アレグラ救出
GUYコツ達は只野博士から送られてきた場所に向かうため集合した後、吸血鬼を発つ前に墓標の前で手を合わせてた。
先の戦いで亡くなった命に敬意を表しながら静かに黙祷を捧げる。
隣から嗚咽が聞こえた。
「お爺様……役目も録に果たせず、ご迷惑をかけてごめんなさい……わたくしももうすぐそちらに向かいます。」
それは、とても小さなつぶやきだった。
しかし、GUYコツの耳に強く残る言葉。
バイロン候からの「アレグラの生きるようにしてほしい。」という頼み事を思い出す。
黙祷を終えて皆が緊張の糸が切れたように息を吐きだしているとき、GUYコツはアレグラに話しかけた。
「アレグラ? 少し良いか?」
「えぇ、良いですけれど? 司、何の用ですの?」
「バイロン候は、アレグラに生きて欲しいと願っていた。」
その話かと呆れたような顔をして、GUYコツの問いに答える。
「はい、わかっておりますわ。」
「そして、血を飲まないから、死に向かっているとも言っていた。」
「えぇ。以前にお伝えしましたが、わたくしは、血を飲みません。これは、わたくしの贖罪なのです。」
「スラッシュが言っていたみゆきっていう少女が関係しているのか?」
「はい。わたくしに出来た親友ですわ。彼女は素晴らしい人格者でした。そんな彼女の犠牲によってわたくしは吸血鬼に、そして、真祖になりました。」
「人格者であるその子はアレグラが消えることを望んでいるのか?」
「それはわかりません。もう、居ないのですから。会いたくても会えません……。」
アレグラは暗い顔を見せる。
GUYコツは、死者の言葉を借りて説得しようとしたことを申し訳ない気持ちを感じつつも、アレグラを救うタイミングは今しかないと思い、説得を続けた。
「そうだな。言い方が卑怯だったな。すまない。だが、死者の気持ちは分からないんだ。ならバイロン候の生きてほしいという遺言を聞くのも大事なんじゃないか?」
「ゆきちゃんは吸血鬼の都合で犠牲になったことに違いはありませんわ。わたくしは贖罪を果たさねばなりません。」
「ならば、余計に生きなきゃいけないだろう。」
「どういう事ですの?」
「吸血鬼が起こした事件が発端になって今回の戦いが起こったんだ。この墓標に刻まれた数だけは十分に贖罪を果たしたと言えるんじゃないか?」
「それでは、わたくしの気持ちに整理がつきませんわ……」
「俺は、こう思うよ。アレグラが生きている限り、みゆきという少女も吸血鬼も消えることはない。生き証人って奴だ。責任を感じて死を選ぶのは潔いと思う。だが、生き証人として最後まで精一杯生きていくのも立派な責任の取り方なんじゃないかと。」
「わたくしに一人で無為に生きて行いけと……司は鬼ね。」
無為な人生が辛いものであることをGUYコツは知っていた。
無為な人生を送ることは辺りの景色が暗くなるほどの絶望的なものであることを。
時折、死が明るく感じる。そんな日々を。
「そうだな。俺の言っている事は鬼だな。だが、アレグラ、俺は――俺たちはお前に生きていて欲しいと思っている。そして、一人にはしないさ。ずっと、一緒にいることを約束する。」
GUYコツの言葉を聞いたアレグラが笑い、からかうように言う。
「ふふっ、さっき、美衣子にあんな大胆に告白していたのに、次はわたくしにも告白するんですの? 司も浮気者ですわね。」
「そう茶化さないでくれ。」
「ごめんなさい。司に言われて、わたくしにも消える前にやりたい事ができましたわ。確かに、ゆきちゃんや吸血鬼について、後世に伝えていかないといけないですわね。今、わたくしが消えてしまったら、わたくしの大事な物は存在していなかったのと同じになってしまうのですよね。」
「あぁ。」
GUYコツは大きく頷く。
アレグラが何とか生きる意味を見つけてくれて安心をし胸をなでおろした時、スルメンが声をかけてくる。
「……二人とも何の話をしてるんだ? そろそろ行こう。」
「おう。すまなかった。その前に、アレグラに血を与えたいと思うんだ。」
「……血?」
「実は――」
GUYコツはアレグラの置かれている状況を説明した。
「……全く、そんな大事な事を、黙ってたんだ?」
「でも、生きるって選択をしてくれて嬉しいですね。俺っちの血を使ってもらって構わないですよ。」
「お前の血を飲んだら汚れそうだけどにゃー。あたいの血を使ってもらってかまわんにゃー。」
「……GUYコツもキャットシーもテッペキンも怪我してるんだ。無茶するな。」
「そうだな。今回はスルメンから血を提供してもらう感じにするか。アレグラ良いか?」
「ええ原、よろしくね!」
「……了解。」
スルメンが自分の手を斬り緑色の体液をコップ一杯分の外に出す。
「これって血なのかしら?」
「まぁ、グイっと。」
GUYコツに言われてアレグラは不服そうな顔を浮かべながらコップに口をつける。
アレグラは喉を鳴らせて呑み込んだ瞬間、目を開きむせてしまう。
「あ゛ぅ! ます゛っ!」
「……失礼な。」
「ごめんなさい。予想よりも味が悪くて、でもこれが命の味なのね。ありがとう、原。」
「……まずくていいなら、またやるよ。」
「ふふっ、皆さま優しくてわたくし感激ですわ!」
「なっ?」
アレグラの頭を撫でながら、GUYコツは笑う。
「よし! それじゃ、出発するぞ!」
「「「「おー!」」」」
☆☆☆
GUYコツ達は深い目のローブを羽織り、学校を目指してカズノコシティの街の中を歩いてた。
しかし、街の様子がどうもおかしい。人の通りがない。
(今日は運が良いな。前は人通りが多かったように思うが、今日は人が全然いない。)
学校までなんなく辿り着く。
学校も静かだ。
全く人が居ない事に運が良いと感じつつ、メールに書かれた約束のB1-7会議室に向かう。
隣の部屋に明かりがついており、人が話をしているようだ。
「あまり音を立てずに行動するぞ。」
こそこそと忍びながら部屋の中に入る。
熊の置物。
それは目立つところに置いてあった。
GUYコツが熊の置物に触れると、扉が現れる。
「ここか。しっかしなんでこんなところに?」
扉を開けて中を入る。
中は殺風景な一室。
只野博士が機械をかちゃかちゃといじっていた。
「フォフォフォ、よく来たのうGUYコツ。」




