決戦に向けて……
ここは、カズノコシティにある公園。
そこのあるベンチに勇二と歴が腰を掛けていた。
「今日は怪人がきませんね……」
「最近はどこからともなく沸いてたから久々だね。」
「あの、勇二さん相談があります……」
「何かあったの?」
「お母さんから『玉置さんから、連絡をしてほしい』って伝言を頼まれていると言われました…どうしたらいいでしょうか……」
「好きにすればいいよ。」
「そうですか……勇二さんのところに連絡は来てないのでしょうか……?」
「……来てる。でも、無視してる。」
「そうなんですか……?」
「ただ、僕は修羅の道を行くって決めたんだ。もう、皆と楽しくヒーローごっこなんかしてる暇はないよ。」
「それに……うん。今、梢には会いたくないんだ……なんか梢に会ったら決意が鈍っちゃいそうでさ。」
(駄目です! 私、あの時の躊躇なく怪人にとどめを刺して血に汚れた姿に胸がドキドキしましてしまったのですから!)
その歪んだ気持ちが口から出ることを抑え込み、歴はしっかりとした口調で答える。
「それなら、私も会いません!」
「歴がそこまで合わせる事無いのに。」
「いえ、私は勇二さ――勇二君。 と一緒に居たいってそう思ったんです!」
歴は勇二の手を握り、目を潤ませながら見つめる。
突然の行動に勇二はドキっと心音が高鳴った気がした。
「それは……」
少しだけ言い淀み、話題を変える。
「さぁ、歴、訓練をしよう。」
「はい!」
☆☆☆
舞台は移り、ここはネオ怪人協会の本部:
そこでは、一人の怪人の怒号が轟いていた!
「お前たち! GUYコツの行方は未だにつかめないのですか?」
「ライ雷オン様! 申し訳ありません。そうは言われても……カズノコシティで見つけて以降、手がかりもない状況でして……非常に申し訳ないのですが、難航しています。」
「ならば、こんなところで報告なんてしている場合ではないでしょう? 見つからないなんて報告はいらないんですよ。さっさと探しに行ってください!」
丁寧な言葉遣いとは裏腹に怒りが周囲にも伝わってきてしまっている。
「そうは言ってもですね……もう我々がカズノコシティに手を出せない状況なんですよ。現在、シラセ様の部隊と出くわすことがありまして……」
「シラセと?」
その名を聞き、ふぅ……とライ雷オンは一息つく。
「はい。我々の何人かがシラセ様の配下の者と出くわしておりまして、手を出すなら殺すとまで言われている状況です。」
「シラセの目的はなんですか?」
「カズノコシティを落とすそうです。」
「なるほど……」
「ライ雷オン様、正直、ネオ怪人協会はボロボロですよ。GUYコツなんて追いかけてる暇は我々にはないんです。」
少しだけ、ライ雷オンの語気が弱くなったため、部下たちは強く進言しだした。
「リンドウ様がやられてしまい、スラッシュ様やシラセ様が抜けてしまい、我々には大きな戦力が欠けてして、ボロボロな状態です……個人で強い怪人は、どんどん外に出て行ってしまっています……」
「お願いです! 一度、ネオ怪人協会を立て直しに尽力いただけないですか?」
一人を皮切りに、何人もの人間がライ雷オンに進言が始まる。
(確かにシラセが相手では、こいつらが何かをできる訳ではないか……)
「状況と皆の意見は分かりました。一度、ネオ怪人協会をしっかりとした組織として立て直しましょう。」
「「おおおおおお!!!!」」
狭い会議室の中に歓声が響く。
「少し頭を整理しますので、また明日以降に作っていきましょうね。」
ライ雷オンは会議室を出て自室に向かう。
その途中、少年と羽の生えた女性が立っていた。
「ライ雷オン、良いのかい?」
「フェーン君、良いとは?」
「そのまんまの意味だよ。このネオ怪人協会の目的は何? 君の作った組織なんだから君のやりたい事を命じれば良いのに。そう、シラセの爺を殺せってっさ。」
「そうしたいところですが、流石にシラセの相手は無理でしょう。それとも君がやってくれますか?」
「あーそれは面白いかもなぁ、なーんてね。あはは。冗談。僕は、僕の目的があってここに居るんだから。シラセの爺とやり合うのも面白そうだけどさ。ねぇ、ティティーどっちが良いと思う?」
フェーンはティティーと呼ばれる羽の生えた女性に質問をするも返答はない。
しかし、彼らの中ではこれが普通のやり取りなのだ。
「君がやらないならシラセは止められないでしょう。」
「ライ雷オンが戦えば良い「じゃんか。」
「そもそもシラセは私達には関係ないですから。人探しは人海戦術が基本ですからね。彼らの意見も分からないでもないのですよね。しっかりと働いてもらうため、今は組織作りからやろうって話です。フェーン君、君もしっかりと働いてもらいますよ。」
