変化する者/しない者
大きなショッピングモールがあり、人の賑わいがある街の中で、猫耳を生やした少女――魔法少女タマキキャットが大きく息を吸い込み、敵目掛けて呪文を唱える。
「精霊の加護よ。光の礫となりて敵を殲滅せよ。【ホーリーレイ】!!!」
放たれた光弾は敵を貫き、絶叫と共に敵は動きを止めた。
「タマキキャット、大丈夫か!?」
青いボディスーツを身にまとうヒーロー――音響戦隊ビートブルーが駆け寄ってきて声をかける。
ピースサインを見せてタマキキャットは応じる。
「うん。へーきだよ! ビートブルー。」
「すまねぇ。俺が下手打ったばっかりに、タマキキャットには負担、掛けっちまったな。」
「まぁまぁ、お互いをフォローし合うために、ビートブルー&タマキキャットチームと、SUMOライダー&エレキテルガールチームに分けたんだから、気にしないでよ!」
「練習してる技が当たってればな。……うん、今日は戻って技の調整をするぜ!」
「気合い入ってるね!ビートブルー、頑張って!!」
「おうよ!それにしても勇二の奴、最近来ないよなぁ……」
「そうだよねぇ。ゆーじ、大丈夫なのかなぁ?連絡しても返信遅いんだよね。」
タマキキャットは、話しながら慣れた手つきで倒れた怪人を拘束していく。
「それにしても、最近、怪人さんの事件が多いよね。」
「本当にな。それに変な事件も多いよな。この前のマンションの一室が爆発した事件なんか、怪人の死体が数体、出てきたくらいだからな。」
「なんなんだろうね?」
「変な事の前触れじゃなきゃいいんだけどな。」
「だよね。」
三日前に大規模な追悼式が行われてからというもの、今まで週に一回あるかどうかだった怪人の目撃報告や怪人の起こす事件が連日のように続き、後を絶たなかったのである。
そのため、ヒーロー研究会の放課後にやっていたパトロール活動ではなく、報告があった現場への派遣対応に当たっていた。
「こんなに連戦で戦うなんて思ってなかったけど、実戦で経験値を積んでいくと思えばいいのか。」
直接戦う機会が多くなったことで、ビートブルーは自分が少しづつだが強くなっていると感じていた。
「ただ、慢心はダメだよ!あたし達以外で何人かのヒーローがやられちゃっているって噂だし、あたし達も気を付けないといけないよ。」
「そうだな。」
「そうそう、どれだけ強くなったって怪人さんとの戦闘に絶対はないんだから……」
以前に一度、切り落とされた左腕をさすりながらタマキキャットは言う。
「おう!肝に銘じておくよ。しっかし、勇二の奴は何やってんだろうな……」
ビートブルーの小さなぼやきが消えていった。
☆☆☆
タマキキャットとビートブルーが戦闘をしていた別の場所でも、ヒーロー研究会の別のチームが怪人と戦っていた。
「今だっ!!【SUKUI-NAGE】!!!」
激しく組み手をして対峙していた白いライダ―スーツを着たヒーロー――SUMOライダーが対格差のある怪人を投げ飛ばす。
投げ飛ばされた衝撃と自重によるダメージを受けて、怪人は倒れる。
「よっしゃー!!!私の技が決まった!!!」
黒いゴーグルで顔を隠し黄色と黒のストライプのヒーロースーツを着た――エレキテルガールが大はしゃぎのSUMOライダーの横に近づき労う。
「SUMOライダー、お疲れ様です……」
「エレキテルガールも!補助、ありがとね。」
「いえいえ……SUMOライダー凄いです……もう、怪人にも怯まずに立ち向かえるなんて……私はまだ、怖くて……」
「先生の時みたいな悔しい思いはしたくないじゃん!ビートブルーとも訓練したもん。で、この後どうするのかな?」
「怪人をしっかり拘束して、ヒーロー協会に連絡ですね……」
「サンキュー!私、報告してくるね。」
「それでは、私の方で、拘束しますね……」
二人が話しを終えて、それぞれの行動に移したとき、「お前ら……、まだだ。まだだよ!!!!」
怪人は起き上がり、近づいてきていたエレキテルガールに襲い掛かる。
「きゃっ!!!」
怪人の振るいまわした拳が、エレキテルガールをかすった。
致命傷にはならなかったが、エレキテルガールは驚愕して態勢を崩して尻もちをついてしまう。
「死ねぃ!!!!小童のヒーロー!!!!」、怪人の怒号が響く!
「エレキテルガール!!!」、SUMOライダーが叫ぶのと同時に怪人の拳が咆哮と共に振り下ろされる。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
―――瞬きすら許さない一瞬の刹那。少年の声が響いた。
「お前がな!!!」
光輝く剣が怪人の首と胴体を両断し、その命を終わらせる。
噴水のように、大量の血しぶきがあたりに散らばる。
はぁ……はぁ……
緑色のライダースーツを着たヒーロー――ビットマンJrの息切れた呼吸音だけが反響する。
皆の思考が止まった中で、緑色のヒーロースーツが赤黒く染まった姿を見上げていたエレキテルガールだけは恍惚の感情に浸っていた。
怪人の体が重力に従って地面に落ちた時に大きな音が響いた。
静止した時のなかで、最初に動いたのSUMOライダーは、「ビットマンJr!あんた、最近何してたの!?学校も来ないで!」と声を上げる。
「ヒーロー活動だよ。最近、忙しいんだ。怪人どもが大量に沸いてるしね。」
ビットマンJrは、転がっていた怪人の首を掴み上げると、何度も何度も切りつけ始める。
「あ、あんた、何を!?」
「SUMOライダー、エレキテルガール、拘束じゃだめだよ。怪人は確実に息の根を止めないと。首を切り落としても油断しちゃだめだ。まだ、生きているかもしれない。怪人を倒したらこうやって確実に息の根を止めておく必要があるんだ。」
「なっ!?だからってそんな残虐な事!?」
「怪人は退治するのはヒーローしかいない。ちゃんと動かなくなるまでやらなきゃいけなんだ。」
ビットマンJrは既にズタボロになり原型の無くなった頭部を捨て去る。
ぐちゃっと真っ赤な液体をまき散らして、潰れてしまう。
驚愕しっぱなしのSUMOライダーは立ち去るビットマンJrを何も言えずに見送った。
ビットマンJrの姿が見えなくなった後、ふと思い出したように「エレキテルガール!!大丈夫!?」
「私は大丈夫です……! 勇二さんが守ってくれました……!」
薫は、普段の歴よりも語尾が強いような気がした。
真っ赤に汚れたスーツを気にすることなく、ゴーグルで隠れた目線の先で歴は、勇二が消えた先をずっと見つめていた。
「歴……?」
様子のおかしいエレキテルガールの様子にSUMOライダーはその変身前の名前をつぶやてしまう。
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