vs千仙怪人 白老のシラセ 束の間の休息
Side:GUYコツ
まるで空間の一部が切り取られてしまったかのように存在している黒い繭を観察をしていたが、特に何も起きない。
俺と梢と青年は、部屋の中で話をしていた。
「なぁ、骨のヒーロー。アレもぶった切った方がいいんじゃないか?」
黒い繭を指さしながら青年は俺に言ってきた。
そして、それに同調するように梢も続けて言った。
「あたしも賛成です。」
一理ある。
シラセの研究室から戻った後に出てきた謎の物体。
放置するのは危険かもしれない。
二人の意見に無言で頷いて、俺は剣を握り占めて立ち上がり、ふらふらと繭に近づく。
近くでみると、その禍々しさは異様だった。
まるで、生きているみたいだ。
剣を振り上げて思いっきり剣を振り下ろした。
しかし、鈍い金属音が響き、俺の手に痺れが残るだけだった。
剣ははじかれてしまい黒い繭には傷一つついていない。
「ふぅー」
俺は大きく息を吐き出す。
「全くビクともしてないな。」
俺の様子を見ていた青年が声を上げた。
「これは放置するしかないんじゃないか?」
確かに、この繭には俺の攻撃は通じていない。
俺は考える。
そもそも、シラセは死んだのか?
正直な話、俺が奴につけた斬撃は致命傷の一撃ではないだろう。
それに奴の最後の言葉。
――『儂の最強の姿を見せてやろう!!!』
まだ、奴は生きていることは明白だ。
そして、まだまだ、やる気も十分だと思う。
「……ボーンさん! リボーンさん!!!」
梢が俺に話しかけていた。
話かけれていることに気が付き、俺は小さく手を開いて、俺は応じる。
「梢、俺にはこの繭は無理そうだ。」
「そうじゃないの! あのっ……リボーンさん。 あのこれ。」
そう言いながら梢は一つの薬を俺に差し出していた。
「これは?」
「あたしの魔法で作った治癒力を上げる回復の薬です。即効性があるので、ダメージを減らせるかもしれません。」
「そうか。ありがとう。」
俺は梢からくすりを受け取り口に入れる。
先ほどのシラセとの戦いで体中に出来ていた裂傷がふさがっていく。がふさがっていく。
「これは凄いな。」
流石に砕けた左腕は元に戻らないものの、元気が湧いてくるようだ。
「ありがとうな。梢。」
感謝を告げると、照れているように小さく笑う。
そして、急にもじもじとしながら、顔を下に向けた。
「どうした?」
「こんなときに聞くことじゃないんですけど……」
ん?
「あのリボーンさんの正体は、骨の怪人さんで、宮ちゃんせんせーなの? 、いや、ですか?」
ああ。
そういえばいきなり出てきて混乱もしてたよな。
質問の意図はわからないが、小さく頷きながら肯定する。
「そうだ。」
「そっかぁ。そうなんだ。」
俺の答え聞き、梢の表情が明るくなった。
「騙すつもりはなかった。そう、そんなつもりはなかった。ほら、俺は怪人だし、梢がヒーローなのは知っていたから、正体を明かすのはまずいと思っt……」
俺の言い訳がましい言葉を遮り梢が俺の手を握る。
「ううん。だって、ヒーローなんだもん! 正体を隠すのは当然だよ!」
キラキラとして子供の純粋な瞳。
全く敵わないな……
梢は続ける。
「リボーンさんは、あたしが危ない時に助けてにきてくれたから。実は、正体があたしのお父さんなのかなぁって思ってたんだよ。お父さんが蘇って助けに来てくれたんじゃないかって。」
「そっか。それは夢を壊しちゃったな。」
「ううん。宮ちゃんせんせーで嬉しい。カッコイイヒーローに直接お礼が言えるなんて思ってなかったもん!」
「ははは。そりゃな。俺にとって梢は……」
日常の象徴だからな。
その言葉を言おうとしたが、あまりにクサい台詞だと言う直前で言葉を止めた。
いきなり、言われても理解できないだろうし。困惑させるだけだろう。
梢は何を言うのかと期待をした顔を向けているが俺は取り繕うように言い直す。
「危なっかしい生徒だからな。面倒をみるのも先生の役目って奴さ。」
「あー! 宮ちゃんせんせー酷いよ! そういう風に見てたんだ!」
「すまん。すまん。」
「でも、イクラシティに会ったのも今考えると運命だったんだね! あたし、宮ちゃんせんせーは、あそこで死んじゃったと思ってたから……」
言葉に詰まる。
何をどこまで答えるべきか。
興奮した様子でジーっと見てくる梢の真っすぐな目。
「いや、あれはそうだな。」
元凶とまでは言わないにせよ。
あの時はイクラシティを怪人の手に落とそうとしていたのは事実だ。
回答に困っていると、青年が声を上げた。
「おい! 骨のヒーロー、タマキキャットさん、繭を見てくれ。」
「どうしたんだ?」
俺は繭を見る。
小さな音とともに、ヒビが入り、光が零れだす。
「さっきの攻撃が今になって効いたのか?」
繭の中から聞き覚えのある声が聞こえだす。
「クカカ。怪人のヒーローよ? 準備は出来ているか?」
繭の中から太い腕が飛び出す。
その腕は歪な筋肉がついていた。
まるで複数人の体がぐちゃぐちゃに継ぎはぎされて混じり合ったような感じだ。
筋肉の動きが動く度に、血管から赤い液体が噴き出している。
闇の中から、赤い眼光が俺を視ていた。
感じる視線は一つじゃない。二つ、三つ……
息を飲む暇もない。俺が戸惑っていると液体を飛び散らせながら黒い槍のようなものが俺を目掛けて飛んでくる。
いや、よく見るとそれは槍ではない。骨や爪。それも人体を構成する背骨だ。
それが複雑に絡みあい一つの巨大な武器を形成している。
梢を庇うように地に伏せた。
攻撃は避けることができたが、俺の上から、小さな白いかけらと赤い液体が飛び散ってくる。
顔を上げて相手を見る。
俺の目に飛び込んできたのは人体と言うには歪な肉塊。
百ほどある顔が蠢き俺を睨んでいる。その中にはさっきまでシラセの戦いを見ていたパラボナの奴の顔もある。
繭が完全に破れた時に世界が黒に包まれた。




