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屍怪人 GUYコツの受難  作者: 恐竜列島
激闘 怪人協会
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打ち砕かれた心

Side:タマキキャット


 シラセに放ったのは全魔力を集中して放つあたしの最大魔法。

 今、あたしが放てる最大威力。


 あたしの目にはシラセの残った下半身だけがそこにあった。

 もう、へとへと……。起き上がるのつらいよぉ。


 息を切らしながら地面に叩き落ちてしまう。


「はぁ……はぁ……」


「ヤ、ヤッター―――!!! どうだ! 怪人野郎! 見たか! タマキキャットさんの勝ちだ!!! お前らなんかにこの街は負けないんだよ!」


 男の人が叫び声がする。


「タマキキャットさん! やりましたね!」


 男の人があたしに声をかけてくる。

 うん。そうだ。まだ捕まってる人が居たんだ……

 もうちょっと、まだ頑張らないと……だね。

 あたしは男の人に、「大丈夫! 貴方は安全な場所まで連れて行くから安心して!」 と、答えながら、杖を握りしめてプルプルと震えながら起ち上る。


「そんなボロボロの体で……無茶しないでください……」


 あと残りの怪人さんは、変なアンテナの頭をしている一人のはず。


「ううん。大丈夫……ちゃんと守る……から……」


 あたしは声のする方を流し見る。

 カメラを構えたままの男の人と頭がアンテナの怪人さんが見えた。


 その時、心がざわつく。凄く嫌な予感がる。

 アンテナの怪人さんの顔は歪んだ笑みを浮かべていた。

 はっと、シラセの方を見る。


 自重に負けてバランスを崩して倒れた下半身がそこにあった。


「ふぅ……」


 杞憂であったとわかり安心する。

 息を大きく吐き出して、地面を見つめた。

 そのままの姿勢でアンテナの怪人さんに伝える。


「怪人さん、今、降参してその男の人を解放するなら見逃してあげるよ。」

「そうだ。怪人。さっさと離せよ。あのヤバイ爺さんは消し飛んだ、もう終わりだろ。」

「ぐふっ。ぐふ。ぐふ。」

「あん? 何がおかしいんだ? 負けて頭でもおかしくなったのか?」

「人間、あんまり粋がるなよ。カメラはタマキキャットに向けておけよ。これからが、絶望ショーの始まりなんじゃないかぁ。」

「一体何を?」

「あいつはタマキキャットさんの攻撃で上半身が吹き飛んだんだぞ! ほら! あれをみっ!! タマキキャットさん!!!! 後ろ!!!!」


 男の人の叫び声。

 あたしは、後ろを振り向いた。

 先ほど倒れていたシラセの下半身が起き上がり(もや)を噴き出している。


「なっ!」


 靄を纏った下半身は、あたしに近づいてこうとしているようだ。

 それは、生き物の動きじゃない……

 まるで、どこかで遠隔操作されているような、意志がないぎこちない動き。

 しかし、一歩一歩、確実に歩み寄ってくる。


 そんなものを見てあたしは恐怖で動けなかった。

 これまで、こんな怪人さんは見たことない。

 どんな怪人さんにも命があって、人じゃないとして人の基本的な機能は有している。

 いや、どんなに異形の姿になっても、人と同じなのだと信じていた。

 

