GUYコツの仲間達
「ツカサン! ツバサ! 見てろ! これが必殺のドリームキック!!!」
公園の一角。
少年が飛び上がり、滑り台の上で叫び、滑り台を勢いよく滑り出す。
そして、滑走して勢いが付いたまま宙に浮かび、ポーズを取りながら砂場に落下する。
「うりゃあああああ!!!!!」
ボスッ……!
それを見ていた二人の少年が声を上げる!
一人はツバサ、もう一人の顔は真っ黒だ。
「すげー! ナカマサ、すげーよ!! まじでドリームキックじゃん!」
真っ黒な顔の少年が砂場に駆け寄る。
「次、僕! 僕やるよ!」
「あっ!ツバサずりー! 俺もやりたい!」
三人の少年が仲良く公園で遊んでいる日常。
――あぁ、これは夢か?
――俺がそう自覚した時、目の前が急に眩しくなった。
呼吸が戻ってくる。
血が体中を巡りだす。
胸が熱く痛い。
「ううん……」
うなされながら、目をゆっくりと開く。
視覚情報よりも先に耳が周囲の情報を伝達してくれる。
「司! やっと起きましたのね!」
「アレグラか?」
「全くお寝坊さんなんですから。」
スラッシュとの戦いを終えてから、気を失って……
「俺はどのくらい寝てたんだ?」
「まるまる三日間ですわ。」
「そんな…… そう! 今はどうなってるんだ!? テッペキンの奴が急にスラッシュの前に現れて……」
「あの悪鬼はお亡くなりましたわ。司との戦闘によるダメージと鉄男の止めの一撃によって……」
「そうか。」
GUYコツは部屋の中から窓の外を見る。
暗い陰鬱な空気がどことなく漂っているように思う。
「それで、皆は何してるんだ?」
「そうですわ! 美衣子が出ていくって言っるんですわよ。」
「キャットシーが? なぜ?」
「司も起きたなら広間に来てくださいませ。わたくし、皆を集めておきますから。」
そういってアレグラは部屋の外に出ていく。
「キャットシーが出ていくってなんでだ?」
ベッドから起き上がり、少しだるい体を動かす。
特に異常は無いようだ。
起きた時の胸の痛みは、いつの間にか気にならなくなっていた。
そして、GUYコツは部屋の外に出ていった。
☆☆☆
広間までの道。
GUYコツは、辺りを見ながら歩いていた。
以前に歩いたときとは違い、赤黒い染みがところどころに見える。
それがスラッシュが襲撃した時に出来たものであることは明白だった。
ふと窓を除くと、外に大きな墓標が作られていた。
遺体の処理は終わったのかと、GUYコツはそう思った。
「俺がもっと早くついていれば、何とかなったのだろうか……」
はぁ……
墓標を見て後悔の念が、GUYコツを襲う。思わずため息が零れてしまう。
「なんか、いつも俺はこうだな。力がついても間に合わないのか。」
パン!
頬を思いっきり叩く。
「後悔は止めだ止め。次こそは絶対に……」
「……おい。GUYコツ。お前、起きたんだな。何をぶつぶつ言ってんだよ。」
突然、後ろから声をかけられる。
聞き覚えのある声。
「スルメンか?」
「……よう。俺が寝てる間に、色々と起こってたみたいだな。」
「誰かから聞いたのか?」
「……大体の事はアレグラの嬢ちゃんからな。ここに来るまでの死体の山と、キャットシーとテッペキンの二人の様子を見てりゃ、相当の事が起こったのは推察できる。」
「ありゃ戦争だったよ。」
「……らしいな。まぁ、終わったことは悔いても仕方ねぇよ。」
「まぁ、そうなんだがな。」
「……あの墓は俺が作ったんだ。ここを出ていくときで良いから供養ぐらいはしてやってくれ。」
「そうだな。あとで墓参りしていかないとな……今は広間でキャットシーとテッペキンの問題を解決する方が先だな。」
「……あぁ、だからさっきアレグラの嬢ちゃんが呼びに来たのか。まぁ、あの二人を頼んだよ。新リーダー。」
「ところで、あの二人に何があったんだ?」
「……それは本人たちから聞いてくれ。」
GUYコツとスルメンは合流して二人で、雑談をしながら広間に向かった。
☆☆☆
部屋中がボロボロになった戦いの痕の残る広間でGUYコツ、スルメン、アレグラ、キャットシー、テッペキンが一同に揃う。
