ヒーロー登場?
☆☆☆
Side:榊勇二
僕は画面の先で起こっている事を見て、言葉を失い立ち上がる。
「梢が負けた……」
「梢さん……ヒーローの姿が解けてる……」
しかし、僕らには何もできない。
なんで、僕はここにいる?
どうして、梢に向き合わなかった……
また、僕から大切な者を奪うのか? 怪人。
絶句している僕と歴の後ろから大きな悲鳴が聞こえる。
「梢!!!!!!!!!!!! なんで??? なんで梢が???? あそこにいるの???? どうして!!! 誰でも良いから梢を助けてください!!! 私の娘なんです!!!!!!! お馬鹿だけどいい子なの!!!? 誰かお願いします!!! 私ならなんでもします!!!」
梢のお母さんだ。
いつもはあんなに大声で叫ぶ人じゃない。
目の前に写る画面に映る梢の姿に我を忘れて叫んでいる。
誰も何も言わない。行動しない。
その騒ぎに警備員の人が駆けつけてきて、梢のお母さんを拘束して別室に連れだしていってしまった。
騒ぎが収まると、部屋が静かになる。
画面の先では梢が長い髭の生えた怪人に拘束されたままだ。
状況は変わらない。
涙目になりながら口を激しく動かしている様子だけはわかる。
音声がないため、僕には何を言っているのかはわからないが、もはや梢に戦う気は無くなっている事だけはわかる。
いたたまれなくなり僕は画面から目を逸らした。
すると、僕の後ろからヒソヒソと話す声がする。
『誰が助けに行くんだよ。そのためのヒーローだろうに……』
『タマキキャットですら勝てない奴に誰が挑むんだって話だよ。無駄死にするだけだろ。』
『それよりも、これでカズノコシティは終わりじゃないのか。』
『なんでヒーローなのに怪人に負けちゃうんだよ。』
『そもそも、変な仮面の奴らがこなきゃ、もっと前にヒーローは終わってたじゃん……』
『なんかヒーローって大したことないよな。高い税金払っているのに、こんな時くらい役に立てよ。』
それは、徐々に怪人に負けたヒーローへの八つ当たりへと変わっていく。
怪人に負けた。
街が一つ奪われた
その事実は、ここまで必死にやってきたヒーロー達に対しても文句がではじめる。
僕も言い返したい。
それをする権利は今の僕にはないだろう。
でも、こんな我儘な奴らを守る理由はあるのだろうか?
その一つの疑問が頭に沸いて出てきてしまう。
優一……
どこまでも真っすぐにヒーローだった優一は何を思い、何を感じてヒーローをやってきたのか?
悔しい。
知りたい。
色んな思いが交差して弾ける。
もしも、ここに居るのが僕じゃなかったら……ちゃんと梢と優一だったらあの怪人も倒すことができたんじゃないか……!
握りしめた拳を横に座る歴が触れる。
「勇二君……手から血が出ています。」
「あっ。御免。」
歴が自分のハンカチを手に巻いてくれている。
「あのっ、私が言う事じゃないかもしれませんが、画面を見ましょう。梢さんの最後を目に焼き付けておきましょう……それが私達にできる贖罪だと思います……」
「最後……」
梢は僕の初恋の相手だった。
どこまでも真っすぐな女の子。
梢に憧れて、僕はヒーローになったんだ。
優一も居なくなり、梢も居なくなる。
最後……重い言葉だ……
歴に促されて、僕は顔を上げた。
白髭の老人はニタニタと不気味な笑みを浮かべながら、手に持った剣をちらちらと梢に見せつける。
梢はより大きな声で叫んでいるようだ。
老人は持っていた剣を梢の左手の甲の上に優しく乗せた。
そのまま左手を伝って、上半身の方へ滑らせていく。
その剣の動きは、梢の左肩で止まった。
そこで、剣は梢の体から離れる。
そう、左肩に向かって獲物を持ち上げたのだ。
周りの人たちも画面にくぎ付けにしている。
僕もその画面を凝視していた。
そのまま、剣を振り下ろすのだろう。
そう思った時に、ガンッという音と共にカメラの映像がかわった。
☆☆☆
Side:GUYコツ
「や゛め゛て゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺が辿り着いた屋敷の中から少女の叫び声が聞こえる。
悠長にしている時間はないようだ。
そう判断した俺は屋敷の扉を破り中に飛び込んだ。
耳を頼りに絶叫の聞こえてくる部屋を見つける。
非常にわかりやすいことに壁には複数の穴が開いていた。
争ったのか後なのか、穴からは部屋の中から零れ出た物で散乱していた。
そして穴から内部をちらっと見ると相当ボロボロになっている。
更に近づいて部屋の中を伺うと、二つの人影が見えた。
立派なカメラを肩に抱える青年と、頭がパラボナアンテナの怪人。
ヘンテコな組み合わせだ。
そう思いつつ、青年のカメラの向ける先を見る。
剣を構えながら不気味に嗤う長い白髭の老人。
いや、怪人か?
