vs 烈剣怪人ザンザザン
吸血鬼の館を襲撃してきたのはスラッシュだった。
そう理解するのが早いから、目の前の惨劇を理解するのが早いか、GUYコツは叫んでいた。
胴から離れたバイロン候の首は重力に従い床に落ちる。
床に落ちたバイロン候の首がコロコロと転がりはじめる。
呼び声で俺に気がついたのかこちらを一暼すると、「貴様、何故ここに?」、しかし、スラッシュはその質問の回答を待っていない。
視線を横に動かすと、「ザンザザン、カブトン、ハヤブサン、テッペキン、お前らは彼奴の足を止めておけ。」と指示をする。
「「「はっ!スラッシュ様!」」」
その返事があり、スラッシュは屋敷の奥へと消えていった。
入れ替わるように四体の怪人が俺の目の前に立ち塞がる。
「テッペキン!無事だったのか!良かった。これはどういう事だ?キャットシーは?」
現れた怪人の中に、テッペキンの姿があった。話しかけたが返事はない。様子がおかしい。「どうし……」その言葉は別の怪人によって塞がれてしまった。
「これは、これは、かの有名なGUYコツ殿ではありませんか!私めはザンザザン。お見知り置きを……スラッシュ様の元にお仕えする斬刀魔人が一将。お目にかかれて光栄ですよ。」
笑みを浮かべているが細い目の奥は全く笑っていない。
まるで、殺人者の目。
俺は臆する事なく、ザンザザンを追求する。
「お前ら何をしてるんだ。」
「害虫駆除です。そう、血吸い蝙蝠という名の害虫をね。」
悪びれる様子もなく、そう言い放つ。
それを聞いて後ろにいる2体の怪人も笑い出す。
「お前ら……」
テッペキンと視線が合う。
テッペキンは笑いこそしなかったが、俺との視線を横に逸らした。
「テッペキン!お前、どうしたんだよ!!吸血鬼には世話になってたろうが!」
俺はテッペキンの胸ぐらを掴み問う。
少し間を置いてから「俺っちはスラッシュ様には逆らいません……」とだけ呟いた。
その表情が暗い。「何があったのか?」と聞くも返事はない。だが、表情を見るにどうやら、何かがあったのだろう。
テッペキンの胸ぐらから手を離して、「お前はスラッシュから解放されたんじゃないのかよ……」と愚痴のように零す。
「あっはっは。こいつは永遠にスラッシュ様の盾だよ。」
怪人の一人が代わりに応える。まるでそれが当たり前だと言わんばかりだ。
俺の拳を握りしめる。
「俺やテッペキンを狙ってきたんなら、吸血鬼は関係なかっただろう……」
すると、怪人達から更に大きな笑い声が返ってくる。
「貴方を?テッペキンを?何故?」
「お前たちはネオ怪人協会の追手なんだろ。」
「あー。そういえば、貴方は新しい怪人協会に狙われてるんですねぇ。大変でしょう。ただアレと我々は関係ないですよ。テッペキンも偶々ここに居ただけの事。」
「ならば何故、ここを襲った?」
「簡単な話ですよ。我々は目的のために、そう、吸血鬼を全滅させるという崇高な目的のためにこの薄汚い場所に来たのです。」
「お前たちは吸血鬼を何故そこまで憎むんだ。」
「それも簡単な話ですよ。吸血鬼が怪人にとって消えてなくなるべき敵だからです。」
「何もここまでする事なかっただろ……」
道中に残っていた死体を思い出し、辺りに転がる死体を指差しながら俺は言った。
「旧時代の遺物は完全に壊してこそ新しい時代の幕開けなのですよ。そう怪人世界のね。」
「吸血鬼は自身の在り方をずっと考えていたんだぞ?それを……」
「どうでも良いことです。消えるものの在り方など、我々には興味ありません。」
怪人の一人が前に歩き、床に転がったバイロン候の頭部を足で踏みつける。
「話すだけ無駄なようだな。」
「そうですね。早速、殺り合いましょうか?スラッシュ様にまぐれとは言え膝をつかせた貴方の実力、私が測ってあげましょう!」
ザンザザンは狂気に満ちた目で、身を震わせる。
そして、己の左手で自分の心臓を貫きながら、言葉を紡ぐ。
まるで神に祈る神父のように天を仰ぎ、恍惚した顔で異常な行動を取る。
「あぁ、いでよ!我が至宝!我が魂!邪剣ダインスレイブ!!」
ザンザザンは胸から腕を引き抜くと、一本の剣を取り出す。
黒光するその剣は禍々しさを孕んでおり、以前、スラッシュと対峙した時と同様な異質な空気感が辺りに漂い始めた。
剣を握りしめてザンザザンは不適に笑う。
「さぁ、本気できなさい。貴方に恨みはないですが、礎になりなさい!我らが悲願のために!!」
ザンザザンは剣を振るう!