真っ先に口を開いたのはGUYコツだった。
「で、何があったんだ? キャットシー出ていくってどういうことだよ。」
不機嫌そうなキャットシーがテッペキンを指をさしながら口を開く。
「単純に、こいつと居るのが嫌にゃだけー。」
「姉御! そりゃないですよ……」
「姉御って呼ぶにゃ!」
「GUYコツ、こいつを追い出すにゃら、あたいは残ってもいいにゃ。」
アレグラとスルメンの様子を見ると、二人とも首を振っている。
「キャットシー、何をそんなに怒ってるんだよ?」
「こいつがあたいににゃにをしたのかを言えってのかにゃ?」
「はぁ……で、何をしたんだ? テッペキン。」
「……」
テッペキンは口を閉ざして顔を下に向ける。
「司。二人ともこんな調子だから、わたくし達も何があったのか分からないんですわ。」
「……俺達にわかるのはテッペキンがキャットシーに嫌われる何かをしたって事と、それはテッペキンも自覚してるって事だ。」
GUYコツは大きなため息を吐き出す。
その時、GUYコツの持っているメールの着信音がなる。
チャーラーチャーラーラー
GUYコツはメールを開く。
只野博士からの[秘密基地へ案内]という件名のメールが届いていた。
端末を操作して、メールを確認する。
○
件名:[秘密基地への案内]
宛先:小宮 司
本文:
GUYコツ。秘密基地の用意が出来たぞい。
はよぅ来るんじゃ。
場所はカズノコ学園地下1階-B1-7会議室にある熊の置物に手をかざすんじゃ!
もしも今日中に来れないならば、ワシに報告を入れろ!!!
緊急連絡先:xxx-xxxx-xxxx
******
(こんなタイミングで博士からメールが届くのかよ。空気読めよ。あのジジイ……)
「司、どうしましたの?」
「あぁ。ちょっとな。只野博士から連絡があったんだ。」
GUYコツは携帯電話をしまいながら、テッペキンとキャットシーに話しかける。
「先に結論を言うと、キャットシー。テッペキン。俺はどっちかを追い出すつもりはない。」
最初に反応したのはテッペキンだった。
「本当ですか! 兄貴!! ありがとうございます!!!」
テッペキンは頭を下げる。
「俺っち、マジでこれから兄貴についていきます!!!」
「テッペキン。頼りにしてるよ。」
GUYコツはキャットシーを見る。
「はんっ、GUYコツの事だからそう言うと思ったにゃ。だから、あたいが出ていくって言ってるのにゃ。」
「キャットシー、お前が逃げるっていうなら嫌でも俺は付いていくよ。今は、ネオ怪人協会って奴らがウロチョロしているし、変な奴に捕まったらもっとひどい目にあわされるかもしれない。だから今、抜けるのは駄目だ。」
「むぅー。」
キャットシーは頬を膨らませて不満を顔にだす。
「不満があるのはわかった。ただ、今回の事はテッペキンだけの所為じゃない。ゴタゴタに巻き込んだ俺に責任がある。」
「別にGUYコツが悪いにゃんて言ってにゃいだろー。」
「なぁ、キャットシー。これからを俺に守らせてくれないか?」
「はぁ! あにゃた、にゃっ、にゃに言ってるの!?」
「俺はスラッシュを、S級怪人って言われる化け物も倒した。不安にさせないように俺も強くなっていくよ。絶対に守ってやるから。一緒に来てくれ。」
「にゃ……にゃっ!!!!」
キャットシーは顔を赤く染めて一目散に外に出ていってしまう。
「おい! キャットシー!」
キャットシーの名前を呼ぶと入り口から半身だけのぞかせながら、キャットシーが応じる。
「GUYコツ、信じてやるから、絶対にあたいを守れよにゃー……」
それだけ言い残して、キャットシーは逃げるように外に出て行ってしまった。
そんなキャットシーに向かいGUYコツは叫ぶ。
「一時間後にここを出るぞ! 墓標前に集合な!」
GUYコツが肩を下した時、にやけるスルメンと頬を染めたアレグラがちゃちゃを入れる。
「……ほぉ、まさかそういう作戦でごり押し解決とは。」
「まるで、愛の告白のようでしたわ!」
二人にからかわれてGUYコツも体が熱くなってしまう。
まるで言い訳をするように告げた。
「お前らも! 一時間後に墓標の前に集合な!」




