vs斬刀怪人 風魔のスラッシュ 二戦目 Part4
スラッシュの振りかざした刀はアレグラを腹を切り裂く。
斬られた痛みを感じることなく、どくどくと血があふれ出る。
既に身体は言う事を効かずにだらりと手が落ちた。
(あぁ、わたくしはここで終わりなのね……)
アレグラは悟り、目まぐるしく移ろう景色をぼんやりと眺めていた。
悪鬼の奇声を上げる大剣を振る上げる動きが、普段では考えられないくらい遅くなる。
まるで、時の流れが変わったかのように思えた。
しかし、∞に感じる時の中で思考速度だけは変わらず、頭の中で何重にもかさなりあう。
(死ぬ前には、オペラでも聞きながら紅茶を飲んで優雅に、なんて思っていたのですけれどね。)
どちらにせよ、先の短い命だ。
吸血鬼への憎悪を消せない悪鬼に殺されるのであれば、幾ばくか役にたったといえるのかもしれない。
アレグラは人と吸血鬼の二律背反の感情の中で戦っていた。
吸血の儀でゆきちゃんを吸血したときに感じた快感と喪失感。
自分は吸血鬼になったが、せめて生き方は人でいたいと望んだために、アレグラは人の血を飲まないと決めた。
だからこそ、先がない事も知っていたし、覚悟の上だった。
同時に吸血鬼である咎も背負っている。
この結末もある意味では人としての宿命だったのかもしれない。
――ごめんなさい。ゆきちゃん。わたくしに命をくれたのに……
――ごめんなさい。原、鉄男、美衣子、司。折角、わたくしに居場所をくれたのに……
ここに来るまでの道中で逃げようと思えば逃げられたかもしれない。
何か酷い事が起こっている事は察しがついていた。
吸血鬼の館で働くメイドや執事。また館に暮す家名持ちの吸血鬼達の躯。
体の一部が変形した怪人達の亡骸や夥しくまき散らさえた血痕。
悪鬼が来ているとは思っていなかったとは言え、何かの事件が起きていたことは明らかだった。
逃げようと思えば逃げられたアレグラがここに戻ってきたのは、祖父を仲間を心配する気持ちが先だったからだ。
皆はどうなったのだろう。
ふと、悪鬼の体は浅くない沢山の傷がついていることに気が付いた。それは、この瞬間までに起きた戦いの激しさを物語っているように感じた。
(……貴方は誰と戦っていたの?貴方は、どうしてここにきたの?)
自分に殺意を向ける鬼の姿に、感傷に浸りつつ目を瞑る。
吸血鬼の館は門外不出の閉ざされた秘境。
司達を招き入れたことが、この惨事を引き起こしてしまったのだろうか?
おじい様はどうなったのだろうか?司達は?
答えのない問答をぐるぐると考えていた。
ゆっくりと動きで、悪鬼が自分に向けた大剣を振り下ろした。それが見えたときに、考えることをやめた目を瞑った。
暗くなった視界の中、アレグラは最後の時を待っていた。
――
その瞬間はこなかった。
恐る恐る目を開いた。
目の前には、悪鬼を後ろ抑えるGUYコツが立っていた。
「つかさ……?」
身体は既にボロボロにやられている。
手は砕け、身体の白い骨は真っ赤に染まっている。
唯一、GUYコツと認識できたのは、目に光が宿る髑髏の顔があったからだった。
赤いマフラー。そして、赤く燃える胸。
「貴様はまだ動くか!?」
スラッシュの咆哮が木霊する。
リボーンの返答はない。ひゅーひゅーといった苦しそうな呼吸音しかない。
しかし、その折れていない目が回答になっているようだ。
「貴様……!?まだ折れぬか。」
スラッシュが大刀をリボーンにぶつける。
なすがままに切り裂かれ、大量の血が噴き出る。しかし、掴んだ手はまだ離さない。
力はほとんど入っていないが、それでも引き離せない。
スラッシュはどんなに攻撃を喰らおうと決して諦めないリボーンに対して吠える。
「あと少しだ後少しで我の悲願が叶う、その時に、貴様はなぜ、そこまでする必要があるのだ!」
苛立ちを露わにして大きく乱雑に刀を振るう。
その攻撃をかわす事なくその身で受けるが、限界を超えてなお起ち続けるリボーンに恐怖の念を抱いているようにも見える。
「はぁ、はぁ。」
リボーンの荒い息遣いを大きく深呼吸をして整える。
「スラッシュ!!! 仲間や世話になった吸血鬼達の思いを込めて、今の俺が込められる全力をお前にぶつける!!! お前の目的も行動も全てをこの一撃で吹き飛ばす!」
リボーンにドクンッドクンッと心臓が動かく感覚が戻った。
熱く胎動する感覚に懐かしさと人と矜持を思いだす。
リボーンの骨の肉体の隙間から見える。赤い光が鼓動をするかのように揺らめく。
【燃える魂の燃える拳!!】
炎を纏った拳が、スラッシュの腹部を貫き吹き飛ばす。
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