 でも、今、目の前にいる奴は違う。


 思考は纏まらずに発散する。

 しかし、シラセの動きはその思考の停止した隙を許してくれなかった。

 下半身は既に目の前。


 靄が徐々に広がり上半身の形を作る。

 手の形を形成するとあたしの顎を乱暴に掴んだ。

 凄い力。

 あたしは魔力もない。

 当然、反撃はできない。


「くかか。よーやるのぅ。なるほど。ここまでの切り札を持っていたとは少々意外じゃったわい。」


 シラセの顔が靄の中から歪んだ笑みを浮かべた顔を見せる。

 それは人の姿ではない。

 しわくちゃな顔に地面にまで伸びた長い白髭。

 前に会った、怪人シラセの物だった。


「なんで、生きてるの……?」

「なぜ? うーん。そうじゃなぁ。教えてやるか。」


 シラセはあたしの耳元で囁く。


「儂の力の根源は混沌(カオス)。儂を殺したいなら、光の攻撃は駄目じゃ。光と闇は表裏一体なのだから。」

「そんな……」


 あたしの魔法の根源は光。

 それじゃ、そもそも勝ち目はゼロだったんだ。

 言葉を失い、自然に涙が頬を伝ってくる。

 呂律も上手く回らない。


「くかか。さて、ショックを受けているところ悪いがのぅ。絶望ショーは今から始まる。主賓にはもうちょっとがんばって貰わんとのいかんのぅ。」

「ぜつぼう、しょー?」

「そう。皆の希望を受け取ったタマキキャット(ヒーロー)を壊すショーじゃ。」

「こわすって?」

「今、儂は二つの選択で悩んでおる。皮を剥ぎ、最後まであらがった英雄像の素材にしてやろうか? それとも、手足を切り落とし芋虫のように地を這いずるだけのペットとして飼ってやろうか? まぁ、前者が良いと思っているがのぅ。」


 めまいのする言葉に呼吸がうまくできなくなる。

 いみがわからない。

 でも、酷い言葉を言っていることだけはわかる。


 シラセがあたしの手を掴み撫でまわすように触れ始めた。

 指から手首を伝って上に沿わせて動かす。

 

「素材としては、うん、中なk。うん?」


 左腕の半分。

 そこで指の動きを止めた。


「くかか。なるほど。貴様、既に傷物か? ふぅ。英雄像にするのには少し、この傷は駄目じゃなぁ。」


 そう言いながら、シラセは少し悩む素振りを見せる。

 そして、何かに納得したのか、つまらなそうに言葉を続けた。


「英雄像のコレクションにするつもりじゃったが、傷物なら、ペットにするか。どうせ切り落とすしのぅ。」


 シラセは指をはじく。

 その動作は何度も怖い目にあってきたもの。

 びくりと体が反応してしまう。


「そう、怖がるでない。まだ調教もしてないのに、めんこい従順な奴じゃのぅ。」


 出てきたのは、沢山の刃物と、白い台。


「なぁに、痛みは一瞬じゃよ。」


 シラセがニヤリと嗤ったあと、白い台から黒い影が伸びて、あたしの手足に巻き付いた。

 それらに強い力が加わりあたしを引っ張る。

 引きずるように地面を滑っていくと台の上に手足を拘束されてしまい、全く身動きが取れなくなってしまう。


「あう!!!! なにするの!!?」

「儂が気に入っている内は、ちゃんと儂が主人として面倒をみてやろう。だから、手足をもぎ取られても、地を這うことになっても心配するな。」


 シラセが鋭い刃物をあたしに見せつける。

 この状況になって、やっと理解が追い付いてきた。

 これから起こることを想像するだけで情けなく泣き叫ぶことしか出来ない。


「やだ!!! やめて!!! ごめんなさい!!! ごめんなさい!!! やだ!!! ごめんなさい!!! ごめんなさい!!! やだ!!! やだ!!! やだ!!! ごめんなさい!!! ごめんなさい!!! ごめんなさい!!! やだ!!! やだ!!! やめてください!!! やめてください!!! ごめんなさい!!! ごめんなさい!!! ごめんなさい!!! やめて!!! やめて!!! ごめんなさい!!! ごめんなさい!!! ごめんなさい!!! ごめんなさい!!! ごめんなさい!!! やだ!!! やだ!!! ごめんなさい!!! やめてください!!! ごめんなさい!!! ごめんなさい!!! ごめんなさい!!! ごめんなさい!!! もう逆らいません!!!! ごめんなさい!!! ごめんなさい!!!」


 しかし、あたしの言葉はショーを盛り上げて、シラセを喜ばせる為のアクセントでしかない。

 動悸が激しくなり、胸が痛む。

 シラセの嗤い声が耳を残る。


 あたしは、いつの間にか魔法少女の返信が解けていることにも気づかずに、ずっと泣きながら、シラセに謝罪の言葉を続けていた。

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