そいつは黄色の光を体に取り込んでいる。
大量の恐心?
生み出しているのはベッドに縛り付けられた少女――
あれは、梢!?
なんで、梢はこんな場所に居るんだ?
俺はびっくりして一度部屋をのぞくのをやめて一度落ち着きを取り戻すため胸に手を当てる。。
しかし、今が非常にまずい状態であることはわかる。
いてもたってもいられず、俺は近く転がっていた水晶玉を手に持った。
そして再び穴の外から、「おい! お前!!! 何してやがんだ!!!!!」っと叫びながら、水晶玉を白髭の怪人に向かって投げつけた。
水晶玉は白髭の怪人にぶつかる。
そして、その場に居る皆が俺に視線を向けてきた。
一番最初に声を出したのは白髭の怪人。
「お前、なんじゃい?」
白髭の怪人は低い声で俺に聞く。
俺は答えずに、白髭の怪人を睨みつける。
「ジャミングミン! どうしてここに人がいる?」
俺ではなく、怪人に話題をふった。
それにすかさずパラボナアンテナの怪人が答える。
「いえ……シラセ様。すみません。分かりません!」
シラセ様と呼ばれたコイツがボスか?
こいつらが街中に出ていた怪人達と関係があるのか?
俺が状況を飲み込めずにいると、青年が俺にカメラを向けてながら声を上げた。
「おい! あんた! なんでここに居るのかわからないが、逃げた方が良い! あそこのベッドにいる少女はタマキキャットなんだ! タマキキャットはこいつらに負けっちまった…… こいつらはタマキキャットでも勝てなかった化け物どもだ! だから無謀な事は止めて逃げた方が良い!」
その説明で、事態はなんとなく察することができた。
「テメェ! 勝手にしゃべるんじゃねーよ!」
ジャミングミンが青年を脅す様にいう。
「貴様も貴様だ! 一体何者だよ! なんで人がここにいるんだよ!!!」
「俺は通りすがりのヒーローだ!」
場が荒れたことで、梢は首だけを動かして周囲を見渡しだした。
「な゛に゛……? あれ? 何が?」
涙で顔を濡らした梢と俺の視線が交わる。
そして、俺に気が付くと、ぱぁっと顔が明るくなり、「みやちゃんせんせー?」っと小さくつぶやいた。
「わかんないことだらけだけど、お願い!! あたしをたすけて!!!!!!!!!!!!!!」
それは梢の救援信号の叫び。
俺はそれにこたえるように小さく笑った。
そして、俺はシラセに顔を戻す。
「急に出てきて、儂の食事の邪魔を事を意味を分かっているのか? 消し炭になるがよい!!! 【混沌の炎】!!!」
俺の足元から、黒炎の柱が噴き出した。
「クカカ。貴様を燃やす黒炎だ。己が無謀さを悔いながら、その身で味わうがよい。」




