加速英雄アクセルvs爆走怪人 凍怒のリンドウ
少しグロい描写があります……
ご注意下さい。
俺達の目の前に現れた赤いヒーロー。
「おぉ……ヒーローだ……」
突然現れた赤いヒーローを見て、俺の口から感嘆の呟きが出てしまう。
このヒーローは俺が知っているヒーローのイメージそのものだった。
弱者のピンチに突然現れて、敵にも恐れず立ち向かう。
ヒーローの登場に心が躍る気持ちだった。
しかし悲し哉、怪人の性。同時に察することができた。
(ヒーローが居ると少しだけ寒気がするな……)
更に、このヒーローの登場で周りの空気感が少し変わった気がする。
――ヒーローが来たぞ。
――ヒーローが来てくれたから大丈夫。
そんな声が聞こえてくるようだ。
ヒーローの存在、たった一人でここまで変わるのか。と俺は驚きが隠せなかった。
(ヒーローが一人居るだけでここまで空気って変わるのか……キャットシーを吹き飛ばされっちまうし……)
そうだ! 吹き飛ばされたキャットシーは!?
「おい! キャットシー、大丈夫か!!!」
キャットシーからは反応がない。気を失ってしまってるようだ。
赤いヒーローは俺のキャットシーを呼ぶ声に反応して此方を一瞥した。
俺とヒーローの目が合った時に、ゾクリっと背筋が震えてしまう。
(ヒーローのプレッシャー……成る程、怪人が騒ぐ訳だ。これは恐ろしいな。)
しかし、そのヒーローはそれ以上俺への関心が持つこと無かった。
それは、スルメンの声で戦いが始まったからである。
「……貴様……っ!よくもキャットシーを!」
スルメンが触手を伸ばす。それは早い動きで赤いヒーローの腹を貫く。
あたった!
俺がそう思ったのも束の間、赤いヒーローの姿が煙のように消えていく。
攻撃を空振りしたスルメンは突然消えたヒーローに狼狽しているように見える。
「……どこにいった?」
スルメンは赤いヒーローを視覚に捉えられていないようだ。ひっきりなしにあたりを見渡している。
俺からはヒーローの動きが見えていた。恐るべき速さで赤い影がスルメンに近づいている。
「スルメン、下だ!!」
俺の声を聞きスルメンが視線を下に動かすとスルメンの顔には驚愕の表情を浮ぶ。
赤いヒーローはスルメンに攻撃しようと拳を強く握りしめていた。
「……んなっ……!?」
驚嘆の声を上げるのと同時に赤いヒーローはスルメンの顎にアッパーを決めて、宙に浮せてしまう。そして、流れるような動きでかかと落としのコンボでスルメンを地面にたたき伏せてしまう。
「こいつ……さっきまでの雑魚どもとは違うな。アレグラ嬢ちゃん、気ぃつけよう。」
「え、えぇ……」
テッペキンとアレグラは赤いヒーローから目を離さずに見つめている。しかし、相対する時間はわずかだった。ヒーローの姿が 音を置き去りにして消えてしまった。
「ッッッ!? 鉄男、後ろよ!」
アレグラの声を聞きテッペキンは後ろを振り向く。テッペキンの視界に赤いヒーローの姿が映る。
「バッ、バリー」
テッペキンは壁を作ろうとしていたのだろう。
だが遅すぎた。
一瞬で間合いを詰められてしまう。
「遅い!! それに、あいつらは雑魚じゃない。まだ成長期なだけだ!!!」
素早い乱撃。
テッペキンの肉の壁をめり込ませる程の威力で何度も何度も拳を叩き込む。
「テッペキン!!」
テッペキンがそのまま地面に倒れこむ。と同時にヒーローの姿がまた消える。
「おいおい……なんだよ、ありゃ?ヒーローって強すぎだろ……」
目の前で起こっている事態を理解できず、俺の口からはただただボヤきが出てくるだけだった。
「君で最後だ!」
赤いヒーローはアレグラの背後を位置を取ると、容赦なく手刀をアレグラの背中から突き刺す。アレグラの胸から飛び出したヒーローの手が、この戦いの決着かと思った。
「アレグラ!!!」
――その時、アレグラの身体は赤い霧とともに霧散する。
そして、俺の背後から囁くような細いアレグラの声が聞こえる。
「司、ロープを切るわ……」
「アレグラか? 良かった……お前、無事だったのか?」
アレグラは俺を縛るロープを鋭利な刃物できりさく。
「えぇ。ただ……わたくし、今日はもうダメだわ……力が残ってないわ……司、皆を宜しくね……」
俺を縛っていたロープが落ちると背後からアレグラの気配が消える。
「アレグラ? 逃げたなら、それで良い。よし! やってやるぜ。」
(っと粋がるのは良いがあんな奴を相手にどう戦えと?)
「おっ、おい! 俺が相っ!!!」
ヒーローに対して挑発をしようと指差しした瞬間、俺の視界が真っ白に染まり、背中に大きな衝撃が加わる。俺は吹き飛ばされたようだ。
「……がはっ!!!」
俺が立ち上がった場所に赤いヒーローが立っていた。
(やばい……全く勝ち目がないんじゃないのか?)
