vs千仙怪人 白老のシラセ Part5
Side:GUYコツ
こいつ……シラセか?
俺は突然の自体に呆けてしまっていた。
繭から現れた異形の肉塊。
体から発せられる肉の腐敗臭に隣では梢や青年も顔を青くしながら、小さく喉を鳴らしながら口をぐっと押えていた。
救いは辺りが暗くなったことで、その肉体を直視することがなかったことだろう。
一瞬だけ見えたそれは、人体の肉や臓器が交じり合った異物だった。
はっきりと視認できていたら、今の周囲に漂う匂いと交じりあい、戦闘をする気にすらならなかったかもしれない。
今のその物体は、小さな悲鳴を上げながら、暗闇の中でごそごそと蠢きながらくねらせているように感じる。
「クカカ。」
シラセの嗤い声が聞こえてきた。
影が動き、人の形を形成していく……
「これでどうだ?」
闇の中の再び何かが伸びてきた。
それは、俺の体を掴む。
「がっ!!!」
「何? 何がおきてるの?」
俺の呻き声に反応して梢が声をあげる。
「梢、青年と一緒に逃げろ!!!」
「儂が逃がすと思うか!」
闇が一点に集まりだす。
そこに居たのは、100体の怪人が歪に交じり合った人型の怪物。
体中から苦痛歪んだ顔が浮かびあがり、口だった場所から、赤い泡を噴き出し小さく呻き声をあげている。
人の顔の部分にはシラセの顔が浮かびあがっている。
元の姿では地面につけていたシラセの顔から垂れる白髭が、宙に浮かびあがるほどの巨体。ゆうに五メートルはあるだろう。
俺は太い左手を模擬したような肉塊に掴まれていた。
「リボーンさん!!」
「俺に構うな! 早く行け!!!」
唇を噛みしめて青年の手を取り梢は走り出す。
「こっちです。」
「貴様らも逃がさんよ。【混沌の檻】」
シラセの中心に、天から光が降り注ぐ。
網のように、結ばれていく。
こんな状況じゃなきゃ神秘的なシーンだな……
「いたっ!!!」
梢が光の網に手を触れると手の平が赤く爛れてしまう。
「タマキキャットさん大丈夫ですか?」
「駄目みたいです。私じゃこの光の網は破れないです……」
梢達はその光で出来た網に阻まれてしまったようだ。
「儂を中心に障壁を張らせてもらった。お前たちも逃がさん。死滅した雑魚どもの代わりに儂の実験材料になって貰わんとな。」
「マジかよ……」
「貴様もだよ。怪人のヒーロー!!! まずは一辺死ねぃ。なぁに。安心せい。直ぐに甦らせてやる。」
シラセは俺を掴んでいる左腕を大きく振り上げて、地面に叩きつける。
「ああああああ!!!!!!」
ドン!!!!!!
シラセの腕は床を突き破るとその勢いのまま、下の階すらもを突き破りさらにその下の固い地面に叩きつけられてしまう。
「リボーンさん!!! ああっ! なんて惨い……」
どうなってる。真っ暗だ。
足も手も動かねぇ……
☆☆☆
Side;タマキキャット
リボーンさんを掴んだシラセが下の階に行ってしまい、あたしとカメラマンのお兄さんは目の前の光の網に何も出来ずに見てるしかなかった。
そんな時に、お兄さんが何やら持っていた機材を弄り始めた。
「くそ!」
「お兄さん! 何してるの!?」
「映像に撮るんですよ。これは、俺の仕事ですからね。」
「今はそんな場合じゃなくて、逃げる方法を考えなきゃ!」
「逃げる? こんな状況であんな化け物相手にですか? タマキキャットさんだって無理でしょう。なら、ここが俺の最後になるかもしれないんだ……今の事実を皆に伝える。それが俺の役目なんですよ。」
そう言いながらも手は震えている。
「……」
あたしは何も言い返せずに、下を向いてしまう。
確かに言っている通りだ。
お兄さんはカメラを構えるとふらふらとシラセが消えた穴の中にカメラを向けた。
その瞬間ビックとした。
「あの骨のヒーローがもうむちゃくちゃだ……」
あたしもその穴を覗き込む。
目には入ってきたのは地面にバラバラになり倒れるリボーンさんと隣で笑うシラセの姿だった。
☆☆☆
Side:GUYコツ
「クカカ。全くあっけない。立った一撃で動けなくなるとはな。怪人のヒーローよ。終わりだな。」
シラセの嗤い勝利宣言をする声が聞こえた。
「クカカ。奴らはどんな拷問をして楽しもうか。体中を生きたまま切り刻み、その口に食わせてやろうか? 体中の水を絞り取り、生きたミイラにしてやろうか? いや、ヒーローの小娘には、今回死んだ怪人の代わりとなる子を孕ませる肉袋にして償ってもらうか。」
全く……気持ち悪い奴だ。
そんなの許せねぇ
っと立ち上がれればいんだが……
体はもう動かない……
頭は痛い……
「ん? 何だ。小娘の奴らめこっちを見てるのか? そうだな。」
シラセは俺の頭部を持ち上げてそして、それを勢いよく砕いた。
「リボーーーーーンさああああああああああん!!!!!!! あああああああああああ!!!!!! だめええええ!!!!」
梢の悲鳴が聞こえる。
次の瞬間、地面が大きく揺れてシラセが上空に飛び上がった気がした。
「クカカ。ここにヒーローはいない。さぁ、愉しもうじゃないか。まずは……小娘貴様からだな。おっと撮影をやめるなよ。」
二階に上がったシラセは梢と青年の前に立ちふさがる。
シラセは容赦なく、梢をいたぶり始めた。
骨で作られた鋭利なトゲのついたしなる剣を梢に振りかざす。
それは脚に無数の痛々しい傷跡を残す。何度も。何度も。
梢の悲鳴が止むことななかった。
「もう……やめて……助けて……」
梢のか弱い助けを求める声が聞こえた時、俺の心臓に再び火が宿る。
それは、スラッシュを打ち破った時に感じた炎。
燃えろ!! 燃やせ!!!! 魂を!!!!!!
俺は立ち上がる。
半分ほど砕かれた頭蓋骨を広い上げて、頭につけて俺は飛びあがった。
目の前の惨状を見てこみあげる怒りも全て拳に込める。
「クカカ。命乞いか? この場で貴様を助けるものなんぞいない。絶望に染まりながら、果てるがよい!」
俺は叫ぶ。
「やめろ!」
「ん?」
シラセがこちらを振り向く。
その動きに合わせてシラセの体に目掛けて俺は深く腰を据えて拳を突き出す。
【燃える魂の燃える拳!!】
俺の赤く光る拳はシラセを貫いた。
そして、熱く燃え盛る拳がシラセの体を焼きつくしていく。
「貴様!!! なんだその姿は!?」
急な事態に戸惑ったシラセは百対の怪人が融合した肉体を切り離して、燃えていく体を捨て去った。
そして、次元を飛び越えようとするシラセ。
体が徐々に透けていく。
しかし、俺はそれを逃がさない。
「お前のような邪悪を逃がさない!!!!」
胸の隙間から見える赤い光が一層強くなる。
心臓が張り裂けな程痛むが、俺の覚悟は揺らがない。
常人には出せない速さでシラセを掴みかかり、消える直前で押し倒して馬乗りになった。
苦虫を潰したような顔で俺を睨みつけるシラセを見下ろす。
「おのれ!!! おのれ!!!!!」
「喚くな!!!!」
俺は赤く光る拳をシラセの顔に振り下ろした。
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