かくて怪人はヒーローの真似事をする。
爆発音と共に始まった戦い。
しかし、それは戦いというにはあまりにも戦力差がありすぎた。
「おい……おい……」
思わず画面を掴んで俺は叫ぶ。
そこに、映し出される映像は惨状なものだった。
怪人達は一歩、一歩とゆっくりと狙いの場所に向かって行進を続ける。
まるで百鬼夜行のようだ。
何人かのヒーローが数人で組んで、怪人の前出るもあっさりとやられてしまう。
血まみれになりながら、街を守るために死力を尽くすも、足止めにすらなっていない。
怪人達の行列は止めることはできない。
どんどん街を破壊しながら進行していく様子が見て取れる。
レポーターの実況の声と、最初ははちけれんばかりの声援がだんだん小さくなっていていく。
15人のヒーローが起き上がらなくなった時、声援は消え、実況のあきらめたようなかか細い声のみがきこえてきた。
『怪人達はどんどん、このセントラルタワーに近づいてきます……この街はもう終わりなのでしょうか?』
「ねぇ、GUYコツ、いつまでそんなの見てるのー?」
キャットシーの声のする方を向く。
「筋トレグッズを持っていけば、あそこでも飽きないですかね?」
「……あんな狭いところで筋トレをやると、余計に嫌われるから辞めといた方がいいだろ。」
「ねぇねぇ、原、鉄男、この仮面がどうかしら? わたくしに似合うと思いません?」
「お嬢は仮面嫌いじゃなかったでしたっけ?」
「あら? 嫌いではないわ。仮面舞踏会には仮面舞踏会の良さがあるもの。」
モール中なか大量に、色々な物資を持ち出して、遊んでいる。
俺以外はこの中継にそうそうに飽きたのかモールの中をウロウロとしていたようだ。
「お前らな! 今、この街がヤバいってのに何やってんだよ!」
俺が声を荒げて注意をすると、画面を見たスルメンが興味なさげに反応した。
「……おいおい。ヒーローども、全然、駄目じゃねーか。」
「でしょうね。シラセの部隊はA級上位のヤバイ怪人ばかりですからね。並のヒーローじゃ勝てないですよ。少なくてもイクラシティで戦ったアクセルくらいの力があって、初めて土俵に立てるってもんです。」
「……まぁ、何にせよ人がいなくてラッキーだったな。今のうちに物を持って戻ろう。」
「あたいも、スルメンに賛成にゃ。金品と酒を一杯持っていこうにゃ!」
こいつらは気のいい仲間であることには違いなんが、やはり根本的な部分でズレてるな……
いや、この場合、ズレてるのは俺の方なのか?
キャットシーが俺の方をじっと除き込むように見ている。
「GUYコツ?」
「すまん!俺は、この状況をほっておくなんてできない!俺はセントラルタワーって場所に向かう!お前らは戻っていて構わない!この怪人達を止めたら直ぐに戻る!」
それだけ言い残して、俺は、セントラルタワーを目指して駆け出していた。
☆☆☆
「……GUYコツの奴、いっちまったな。」
「あいつっーー!!」
「大変! 美衣子が怒りでプルプルしてますわ!」
少しだけキャットシーを落ち着かせた後、アレグラが皆に聞く。
「どうしましょう? 司の事を追いかけます?」
「当然、追いかけるにゃ! そしてあの馬鹿はにゃぐってもでも連れ帰るにゃ!」
「……ほっときゃいいのだろう。GUYコツの奴も帰れと言っていたんだ。それにしても、GUYコツの奴の行動は全く理解できんな。」
「俺っちは、追いかけるでも戻るでもどっちでもいいですよ。」
「わたくしは追いかけるに一票ですわ。」
「……追いかける派多数か。」
「原は嫌なんですの?」
「……嫌ではないが、単に面倒だなって思ってな。あいつの行動原理はよくわからんしな。まぁ、一人であの博士と居るくらいなら付いていくよ。」
「それじゃ、早く行くにゃー!」
追いかけようとしたときに、突然、画面から大きな声が聞こえた。
『ああっ! 怪人達が無傷のままセントラルタワーに辿りついてしまいました!!!』
その声に驚き、4人は先ほどまでGUYコツが見ていた中継に目を移す。
GUYコツの事を追いかけようとしたとき、アレグラが一つの皆を静止する。
「皆さま、ちょっとまって!」
皆で集めていた荷物をあさり始めて、何かを見つけたのか、それを持ち上げる。
アレグラは、振り向きながら言った。
「そうだわ! わたくし、良いことを思いつきました!」
「……アレグラ嬢、なんだよ。良いことって。」
アレグラが仮面を顔に着け満面の笑みを浮かべながら、
「わたくし達もヒーローごっこと行きましょう!」
☆☆☆
SUMOライダーと、ビートブルーはセントラルタワーの最終防衛ラインを任されていた。
「SUMOライダー? 今、戦局はどうなってるんだろうな。食い止めてるんだろうか?それとも、案外勝っちゃってたりしてな!」
「ビートブルー、その期待は捨てた方がよさそうね。」
敵の影が見え始める。
その数はざっと二桁はいるだろう。
驚きべきは全く傷ついている者がいないという事。
また、恐ろしい力がただ漏れになっている。
今まで戦ってきた怪人とは全く別の存在。それが何十体も居るのだ。
自然と足腰が震えてしまう。
「マジか……奴らに全くダメージが無いように見えるんだが?」
「私もよ。全くこういうときだけタマキキャットの予感って当たるのよね……今回の敵はヤバいって言ってたけど。これは想定外だわ。」
「タマキキャットの方は大丈夫かな?」
「今はタマキキャットの心配より、今は私たちは自分の心配をすべきよね。」
「だな。俺たちがやるのは、タマキキャットが、シラセを潰すまでの時間稼ぎで良いんだから!」
「死ぬなよ。SUMOライダーーーいや薫。」
「あんたもね。陽平。」
二人は握手をしてこれからの戦いを鼓舞し合った。




