vs魔法少女タマキキャット
若干の暴力要素が含まれます。
「覚悟!」
魔法少女タマキキャットと名乗った梢は杖を構えて、目を閉じた後、何やら呟く「精霊の加護よ。光の礫となりて敵を殲滅せよ。ホーリーレイ!」、杖をこちらへと突き出し、突如杖の先端が光ったかと思うと、光の礫が俺の方に飛んでくる。
急ぎ回避をする。ドンドンドンと俺の座っていた場所に光の礫がぶつかり消えていく。礫を回避しきれずにの一つが俺にぶつかると強烈な痛みと何かが焼ける臭いがあたり一面に包まれる。
アァアァアァアァ……イタいヤバい……
更に混沌とした状況に置かれた俺の頭はパニックになっていた。色んな事がありすぎて、まともな思考は出来ない。ただ、分かっているのは昨日仲良くなった梢と敵対し、俺は攻撃されたという事だ。
本能的に臨戦体制をとり、俺も梢を見る。梢も俺の動きを伺っているのか視線を外さずにじっと見つめている。
睨み合いが続いた後、ガタッという音と共に俺と梢の間にあったゴミ箱が若干震えたような気がした。ゴミ箱に気を取られた一瞬の間に梢が消える。
刹那、俺の面前に梢の顔が映ると、俺の横から衝撃と痛みが走る。
「がぁっ……」
平凡な少女の腕力で出せる力で無い強大な力で杖が振るわれ、俺の体は壁の方に吹き飛ばされる。壁に叩きつけられ崩れ落ちる。そんな俺を遠方から見つめ、梢は更なる追撃のために。杖を構え、目を閉じたあと呪文の詠唱をはじめる。
さっきの光の奴か、ヤバい。あれが直撃したら多分ミンチになる……俺は思考をフル回転させてなんとかこの場を切り抜けられないかを考える。そもそも、なんで攻撃されるのか理由がわからない。
「ちょ、ちょっと待ってくれ……」
梢は詠唱を中断し、?という疑問符が出ているような表情を浮かべ、こちらを見る。
「降参して捕まってくれるの?」
「降参してもいいが、その前になんで俺は攻撃されてるのか、教えてくれないか?君とは戦いたくないし、理由も分からずに攻撃されるのは納得できないんだ。」
梢の顔は一瞬、何言ってるのこの人?というような表情になるが、その後、人差し指を手に当て少し考え込み、回答をしてくれる。
「んー、あなたが怪人さんで町の人を襲ったから?」
「待ってくれ。俺はさっき町に行ったばかりで町の人を襲ってないし、危害も加えていない!本当だ!だから、俺を攻撃する必要はなくないか?」
「えっ?うーん……」
何やら困った表情をする梢。直後、何処からともなく現れたぬいぐるみが梢の肩に乗り、女の声で喋り始める。
「嘘は駄目だよ、骨の怪人君。肩を殴られたという男性の証言もあるんだからね。」
あいつか……俺は殴ってないだろ。むしろ、俺の方が突き飛ばされてダメージがあったくらいだぞ……
「おい、ぬいぐるみ、恐らくその証言は誇張されてる……こちらの言い分も聞いてくれ。互いに状況を話せばそいつの言ってることが誇張されてるってわかるはずだ!」
ぬいぐるみはやれやれといった憎たらしい素ぶりをした後、梢に話しかける。
「タマキキャット、いつも言ってるだろ。怪人の話なんて聞いちゃダメだ。怪人の言ってることは事実確認ができない。それに同情心に訴えてくる危険な怪人もいる。確かに同情する値する背景を持ってる怪人もいる。だけど、怪人になった以上、それは全て言い訳に過ぎない。それに、同情を誘い油断したヒーローが何人も犠牲になってる。事実確認や名誉挽回は始末してからやってあげればいい。良い怪人は人前に出てこない怪人だけだよ。」
「う、うん、わかったよ。ピカリン……えっと、ごめんなさい、骨の怪人さん……」
謝ると梢は再度カチャリと杖を構え、目を閉じ、詠唱を始める。
溜息をつき、昨日で俺の一生分の幸福を使ったのかもしれないなと心の中で苦笑し覚悟を決めた。そして、俺は目を瞑った。
「精霊の加護よ。光の槍となりて……」
これで終わりだと、この場の誰もが思っていただろう。だから、梢の後ろからドカドカと大きな足音を立てながら高速で近づく存在に誰も気がつかなかった。
グッチャ……ザッシュ……
***
あぁぁぁぁぁぁ!!!!!ガチャン!ガチャン!と何かが落ちる音がする。
酷く大きな絶叫が辺りに響き渡る。絶叫は俺が発したものではなかった。目を開けると、カズノコ公園で出会った金髪の男がいた。古びたジャンパーを着て、片手には梢の肩に乗っていた動かないぬいぐるみを鷲掴みにして、もう一方の手には血の滴る大型のナイフを持っていた。金髪男は喜びで歪み下品な笑い顔で梢の方を見ている。梢は血が滲み出た肩を抑え涙目になり金髪男を見つめている。
「おい、あんた、何やってんだ?」
「あぁ?なんだぁ、関係ないやつは黙ってろ」
こちらも見ずにそう言い放つと、金髪男は持っていたぬいぐるみを投げ捨て、梢に近づき、ナイフを梢の腕に躊躇なく振り降ろす。
あぁぁぁぁぁぁ!!!!!先程聞こえた絶叫が再度辺りに響き渡る。梢の左腕が体から離れ、おびただしい量の血が梢の左腕から吹き出す。梢の周りには血溜まりができていた。
金髪男は梢に顔を近づけると耳元で何やら囁く。
梢の顔は青ざめていき絶望した表情に変わっていく、体は激しく震えてしまっている。
その直後、金色の靄が梢からでて、金髪男の周りに漂う。男は恍惚とした表情でその靄を取り込み、腹をパンパンと叩く。
「やっぱ、ヒーローは最高だ。特に魔法少女とは今日は運がある。色々楽しめるからな。 なぁ、もっとくれよ、お前の恐心」
先程までのファンシーな服装に身を包んでいた魔法少女の姿はなく、変身していた姿は解け、傷を抑えながら泣きじゃくる一人の少女が佇んでいた。絶望した顔で俺の方に視線を動かし、唇を動かす。
た す け て
その言葉に音は無かった。今日は俺の脳みそでは処理ができない事ばかりが起こった。正直、自分が何者なのか、どんな行動をすれば正しいのかわからない。
ただ、今ひとりの少女が助けを求めている。その子は俺に人としての日常をくれた大事な恩人だ。
だからこそ、俺のやりたい事をやろうと思った。なすべき事をなす為に今この時に全力を尽くそうと思う。
だから俺は怪人としてではなく、俺の憧れたヒーローのように、この金髪男を止めようと思う。
「辞めろっー!!!!!その子に手を出すなぁあああああ!!」
金髪男に向かい大きい声で叫ぶ。その声に反応して金髪男は梢から俺の方に振り向き、怒りの形相で睨みつける。
俺は先程、梢がやったように俺も大きな声で叫んだ。
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☆ 変 ☆ 身 ☆
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