。」
「そうだな。命あってこそだしな。」
頭を小刻みに動かしながら陽平は薫に同調する。
「まっ、初日に頬を腫らしてきた登校してきた時は何があったのかと心配したけどね。」
「お母さんにぶたれたんだっけ。あの時の玉置はハムスターっぽくてちょっと傑作だったな。」
陽平はくっくっと思い出し笑いをしながら答える。
「ねっ。無事に日常に戻れたんだって感じがしてちょっとほっとした。」
「そうだな。街の人に人的被害がほとんどなかったのは、良かったよな。俺達もやり切ったって感じだよな。」
「この忙しさはもう勘弁って感じだけどね。」
薫の愚痴も当然なのだ。
薫も陽平もここ最近はずっと、メディアからの取材やヒーロー協会への報告に追われているのだ。
今は怪人シラセがカズノコシティを襲撃する事件から数日過ぎた。
街自体は怪人達の百鬼夜行による物の破損や盗難があったり、戦いで傷をついたヒーローも居たが、死者数はぜロ。
あの規模の怪人の起こした事件では、良い意味で考えられない被害だった。
カズノコシティを守るために戦ったヒーロー達のその活躍は称えられ、様々なメディアに引っ張りだこにされるほど忙しくなっていた。
これは戦いに参加していたSUMOライダー事、薫とビートブルー事、陽平も同様だったのだ。
「しかし、作戦に参加していたヒーローも持ち上げられているけど、メディアの人らは、あいつら、突然出てきたヒーローズって奴らとヒーローの真似事をしてた怪人についてを知りたいっぽいんだよな。」
インタビューやクラスメイト達の反応からも、突然現れたヒーローズと名乗る集団と人を守るために戦った怪人については効かれることがある。
しかし、ヒーロー達は彼らの正体は知らない。
そのため、当然、何も答えられないので、「知らない」と答えるのだが、それが何かを隠すためにはぐらかすように映るのだろう。
世間では、様々な憶測が飛び交ってしまっているようだった。
「実はヒーローと怪人が手を組んでこの事件をおこしたんじゃないか。」とか、「本当は全て作リアリティショーのようなものをでっち上げたんだろう」とか。
正直、命を懸けて戦った身としてはかなり厳しい意見も見ることがある。
だが、そう思われても仕方ないほど彼らの活躍や与えた影響は大きいものだったのだ。
負け戦を死者を出さすずに勝てたのはまさしくあのイレギュラーが来たからだと陽平は理解していた。
だからこそ、余計に歯がゆさを感じているのだ。
「あいつら、一体、何なんだろうなぁ? 俺は早めにリタイヤした所為もあって全くわからないのが辛いぜ…… 聞かれても全く知らないのに。隠してるって言われるんだもんなぁ……」
薫は「そういば陽平はあいつらしらないんだっけ?」っと声をかけつつ、少し逡巡した後、
「陽平には言っとこうかな。私、あいつ等の正体わかる。 ……いや、わかるかも。多分……絶対……」
と言ってきた。
「えっ? マジ?」
「うん。ただ、私は誰にも言ってないんだけど。」
「そうなんのか? 誰だよ! 教えてくれるのか?」
「イクラシティで戦った怪人達いたでしょ?ほらなんか大小揃ってたコメディアンみたいな奴ら。」
「おう。イクラシティを滅茶苦茶にしやがった奴らだな。覚えてるぜ。アイツらに負けたから俺はもっと強くなろうって思ったんだから! ま、まさか……?」
「多分、ヒーローズってあいつ等だよ。戦ってる時からそうかなぁって思ってたけど。シラセと戦っていた骨の怪人を見て、確信したというか。」
「マジか! つまり、怪人達がヒーローを名乗ってたってことかよ。目的は一体……?」
「目的は一切不明だけど、きっとそうよ。」
「なんか正体が分かっても目的不明って余計、不気味に感じるな。」
「だから、陽平に行ったんだけどね。誰かに言いたかったけど、通じそうな人いないかったし。」
薫はからかうように笑う。
「この新しく生まれたもやもやをどうしてくれる……」
陽平が薫に詰問をすると、突然、梢が起き上がる。
「うにゃーーーー!!!!!」
「なんだ? どうした! 玉置?」
「あの猫の怪人さんとリボーンさんの関係はなんなのさー! 猫の怪人さんがリボーンさんを連れてちゃったから取り戻さないと駄目なの!」
「どういうことよ。 急に起きたと思ったら、落ち着いて事情を説明してよ。」
梢も同様にもやもやと自分の中で抱えていて薫や陽平にも伝えていないことを話を始めた。
前からリボーンと名乗る骨の怪人と面識があったこと。
イクラシティでも出会い助けられていたこと。
説明をしてから、息を吐き出しながら、陽平がつぶやく。
「以前、玉置が傷ついて戻ってきた時からそんな事があったのか。」
「実はカテキョーだった人ってマジ話なの。凄い偶然ね。」
「そして、頭が追い付いていないんだけど、イクラシティが消えたのってあいつら怪人が全く関係ないってマジのか?」
「少なくても、リボーンさんは関係ないよ! あれは、次元統合獣って怪獣の仕業だって。それどころか気を失ってたあたし達をずっと守ってくれてたんだよ。」
「……それってさ。勇二は知ってるのか?」
「多分、ゆーじもれきれきも知らないと思う。」
「そうよね。いや、もっと言えば勇二の奴は骨の怪人こそが真の悪人だって信じてるんじゃないかな?」
勇二と歴はあれから学校にすら出てこない。
勿論、親の許可が下りないという事もあるのだろう。
そのため、話をする機会がなかったのだ。
「はぅ、抱える問題が多いよぅ……」
「それなぁ。勇二の奴も問題は根深いよな。優一先生が絡んでるしな。」
三人は一斉にため息を吐き出す。
「ため息ばっかりついちゃいわね。」
「だねっ。」
同じタイミングで溜息を吐いてしまった事で、梢と薫は思わず笑ってしまう。
「でもよ。これからどうしような。やることが多いぜ。」
「ならあたしは、まずは、リボーンさんを宮ちゃんせんせーを探したいよ!」
いつもありがとうございます!