「えーっ。やだよー。」
フェーンは舌を突き出してあっかんべーをしながらライ雷オンに答える。
「でも、シラセの爺も面白そうなことするもんだね。」
「今まで鬱憤が溜まっていたのかもですね……個別に大きなことをやるのは禁止されてましたから。奴ほど、怪人らしい怪人も居ないですからね。」
「私は準備しますよ。君もあまり自由が過ぎないようにしてくださいね。」
「はい、はーい。」
☆☆☆
ここはヒーローの情報屋トシの職場。
連日の怪人騒ぎで、嫌というほど仕事が溜まり、職場にこもりっきりになっていた。
三徹した目元には大きな隈ができていた。
少しばかりの休憩が激しい電話音で邪魔をされる。
プルルルルル
電話が鳴り続ける。
鳴りやむ気配のない電話に嫌気がさして同僚の男に頼む。
「おい!新入りー、電話、出てくれんかー!」
「トシさん、俺、新入りじゃないですって冗談きついですわ。」
「はっ、怪人から逃げるような奴が新入りじゃなくて何だってんだよ。」
「ひでー、そんなの何週間前の話ですかって感じっすわ。」
文句を言いつつ男は電話を取る。
「はいはい。あー、鈴木さんっすね。お世話になってまーす。」
新入りの声が聞こえる。
電話の相手は鈴木。この街で長年ヒーローをやっている壮年の男性だ。
トシは自分の中にある辞書を引き、該当の人物を想像する。
彼の主な活動は、治安維持であり、我々のような情報屋やメディアが欲しがる情報を持っていることもない。また、ヒーローは守秘義務ばかりなので、向こうからも特段、連絡をしてくることもなかった。
(なんだい。鈴木さんって、近くにでた怪人を倒したとかか?)
「えっ? いやー、うちらも最近の怪人の大量発生でめっちゃ忙しいですわ。申し訳ねっすけど――。」
「いやでも、俺も――」
「いやいや、無茶苦茶っすわ。だから――」
「何度も言ってるように、今は取り込み中なんですって――」
どうも男の話だけじゃ会話の内容が見えてこない。
鈴木という男、自分の手柄を誇示するようなタイプでもなかったはずだ…
疑問に思ったトシは席を立ち上がり、電話をしている男の肩をちょいちょいっと叩き、話しかける。
「おぅ、新入り、変わるぜ。」
「あっ、トシさん。いいっすか?」
男からトシに電話を渡すと自席に戻っていた。
「あー、要件を伺わせてもらいますぜ。」
「実はですね――」
「なにーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
「トシさん、どうしました!?」
男が駆け寄ってくる。
そんな男に向けて、トシは物を投げる。
「おめぇ……新入り以下じゃねーか。」
「ええっ!」
突然、暴言を言われて、呆気にとられる男を放置して電話にでる。
「鈴木さん、正味、その話はどこまでマジなんですかい? 100体の怪人が強襲しにくるって嘘にしか聞こえませんって。」
「全部、本当です。嘘だったらそれはそれで良いと思ってます。」
「因みにシラセって白老のシラセで間違いなんですかい? あいつは大分前に死んだと噂されていたじゃないですか?」
「私もこの目で見た訳じゃないので、伝聞と言えば伝聞なんですけども。少なくても、梢ちゃんはシラセを知らない世代のはずなのに、その名をピンポイントで出せると思えないんですよ。」
「そりゃ、確かに。」
「ここにお電話差し上げたのは、隣街のヒーローにも救援をお願いしたいんですよ。我々ではツテが無さすぎました……如何せん、我らの街は優一君に依存し過ぎてました。」
「優坊は優秀でしたからね。分かりました。儂らできる限りのことはやらせてもらいます。」
「鈴木さん、情報ありがとうございます。ちなみに、街を捨てるという選択は?」
「最初はその予定でした……しかし、この街は怪人に渡してはならないと、ヒーロー協会から忠告されてしまいまして……なので、我々は迫りくる怪人と戦う予定です。」
「この情報はどこまで出して良いんですか?」
「情報の規制はされていませんので、全部出してもらっていいですよ。何かあったら、このロートルが責任取りますから……」
「ちょいっと戦略練りますわ。シラセが居るとわかったら人は集まらんでしょうし……」
「信じらないニュースだ……こりゃ、こうしちゃおれん。さっさとメディア各社に情報を送るしかあるめぇよ。」
トシは受話器を置きながらつぶやく。
その様子を見て男が近づき話を聞いてきた。
「トシさん、話しってなんだったんです?」
「おめぇ……当分、雑用な。」
「そんなぁ。なんですっか!?」




