強襲
―――目を開くと、祠があった。
どうやら戻ってきたようだ。
と思った瞬間、視界がぶれる。
「司ったら、崩れ落ちるように倒れるなんて。大丈夫ですの?」
背後からエコーがかかったアレグラの聞こえる。
「ああ、大丈夫だ。」
「戻ってくるの早かったですわね。気分はどう?」
ぐわん、ぐわんと脳が回る感覚がするし中々消えない。少し旨のあたりも熱くなっているようだ。
「あんまり良くはないな。」
具体的には言わずに軽く応える。
左右を見渡すと未だ黙祷をしたまま佇んでいるスルメンが見える。
「そうですの。少し安静にしてれば時期良くなりますわ。」
「ああ。そうだな。スルメンはまだなのか?」
「ええ、原はまだ戻ってきてませんわ。」
「そっか。」
「司は随分と早く戻って来たわね。わたくしなんて、丸一日はかかりましたのよ。」
アレグラに司とそう呼ばれて、初めて自分を呼んでいるのだと感じる。
今までは意識したことも無かったが、名前に呼ばれるのは久しぶりだと感じていた。
そんな感慨に耽っていると、アレグラから「どうしたの?」と聞かれたので、少し気恥ずかしさを感じ話題を変えた。
「そういえば、俺たちがここに来てから、どのくらい経ったんだ?」
洞窟の中にいるため時間感覚がない。長いような一瞬だったような、不思議な感覚だった。
「既に夜の帳は降りてる位かしら。わたくしも少しだけ眠らせてもらっていたわ。」
「もうそんなに経ったのか。」
予想以上に長い時間かかっていたんだと思うと、急に疲れがどっと押し寄せてきた。
大きな欠伸が出てしまう。
夜になったと言われて、眠気が強く襲ってくるのを感じた。
「わたくしは原が戻ってくるまで待ってるつもりですが、司はどうします?司は一度戻ったらいかがかしら?ふかふかのベッドで寝た方が良いですわ。」
俺はアレグラの提案に甘える事にした。
立ち上がり帰ろうと、後ろを振り向いた。
アレグラと視線が合う。
「なぉ、アレグラ。俺はどんなふうに見えてる?」
「司は司ですわ。骨の怪人。それがどうかしましたの?」
首を傾げながらアレグラは答える。
「いや、なんでもない。……なぁ、俺はこれで強くなるのか?」
「司が何を見たのか、わたくしにはわからないですし、強くなったかは判りかねますわ。ただ、司の問題は解決したと思いますわ。ちぐはぐな心が解消されるような感じになったと思いますわ。」
ちぐはぐな心か。
俺が力を出せなかったのは、GUYコツである事と小宮司がバラバラだったからなのか。
だから、自己認識をする事によって解決されたという事か?
そう理解した所で、眠気は更に強くなっていく。
「アレグラ、俺は先に戻らせてもらうよ。すごい眠い。」
「えぇ、今日はゆっくり休んだ方が良いですわ。一人で帰れます?」
「多分、大丈夫だ。スルメンの事宜しくな。」
「えぇ、お任せを!」
挨拶をすませるとアレグラの後ろにある洞窟の出口から外に向かう。
☆☆☆
外に出ると、あたりはすっかり暗くなっていた。
「本当にもう夜か。」
道中を歩きながら、木々の間から時おり見える満点の星空がとてもきれいだった。
夜空を見上げて、自然につぶやきが溢れてしまう。
「夜道を一人歩くってのは、ずいぶん久々な気がするな。ちょっと嫌な事を思い出すな……さっさと戻ろう。」
洞窟から出発とすんなりと屋敷の迄の道中を進むことができた。
案内の時に森の中をぐるぐると回っていたこともあり、屋敷までの道を覚えていたようだ。
「これは、アレグラの方向音痴にも感謝だな。屋敷の方向が分かるからな。これが怪我の功名って奴か。このお屋敷はあっちの方向……」
昼にスルメンと訓練を行った開けた場所に着いた。
「ふぅ……もう少しだな。」
既に視界には屋敷が見える。っが、
――様子がおかしい。
屋敷の方から黒い煙が昇っている?
それにこんなに夜遅くなのに、キンッ、キンッと金属の同士がぶつかる音がする。
「なんだ?この音?あと、この匂いは……」
鉄の匂いと何かが燃える匂いがほんのり漂ってきているような気がする。
嫌な予感がした。俺は少し急ぎ足で戻る事にした。
☆☆☆
屋敷に近づく度に金属のぶつかる音は大きくなり、鉄の匂い――いや、これはやはり血の匂いと、肉の焼けた匂いがきつくなる。
「はぁ。はぁ。」
息も途切れ途切れに、屋敷の入口に戻ってきた。
屋敷の入口に辿り着いた俺を待っていたのは……何かの戦いの後だった。
そこには数十の磔があり、火あぶりをされた既に燃え尽きた炭だけが残されている光景だった。
しかし、炭が人型に残っていることが悍ましいことがあった事を物語っていた。
「なっ!なんだこれ?」
あまりの光景ににびっくりをして叫んでしまう。
あたりを見渡すと、磔の他に数体の怪人が血の池に倒れているのも見える。
「怪人?なんでここに?まさかっ!?俺を追って……」
凄惨な光景を目のあたりに疲れや眠気が吹っ飛んでいく。
怪人が来ている事を悟った俺はあたりを見回しながら少しづつ進む。
屋敷の入口だった場所についた。入口は壊されており、不審者の侵入を拒む壁がない。そこから広間の様子が見えた。
俺の目に映ったのは膝をついたバイロン候の首に目掛けて大太刀が振るわれるその瞬間だった。
俺がその光景に気付いたのが遅かった。
ちょうど太刀は振り下ろされバイロン候の首と胴が分かれる瞬間を見てしまう。
「バイロン候!!!」
俺の叫びはバイロン候には届かず空を切るだけだった。
しかし、俺の声は注意を引いたのだろう。
大太刀を振るった奴と目が合う。俺はこいつを知っている……俺は叫んだ。
「スラアアアアッシュ!!!」




