はじめてのしごと
集合住宅街の中を生徒の苗字を頼りに家の表札を確認しながら彷徨う。
玉置、玉置と、おっとここか。
ピンポーン!
生徒の家のチャイムを鳴らす。まともな人と話すのが久々という事もあり、かなり緊張している。
インターホン越しに女性の声が聞こえる。
「どちら様ですか?」
「あっ、ご依頼頂いていたカテキョーカイの小宮と言います。本日からお子さんの家庭教師の担当することになりました。」
「カテキョーカイの先生さんですか。いつもお世話になってます。来ていただきありがとうこざいました。今玄関を開けますので少々お待ちください。」
「あっ、わかりました。」
数分後、玄関がガチャリと開く。髪の毛を後ろに纏めている少し小太りした小柄の女性が顔を出す。
「新しい先生さんですか?どうぞお入りください。」
「では、失礼します。」
***
居間に通され四人がけのテーブル席に案内される。
こちらのテーブルにお掛けくださいと言い、その女性は奥の部屋へ移動する。キッチンらしき部屋が見える。
しばらくすると女性はお菓子や急須を乗せたお盆を持って奥の部屋から戻ってくる。
「粗茶ですが、どうぞ。」
「ありがとうございます。ところでお子さんはどんな子なんですか?」
「えぇっと……その凄く言いにくいのですが、あまり勉強もせずに遊び呆けている子なんですよ。 未だに……」
ガチャっと居間のドアが開き「ただいまー!」と声と共に少女が突然部屋に入ってくる。と、同時に俺と目が合い誰?というような困惑した顔になる。表情豊かな子だと思った。
「梢!今日は新しい先生さんが来るから寄り道せずに帰って来いって言ってたでしょ!」
「新しい家庭教師? あたし聞いてないんだけど……ママの勘違いじゃない?」
「ちゃんと朝に言いました。」
母娘でなにやら言い合いが始まった。なんだか自分の親とは全く違うなと微笑ましく見ていたら、母があらやだというようなように照れた顔をこちらに向ける。
「色々とご迷惑をおかけするかもしれませんが、あの子の勉強を見てやってください。お願いします。」
***
一悶着あったが少女の部屋に案内される。部屋の中は何やらファンシーなアイテムで溢れかえっている。
少女の名前は玉置梢どうやら色々と問題児であるらしい。
長い髪の毛を左右で纏めているファンシーな部屋も相まって凄く子供っぽい。
「先生、お名前なんていうの?」
「小宮だよ。」
「んー、じゃ……宮ちゃんせんせーね! どうどう? 可愛い?」
「かわ……? 呼び方は自由にしてくれていいよ。」
「りょうかい! 宮ちゃんせんせー、よろしくね!」
***
雑談は程々に切り上げ、梢の学力を確認するための簡単なテストをやってもらっている。うんうん唸りながらテストに向かっている。だが、あまり手は進んでいないようだ。小学生でやるような問題ばかりのはずだが、大丈夫かなと様子を伺っていると梢から声をかけてくる。
「宮ちゃんせんせー、これ難しいよ〜。キブ~」
「わかった。テストはそこまで採点するか。回答用紙をこっちな渡してくれな。」
「こんな難しい問題ばかりだから誰も解けないよ。あっ、わざと難しい問題出したんでしょ。 うん、あたしこれは習ってないと思うな。」
うんうんと頷きなら自分なりに納得しているようだ。
「梢は勘が鋭いな。 」
「でしょーやっぱ「まぁ、この問題の範囲は小学生でやってる内容だけどな。」
梢はぷくーっと頬が膨らませる。表情豊かな子供らしさに少しの面白さを感じてしまう。
「今は出来なくても、これから出来るようになれば良いさ。」
「うん……よろしくね。宮ちゃんせんせー!」
そんな感じで梢との関係は上々のスタートをきれたと思う。
***
さてと一息つき、最後にお茶を頂いた後、玄関まで見送りに来てくれたブンブンと大きく手を振る梢と小さくお辞儀をする母親に軽く会釈をしながら、玉置家を後にする。
チャーラーチャーラーラー
二人の姿が見てなくなったタイミングでメールの着信音がなる。携帯電話でメールを見ると、只野博士からの[招集]カズノコ公園前という件名のメールが届いている。
○
件名:[招集]カズノコ公園前
宛先:
本文:
このメールは関係者にBCCで送信しておる。
新人怪人各位
お前ら、カズノコ公園前に集合じゃ!
今から怪人の初仕事をやらせてやるぞい。
もしも来れない場合は、ワシに報告しろ!!
サボりは厳禁じゃ!連絡なく来ない奴は怪人クビーじゃ!!
この成果次第では幹部候補もあり得るからの!
詳細は集合後に話すぞい。
集合場所:カズノコ公園らしき場所の地図が載っている。
緊急連絡先:xxx-xxxx-xxxx
メールを見終わると携帯電話をしまう。やれやれ、めんどくさいなと思いつつ移動の準備を始めた。




