怪人のヒーローショー
怪人達は進行を止めるべく最初に立ち上がったのはビートブルーだった。
「俺のビートを喰らえ! 【ジャミングビート】!!!!」
ビートブルーは持っているギターを奏でて、怪人達に向かって衝撃波を放った。
その衝撃で地面から砂塵が巻き上がる。
「どうだ! これが俺の必殺技だぜ!!」
煙がはれる。
―――が、攻撃を喰らっても怪人達は平然としている。
それどこか、攻撃など無かったかのように雑談に花を開かせていた。
「おうおう、またもヒーロー君の登場だぜ。」
「まだ、居るのかよ。」
「やっぱり、シラセ様が言ってたように全く歯ごたえがないな。」
「全員、雑魚とか奇跡かよ。」
「次、誰がやるよ?」
「俺にヤラせてくれんか? さっきから前列ばっか遊んでてずるいって思ってたんよ。」
今まで戦ってきたヒーローの仲間達が馬鹿にされているのが聞こえてビートブルーは下唇を噛みしめる。
「怪人が!! 今までのヒーロー達を馬鹿にするんじゃねー!!!!!」
怒りで我を失い、ビートブルーは叫んだ。
―――その瞬間、その胸を一筋の光が貫いた。
ビートブルーは倒れる。
「ビートビル―!!!」
弓を構えた怪人がしたり顔をして、倒れるビートブルーを笑う。
暗くなる視界の中で、立松陽平は虚無感を抱いたまま、その場に倒れ込んでしまう。
☆☆☆
―――仲間が倒された。
狼狽するSUMOライダーにハリネズミのように背中にトゲの生えた一体の怪人が近接してくる。
頭を切り替えて、直ぐに迎撃に備え、技を出すために構えた。
迎え撃つため、SUMOライダーは渾身の技を出そうとした。
「甘いんだよ! お前の狙いなんて見え見えだ!」
怪人が叫ぶと、自らの体を丸めて回転しながら突撃してくる。
「きゃあ!!!」
技は透かしてしまい、回転してくる怪人に正面からぶつかり弾き飛ばされてしまう。
トゲによる切り裂きによって、スーツもボロボロだ。
ハリネズミの怪人はにやりと笑いながら、背中に生えたトゲを無数に発射してきた。
(あっ、これ終わったかも……)
SUMOライダーは静かに目を瞑った。
『今、我々の目の前で、勇敢なヒーローが一人、また一人と散ろうとしています……怪人達に全く手も足もでません……』
ヒーロー達を応援していたセントラルタワーの最上層では絶望感が漂っていた。
☆☆☆
攻撃が当たるだろうと誰もが思った瞬間、SUMOライダーの体が強い力で引っ張られる。
トゲは誰も居なくなった地面に雨のように突き刺さっていく。
「わわっ!? なに? なに?」
それを見てハリネズミの怪人も困惑した声を上げる。
「なんだっ!?」
SUMOライダーが引きずられた先には黒いフードにトレンチコートを着た怪しい男が立っていた。
「だ、だれ!?」
SUMOライダーは上ずった声で話しかける。
「……」
―――怪しい男からの返事はない。
「にゃはは。スクイッドマン。あたいはこれを運んできたにゃー。」
今度は仮面をつけた女が抱えていたビートブルーをSUMOライダーの近くに放り投げて、黒コートに近寄る。
「あぁ? 何だ? ってヒーローにしては随分とヘンテコな恰好だな。」
突然、現れた奴らに怪人は不快感を込めた侮辱の言葉を投げつける。
「ヘンテコだとー! お前らには言われたくないにゃー!」
「……おい。キャット――ネコ仮面レディ。少し熱くなりすぎだ。お嬢の付き合いに本気になるなよ。」
「だってぇ――というより、GUYコツはどこにいるのかにゃ?」
「……そういや、いないな。」
「あいつー!!!!」
二人のやり取りを何をしているのかと疑うような目で見つめていたSUMOライダーが立ち上がり声をかけてくる。
「一般人は、タワーの上で私達の勝ちを信じて応援してて。私達は最後まで頑張るから!」
出てきたのはヒーローとしての矜持からの言葉。
しかし返ってきたのは、
「……服。」
黒いコートの男に指をさされながら言われて、SUMOライダーは視線を落とす。
「はにゃ!?」
SUMOライダーは驚きの声を上げなガタ、スーツが破けて露わになった自分の肌を慌てて隠しだす。
「クソが! 折角のお楽しみタイムを邪魔しやがって!」
ハリネズミの怪人が声を上げて、無数のハリを三人の立つ方向に発射する。
第三の方向、真上から、声がする。
「【パーフェクトウォール】!!!」
しかし、その無数のハリは何かに阻まれて、届くことはなかった。
「俺っち、キンニクマスク。参上!!! ぬぅん!!!」
その男は怪人と3人の間に降り立ち、マッスルポーズを取りながら登場する。
「なんだ、こいつ? あー、イライラさせてくれる。」
怪人達は透明な壁に阻まれてしまい、進行が止まってしまう。
怪人達は見えない壁に近づきも、破壊を試みるがなかなか壊せない。
どんどんと強く叩く度に振動が伝わってくる。
怪人達は突然現れて謎の集団にフラストレーションを溜めているようだ。
そんな中、一人の怪人が壁を叩きながら声を上げた。
「お前たちは何者だ!?」
それに答えたのは、その怪人の背後に現れた赤い仮面に赤いドレスを纏った小さな少女。
「うふふ。怪人様、良いことを聞いてくれますわね。わたくしたちは【ヒーローズ】ですわ!」
手を前に出しながら、ポーズを決める。
「わたくしはスカーレッド!」
「ヒーローズ? なんだそのダサ―――」
「ふふ。血を得たわたくしの力、その身に刻みなさい!」
少女の手から伸びた鋭い爪が怪人の首を掻っ切った。
『劣勢と思われたヒーロー達の前に何者かが現れて、怪人達を抑えています!! 彼らは一体何者なのでしょうか? 私達を助けてくれるのでしょうか!!?』
☆☆☆
俺は走り続けていた。
セントラルタワー。どこにあるんだよ……
当ても無く走り続けて、くたくたになっていた。
ちょうど商店街の前を通っている時に陳列されたテレビが見える。
そこには、現在の様子が生中継で流れている。
何やら、ナレーターの声が若干明るいように思う。
少しの興味から画面の中をちらりと見る。
「なっ!? アイツらがなんで?」
俺は驚愕して画面に飛びついた。




