終末のイド
Side:玉置梢
終わった。……の?
あたしの目の前で突然現れたリボーンさんが赤く光る拳をシラセに振り下ろした。
しばらく二人は同じ体勢のまま動かなった。
シラセの最後の言葉には余裕が無くて真に迫っていた。
多分、そうだよ! やった! リボーンさん、宮ちゃんせんせーがついにやったんだ!!!
勝った! そう思いたいが、今まで勝ったと思っても、何度も、何度も、シラセは悠々と生き延び、新しい恐怖を与えてきたのだ。
またも、そんな疑惑が頭をよぎってしまう。
色んな感情が沸き上がってくる。
リボーンさんが勝利した喜び。
恐怖からの解放の安堵。
本当に勝ったのかという不安。
どんな顔をしていいのかわからず、あたしはただ茫然と見ていることしかできなかった。
突然、シラセの体から煙が噴き出しシラセの体が燃えていった。
やっぱりまだ生きてる!?
あたしがそう思うのとは裏腹に、周囲を取り込んでいた光の網が消えていった。
明るい日差しが部屋の中に注がれる。
それはリボーンさんの勝利を意味しているのだとわかった。
今まで恐怖を与え続けた存在が消えたのだ。
それを悟り、あたしの目からは自然に涙がこぼれていた。
「リボーンさん!!!!」
大声で名前を叫ぶ。
すると、カメラを構えていたお兄さんも声をあげた。
「やった!!! 周りの網が消えたぜ!! やったのか!!! 骨のヒーロー!!! マジかよ!!! マジか!!! すげー!!!!」
でも、リボーンさんの、宮ちゃんせんせーからの反応はない。
顔は半分も消し飛び、左手もない。
見た目でわかる既に限界を超えているのだ。
赤く光る体は次第に色を失っていく。
そして、そのまま崩れる落ちるようにその場に倒れこんでしまった。
「リボーンさん!!!」
駆け寄り、手を握る。
シラセの体は完全に灰になり消えていた。
「リボーンさん。ううん。宮ちゃんせんせー……」
もしかして、相討ち……
髑髏の空洞の奥から片目がぎょろと動き、あたしを見た。
それはあたしのヒーローがまだ生きている事を意味しているのだ。
「梢、そんな顔するなよ……」
「宮ちゃんせんせー……だってぇ……あたし……あたし……」
「俺が守ってやるって言ったろう。」
あたしは思わず飛びつき抱きしめる。
「なんで、そんなに、人の心配ばかり言うの? もう自分の方がボロボロなのに……」
「ヒーローだからな。それに、俺は怪人でもあるからな。少し休めば大丈夫さ。元通り元通り。」
「狡い……宮ちゃんせんせーばっかりカッコいいだもん!」
「くすぐったい。狡いか。あっはっは。梢らしい感想だな。しかし、やっと終わったのか。流石に疲れたぜ……すまないが、俺は少し休む……」
そう言うと、宮ちゃんせんせーの体から力が抜けていく。
既に寝息を立て始めているようだ。
「……ありがと……」
聞こえなくくらい小さな声であたしはつぶやいた。
「あのー、タマキキャットさん。」
「ひゃい!!」
「そんな驚かないでくださいよ。こっち来てください。」
お兄さんが呼んでいたので、寝息を立てている宮ちゃんせんせーを丁寧に寝かせてお兄さんの方向かう。
「通信機を見つけたんですよ! これで、連絡が取れますよ!」
「なら、病院! 早くリボーンさんを治してあげないと!!」
「それは……どうですかね?」
「どうって言うと……どういうことです?」
「いやー。こういうのもどうかと思いますけど……その骨の人は怪人じゃないですか?」
「うん。」
「病院に運びにしても、受け入れ先があるか……それに街の方もかなり滅茶苦茶になってそうですし……」
「あうぅ……でも早く治してあげないと……」
「ですよね。一回俺の方で、向こうの状況の確認がてら病院も頼んでみます! 骨の人は怪人だけど助けてもらったんだし、恩は返さないとですからね。」
そう言ってお兄さんは通信機を使い電話をかける。
「あたしも宮ちゃんせんせーを助けなきゃだよね。次はあたしの番だもん! ちゃんと面倒見ててあげないと!」
お兄さんが電話に出て何やら話をしだしたので、再び宮ちゃんせんせーの元の戻る。
すると、宮ちゃんせんせーの周りで何か黒い影がガサガサと動いていた。
「誰? 誰かいるの? まさか! シラセ!? まさか、まだ生きているの!」
その影に話かける。
突然、現れた影にあたしの心臓が大きく動く。
「シラセ? それ誰にゃー? あの変なバリアーを張ってた奴の事ー?」
そこに居たのはイクラシティで戦った猫の怪人さんだった。
「あ、あなた!! なんでここに居るの! その人から離れて!」
猫の怪人さんはあたしを見てハテナを顔に浮かべているようだ。
変身をしていないからあたしがタマキキャットだと気づいていないように見える。
「ただの人が怪人を目にして引かないのは褒めてあげるけどー。こいつは返してもらうにゃー。本当にボロボロ。全く、こんなところで寝ちゃってー。」
「その人は今から病院に連れて行くんだよ!」
「ふっ、人が怪人を診るー? 馬鹿も休み休み言えって話だわー。」
猫の怪人さんは、宮ちゃんせんせーを担ぎあげると、「人が怪人と関わっても録な事にならいわよー。あたいも疲れてるし、見逃してあげるー。じゃあねー。」
勢いよく跳躍して、建物の外に出て行ってしまった。
追いかけなきゃ!
「あっ!!! 待って!!! 変身!!!」
しかし、何も起きない。
「あれ? 変身! 変身!」
……魔法少女タマキキャットに変身できない?
今はそれよりも……
急いで窓に向かい外を見ると既に宮ちゃんせんせーも猫の怪人さんもどこに居なかった。
「そんな……!? どうしよう……! 宮ちゃんせんせーが攫われちゃったよ!」
あたしが呆然と窓の外を見ていると、お兄さんが戻ってきた。
「タマキキャットさん!! 骨の人を受け入れてくれる病院が見つかりました!!! さっきの戦いを見ていて、看病をしたいって…… あれ? どうしたんですか?」
「今、猫の怪人さんがやってきて、リボーンさんを連れ去ってしまったんです……」
「えっ! マジですか!? やっぱり人に手を貸してシラセの奴を倒したことで怪人達も怒りが溜まっちゃったんですかね……」
「そんな!?」
「いやいや…… だって、怪人達にとってもあの人はイレギュラーなんじゃないかなと? 折角、怪人にも友好的な人が現れたと思ったのに……」
いつもお読み頂きありがとうございます!