スラッシュほどの速さはない。俺は攻撃を回避する。
しかし、奴は外した姿勢のまま動かない。かなり隙だらけだ。
反撃に転じようと思ったのも束の間、敵の持つ剣を纏う邪気が、風に靡かれて辺りに拡散する。その邪気による二重の攻撃。
避けたのは良いが俺の身体中には細かい裂傷が出来ていた。
「おいおい。回避したのにダメージがあるとかマジかよ。」
「ふふふ、私の剣は回避不能の剣。とくと味合うと良いですよ。」
「回避不能……ならば!」
ダメージ覚悟の特攻。俺はザンザザン、目掛けて走り出した。
「読めてます!『邪蓮桜乱』」
身体を捻り回転し、撒き散らされた黒い邪気が俺の行く手を遮る壁になる。
「うわっ!」
突然止まることが出来ずに、突如現れた黒い壁に腕を突っ込んでしまう。
黒い渦に吸い込まれた腕からガリガリと音が聞こえる。至る所から刃が当たり、まるでミキサーのように粉々に砕かれるような感覚だ。更に奥に引っ張られるように身体全体が粉々になりかねない。
俺は痛みに耐えながら、歯を食いしばり、腕を引き抜く。
「あ〝あ〝あ〝!!」
強烈な痛みが襲ってくる。
耐えきれずに腕を押さえてその場に倒れ込んでしまう。
敵は俺の身体が離れるや否や、回転をやめてこちらを一暼しながら、「もう終わりですか?こんなものですかね。」と挑発をしてくる。
「はっ。まだ俺はやられちゃいないだろ。もう勝った気でいるのか。その油断こそが俺の付け入る隙なんだよ。」
「まだ、そんな余裕がありますか。成る程しぶとい。」
ザンザザンは剣を構え直して、俺の方に踏み込んでくる。
そのまま、勢い良く剣を振るう。
ガキッ!ボロボロになった方の腕で剣を受け止める。
しかし、受け止めた後に剣から放たれる邪気がおれの身体全体に降り注ぐ。
邪気は小さな刀に姿を変えて俺の身体中の至る所を切り裂き始める。
その痛みを耐えつつ、俺は敵のいる場所から視線を外さなかった。邪気によってあたりが暗くなる前にいた場所。
さっきと同じならば、邪気を放つために、奴はそこにいる。
ならばこそ、痛みに耐えて一撃を放つ!
渾身の『骨パンチ』!
すると、拳が何かに当たる感触。
「ぶっ飛びやがれぇぇえ!!!」
俺の叫びと直後に壁にぶつかる音!
邪気が晴れていき、視界が明るくなる。
「おいおい、やられるんなよなぁ!!!」
「カウンタータイプの奴がカウンターでやられてどうすんのさ。」
怪人2人は、吹き飛ばされたザンザザンの心配よりも、やられた事を小馬鹿にするような態度をとっている。
「次はお前らか?まとめてかかってこい!」
睨み付けるように俺は挑発をする。
「いや、次の相手は我だ!」
後ろから、スラッシュの声がした。
「なんだ。部下に任せたくせにもう戻ってきたのか?」
「用事は済んだ。貴様がザンザザンと遊んでいるうちにな。あと貴様には聞くことがあったのだ。」
「聞くこと?」
「あの吸血鬼の小娘は何処に行った?」




