vs斬刀怪人 風魔のスラッシュ 二戦目 Part3
時は少しさかのぼり、リボーンとスラッシュの戦いの最中、心の祠の中でアレグラは椅子に座りながらゆったりとした時間を過ごしてた。
スルメンはまだ戻らなさそうだと思い、小さなあくびをしたとき、地面が大きく揺れた。
「なっ、なんですの?」
突然の事態に困惑しつつ、椅子から飛び跳ねてしまう。
地面の揺れはすぐに収まった。
スルメンの様子を見るが、全く変わらずに祈りを捧げたままである。
「うーん。原は、まだ戻ってきそうにないですわよね。」
つんつんと顔をつついても何の反応もない。
アレグラは少し逡巡する。
「何だか胸騒ぎがしますわ。様子を見てきましょうか。もしも原が目を覚ました時のために書置きを残しておきましょう。」
そして、アレグラは外の様子を伺うために心の祠を後にした。
☆☆☆
リボーンは、スラッシュが部下の怪人が変形した悍ましい装備を身に着けた後、防戦一方を強いられる事になった。
悍ましい太刀は、一振りされる度に、この世の物とは思えない悲鳴を上げながら夥しい量の瘴気をまき散らす。
悍ましい兜は、攻撃に反応して、その角が生きた触手のように蠢き反撃をする。
悍ましい足袋は、自動運転しているかのように、力を溜めながら脱兎の如く動き回り、攻撃のタイミングを計ることが出来なくなっている。
『風魔一閃』
極限まで威力を高められた技は、先ほどまでとは段違いの範囲と威力を持っており、回避をすることすら許さず、身体が吹き飛ばれてしまう。
「がはぁ……なんて強さだ。」
よろめきながら立ち上がる。その目にはスラッシュをとらえていたが、「まだ立つか。しぶとさだけは、一人前だな。」ぼそりとつぶやいた瞬間、視界からスラッシュが消えた。
背後に殺気を感じる。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
その悲鳴が聞こえた時には遅かった。リボーンが振り向いくと同時に、背後から胸をスラッシュの持つ太刀が貫ぬいていた。
「心の蔵を貫いたとして、我は手を抜かんぞ。貴様みたいなしぶとい奴は徹底しないとな。内部を木っ端みじんに砕いてやろう。『邪練風殺』!!!」
突き刺さった太刀から溢れる瘴気が、その形を細かい刃に姿を変え回転を始める。
刃が回転しながらリボーンの内部をぐちゃぐちゃにかき混ぜる。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
リボーンは絶叫する。
やがてその叫びは止み、力が抜けたように突き刺さった剣を中心にくの字に折れ曲がる。
スラッシュは太刀をリボーンから引き抜く。その身体は重力に逆らわずに倒れ込んでしまう。
「終わりだな。貴様は良くやったよ。」
目の前のズタボロにすり切れた残骸に向かいスラッシュは手向けの言葉を投げつけた。
残る一匹の吸血鬼を探すために、踵を返して、館の出入口を見る。
息を切らせたアレグラがちょうど、建物の中に入ってきたところだった。
「なに?なにが起きてますの?」
異常な事態を目の当たりにしながら、おろおろとしながら誘われるようにここに来た。
部屋の中には転がるバイロン候の頭、傷つき倒れるキャットシーとテッペキン。
そして、以前に相対した悪鬼が目の前に居たことでアレグラはその状況が理解できるが認めたくないというものだった。
頭には混乱ばかりが浮かんでいる。すぐにでも気を失ってしまいそうな現場だ。
しかし、アレグラに混乱をしたり、哀しみにくれたりしている暇はなかった。
悪鬼からは放たれた醜悪な殺気が、その身を恐怖で竦ませる。
「まさか、自ら出てくるとは、愚かな娘だ。」
手に握られた太刀から、悍ましい悲鳴が叫び続けている。
『風魔一閃』
吹き荒れた風が、アレグラの体にぶつかり、そのまま屋敷外に吹き飛ばされる。
数回転した後、大きな木にぶつかり倒れ込む。
「はぁ……はぁ……」
息も絶え絶えに倒れ込む体。霞む視界の先に悪鬼がいた。
「貴方は……わたくし……は……」
「せめても手向けだ、一刀にて両断してやろう。」
スラッシュが太刀を振り上げ、そのまま刀を振り下ろした。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
剣から零れる悲鳴が、吸血鬼の隠れ家全体に広がった。