痛みで朦朧する意識の中で、景色をぼんやりと眺めていた。
此方を見定め迫り来ようとするヒーローの足が突然止まり、俺ではなく自分の後方に目を向ける。
ヒーロー勝利の歓迎ムードが一転、辺り全体の温度が下がった。
(なんだ? 何が起こった?)
☆☆☆☆☆
☆☆☆
☆
「あ〝あ〝!? この状況なンだ? なに腑抜けてんだ、骨ぇ!? テメェは自分の仕事すら碌にこなせネェのかァ?」
聞き覚えのある俺を恫喝する低い声が聞こえる?
「リン……ド……ウ?」
突然現れた来訪者に先ほど迄、俺たちを追い詰めていた赤いヒーローは戸惑いを隠せないようだ。マスクで顔は見えないが、体は小刻みに震えており、焦りの感情が生まれているようにみえる。
「……そんな……凍怒のリンドウがなんでここに……?」
ヒーローは震える拳を握りしめて胸に手を当てる。
覚悟を決めたように前を見据えて、超速の速さでリンドウの元に肉薄した。
そして、おお振りのハイキック。
ドンッ!!!
音と衝撃が激しく振動し、辺り一帯の埃を舞い上げて辺り灰色の空気が覆う。
リンドウ周辺の煙幕から赤い影が飛び出し膝をつき足を抑える。
「あ〝? ンだ、テメェは?」
背筋の凍るような声が辺り一帯あたりを響き渡る。
「まだヒーローが居やがったのか? めんどくせェ……」
煙の中から蒼暗い色が鈍く光り始める。
煙が薄くなるときに光る掌を赤いヒーローの向ける歪んだ笑みを浮かべるリンドウの姿が現れる。
あたりは更に凍えるような寒さになり、雪が降り始める。
更に空気すらも凍り始めてピシピシと空間が割れる音を鳴らせながら、霙のような雪の礫が降り注ぐ。
氷柱を至る所に立ち始める。
足元から凍りつき、生物の動きを完全に封じてしまう。
「こういう事だよ!!! 『絶対零怒ノ剣』!!!」
リンドウの掌の蒼い光が更に強くなる。しばらくして光がおさまるとリンドウの手には氷でできた剣が握られていた。
禍々しい力。
スラッシュと対峙した時に感じたものと同じものをリンドウの持つ剣から感じる。
赤いヒーローは脚が凍りついてしまい動けないようだ。
剣を赤いヒーローに向かい投擲する。
剣は赤いヒーローの胸の中心に突き刺さった……
☆☆☆
(寒っ……!!)
さっきまで熱くてたまらなかったリゾート地では考えられないほど冷たい。霞む目には季節に相応しくない白い粒が降り注いでいる光景が見えた。
(これは雪?どうしてここに?)
寒さにも合点がいった。気温はマイナスになったんだろうか?
――でも、なんで?
そんな疑問を感じながら自分の意識とは全く関係なく閉じようとする瞼を無理やり開き目に光を取り入れる。
さっきは怪人たちに不意を突かれちゃったけど。
まだ戦わなきゃ……
(僕はリーダーなんだ……!)
でも4対1は流石にきついかな……
僕はよろめきながらも、立ち上がり目の前の光景を見た。
一寸先すら見えないほどの真っ暗な闇の中に猛吹雪。
そんな景色に赤い影が立っていたのが見えた。
赤い格好のヒーロー、アクセル! きっと優一だ! 僕はどれだけ気を失ってたんだ!?
「おーい、アクセルー!」
僕は声を上げて優一のヒーロー名を呼ぶ。
――しかしピクリとも動かない。いつもなら気楽な返事の一つや二つは返してくれる筈なのに?
赤い影に向かい、僕は歩いた。一歩。一歩。少しずつ前に。
やっと全体が見えた!
「アクセ……ッッッ! えっっっ??!!!」
――僕は絶句した。頭の理解が追いつかない。
ここまで近づいて始めてわかった……
酷い鉄錆によく似た匂い。
アクセルの足元は赤黒く変色したのっぺりとした液体と肉片が散らばっていた。
立ち尽くすアクセルの腹にはぽっかりと空いた穴。
そこから垂れる大量の血と赤い肉。本来なら何層もの肉壁に覆われて、見えちゃいけないものが見えてしまっている。
「えっ? えっ!? 嘘だ? 嘘だ……? ねぇ優一? 悪ふざけはやめてよ……!」
僕は呆然と立ち尽くしてしまう。
そして……
「何、呆けて立ってるんだ!!!」
さっき倒した白い骨の怪人が突然、僕の視界に映る。
こいつが優一を……?
目線だけは動く骨をみていたけど、僕は何も出来なかった。
そのままそいつに押し倒される。
体に力が入らない。何も出来ずにやられるままになってしまうのだろうか……?
全身が震える程の寒さが僕を襲う……体の芯から先までを凍らせる寒気……
優一の無残な姿と凍える程の寒気。
精神が限界に達して僕の脳は処理が追いつかずに暗闇に堕ちていく。
――叶う事のなら全て夢の中であってください……僕はそう願いながら闇に堕ちていった。
僕はそのまま気を失ってしまった。




