緊急会議! 対策を練れ!
梢たちの通う学校の会議室。
ここに、老若男女、集まっていた。彼らはカズノコシティで活躍するヒーローたち。
彼らは私立カズノコ学園に定期的に集まり、情報交換をしていた。
しかし、今日はいつもの定例会ではなく、緊急で集められている。
そのためか、集まった人たちは少しばかりざわめき立っている。
「緊急集会って、突然開くのはやめてくれよー。最近、怪人の動きも活発だから、持ち場を空けたくないんだけどさー。」
近く席から聞こえる雑談を聞き流して梢は暗い顔をして下を向いていた。
おでこには大き目の絆創膏が張られている。
「こずこず、大丈夫? 私が代弁しようか?」
隣に座る薫が心配そうな顔をして声をかけてくる。
「かおるん、ありがとね。でも、大丈夫。あたしから話すよ。」
「フォローをするよ!」っとポンポンと腰を叩き勇気づけてくれる。
「しっかし、勇二と菊水の奴はまた休みかよ! かーっ! 緊急会議だって言うのによー。」
まぁまぁと薫が陽平をなだめる。
喧騒の中、梢が昨日の出来事を説明するために、頭をこねくりまわしていると、扉が開き、一人の男が部屋の中に入ってくる。
その人は、黒の紳士服を身に包んだ初老の男。ゼクス城で出会った執事だった。
「ヒーローの皆さま。本日は、お忙しい中、お越し頂きありがとうございます。我が主に変わり、御礼申し上げます。」
梢たちも予期せぬ来訪者に驚いてしまう。
そんな中、年配の一人が声を上げる。
鈴木だ。戦闘力はそこまででもないが、地域に根差した活動を行っている。
ただし温厚な人で経験も豊富のため皆の信頼は厚い。
「緊急会議なのに、ゼクスの旦那は来ないのかい?」
――ゼクス
その名を聞き、梢の神経がピクリと動いてしまう。
「はい。我が主は多忙のために来られません。代理で私が参りました。そのため、本日は私がこの緊急会議を報告します。」
「そうですか。」
年配者同士からなのかやり取りは淡々と終わり、執事が会議の開始を合図する。
「早速ですが、この緊急会議の議題は、昨日、D地区で起こった怪人襲撃において、怪人から襲撃予告をされたことについて皆さまに議論して頂きたい事があります。対応にあたった玉置梢さん。簡単に状況と経緯を説明してください。」
「はい……」
梢は立ち上がり口を開く。
「昨日、怪人さんが出たってアラートが鳴って、あたしは、かおるん、あぅ。薫ちゃんと一緒にD地区に向かいました。――えっと、そこで怪人さんが暴れていて――んっと、その怪人さんは倒して。そこでお爺さんが出てきて、お爺さんから新しい怪人さんが出てきて――暴れていた怪人さんが突然爆発しちゃって。あっ、そのお爺さんは何時の間にか消えてて…… じゃなくて、その怪人さんがカズノコシティを襲撃するために、百人の怪人さんを連れてくるって言ってて、一週間後に来るって言ってたの。」
聞いていた人が皆、口を大きく開けてぽかーんとしている。
「あうぅ……」、梢はちらっと薫をみた。
薫は笑いを堪えているのかプルプルと震えているのがわかる。
梢の視線に気づき、「こずこず。お疲れ様。」と梢の頭をポンポンと軽く叩く。
「むぅ……」
梢が座り、それと同時に薫が立ち上がる。
「えー、皆様。梢の言った内容を私のほうでまとめます。梢はD地区の怪人を倒した後、人間から変化した怪人に、1週間後、100体の怪人を連れて、カズノコシティを襲撃すると言われた訳です。そこで、1週間後の襲撃にどう備えるべきかという事をお話ししたいのです。」
説明を終えた薫が席についた後、ゼクスの執事が「それでは議論に入ってください。」というと、部屋の端に移動してしまった。
「嬢ちゃん。ちょいっといいかい。その怪人の話がデマカセって可能性は無いのかい?」
「あぅ。デマカセかどうかはあたしも分からないけど……あの怪人さんは嘘をついているようには見えなかったよ。」
「その怪人は有名なのか?」
「あたしは知らないけど、シラセって名乗る怪人さんだよ。」
「シラセ!? シラセってあの白老のシラセかい!!?」
「えっ、あっ、うん。そう。白老のシラセって名乗ってたよ。」
「白老のシラセ……あいつはまだ生きていたのか……そうか。……うん。申し訳ないけど、僕は降りさせてもらうよ。街の住民を引っ越しさせる方が現実的だよ。」
「だけど、あの怪人さんは止めないと危険だよ!」
「梢ちゃん、勝てない戦いに挑むのは勇気じゃなくて蛮勇だよ。」
「むぅ……!!! むぅ……!!!」
梢は何かを言いたげだが、それを言葉に出来ずに頬を膨らませる。
そんな梢を無視して、別の一人が鈴木に質問をする。
「あの、シラセって怪人はどのくらい強いんですか?」
「怪人にはC級、B級、A級と割り振られているよね。そして一般的にA級の怪人はとても脅威だと言われている。シラセはこのA級よりも強い。A級1000人よりも強いといわれている。もしも、A級怪人に勝てないようなら、シラセには傷一つ付けられないだろうね。」
「マジか……」
「そしてシラセが連れてくる怪人100人は全員A級クラスだと思った方が良いかもしれない。」
鈴木の言葉を聞き、皆は言葉を失ってしまう。
少し静寂が訪れたあと、一人がポツリと「僕はA級怪人に勝てる気はしないよ……」っという発言を皮切りに、方針が1週間でどのように、街の住民を逃がすのかという内容にシフトしていった。
3時間にも及ぶ会議が終わり、ヒーロー全員で街の住民を移動させるためのスケジュールを組みたてた。
各地域、各場所における安全を確保しつつ、ヒーロー皆で協力して行うまとめ上げる。
これから忙しくなるが、今はこの組みあがったスケジュールに満足し、お互いに称え合う。
ふと、梢は「この街がなくなってもいいのかな?」とつぶやく。
そんな消え入りそうな疑問に答えるように、部屋の端に居た執事が口を開いた。
「この街が怪人に乗っ取られることは我が主の意志に反します。この街は怪人に渡してはいけません。もしも、この街が怪人に乗っ取られることがあるならば、皆様には厳しいペナルティを与えなくてはいけません。」
今更そんな事言うなよと、皆が困惑と怒りを覚えたのは言うまでもない。




