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屍怪人 GUYコツの受難  作者: 恐竜列島
イクラシティ決戦
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音響戦隊ビートレンジャー[ブルー] vs 鉄壁怪人テッペキン

 見えない壁がビートブルーの行く手を遮る。

 腰を落とし、勢いよく殴ってみるが、ビクともしない。


(こんな壁を勇二の奴は壊したのか)


 小さい出来事ではあるが、同年代の少年ヒーローとの力の違いにビートブルーは少し胸が痛む。


(才能って奴なのかな……俺は仲間を作ることすら上手くいっていないのに……)


 自分の方が早くヒーローになれたこともあり、最初は先輩としてビットマンjrに世話焼いていた。しかし、最近はビットマンjrは技まで習得してしまい、怪人を捕まえたりと大きな成果を出している。そんなビットマンjrと成果を全然出せていない自分にヒーローとしての素質に大きな差があると思い、彼はスランプに陥っていたのだった。

 見えない壁に手をつきうなだれる。


 ただ、先程ビットマンjrが壊した壁は即興で作られたもの。

 今張られている壁とはダイヤモンドと黒鉛くらいに強度が違っている事をビートブルーは知る由もない。


 うなだれるビートブルーの前に怪人が姿を出す。


「分断、成功。作戦通り。」


 自分の前に立つ厳つい顔をした自分の3倍は膨らんだ筋肉量を持つ男。遠目からでは分からなかったが、近くで見ると自分の9倍以上差の体積差はあろう体躯に怯みそうになる。


「お前は誰だ!?」


 虚勢を張り、ビートブルーは聞く。その問いかけにテッペキンは回答はなかった。


「相手に名前を聞くときは自分から名乗るべきじゃないか?見習いヒーロー君?」


「……俺は音響戦隊ビートレンジャー!ビートブルー!!!」


 戦隊ヒーローは、3人から5人の程度のチームで活動をするヒーロー達である。戦隊ヒーローの強みはチーム行動にある。様々な個性を持つヒーロー達が同一の目的でヒーロー活動に従事するため、個人よりも強力な力を出すことがある。


 テッペキンは過去に戦隊ヒーローと戦闘を交えた事があった。テッペキンを含むスラッシュ配下の上位4体の怪人達で一つの戦隊と戦った。その戦隊ヒーローは名も知られていなく、弱いだろうとタカをくくっていたが、その連携プレイの前になすすべもなく、逃げるように敗走してしまった。

 更にその後、スラッシュに殺されそうになるというトラウマにもなっている事があった。


「戦隊ヒーローだったのか!?他に仲間がいるのか!?」


 その経験からテッペキンはヒーローの中でも戦隊ヒーローは危険だと考えるのも無理はなかった。


 ……


「……音響戦隊は俺だけ…だ……一人戦隊……」


 目の前のヒーローは寂しげな声で言う。


「そうか……まぁ、気を落とすなよ。はっはっは。これから、これから。前向きに行こう!」


 安心したような顔を浮かべてテッペキンは笑いながらビートブルーを励ます。


(くっ……怪人にフォローされるなんて……)


「俺っちは鉄壁怪人テッペキン!」


 筋肉を見せけるように背中を向けると両手を上げてマッスルポーズをとる。それにより背筋が盛り上がる。


 うわぁ……

 ビートブルーは引いてしまっていた。


「しかし、君も運がないな。このA級怪人の俺っちが相手になるなんてな。」


「A級怪人!!?」


 ビートブルーは驚愕した。優一に無理やり叩き起こされて聞かされた今朝の話のことを思い出していた。


 ***


 城の中にある会議室の一室。とてつもなく広い。

 眠たい目を擦りながらも、俺と勇二は部屋の広さに圧倒される。


 俺たちを迎え入れるのは、仁王立ちして立つ優一と丁寧にお辞儀をするメイドさん達。メイドさん達の中にはミュエの姿があり、俺の視線に気づくとミュエが小さく手を振ってくれてた。俺も小さく手を振り返す。


 遅れて花村、菊水がぬいぐるみを抱きしめた玉置を連れて部屋の中に入ってきた。


 皆が揃った事を確認した。


「皆、遅いぞ!?起こしてから30分は経っているだろう!」


 いの一番に先生が発した言葉は俺たちに説教する文句だった。先生の話し方は何かに苛立ち棘を感じる言い方だった。昨日の疲れも残っていた事もあり、俺にも苛立つ気持ちがこみ上げてきた。

 周囲を見回すと皆も同様なのだろう。一人を除いて……


 花村なんかは苦虫を潰した顔をしている。起きたばかりでパジャマやジャージ姿でここに来ている余り機嫌の良いタイミングではない。自分たちを責めるような言い方が、正直、嫌味にしか聞こえなかった。


 先生の説教を気にもせずに玉置はぬいぐるみを抱きしめながらコクリコクリと頭を揺らし続けていた。


 そんな玉置を見て先生は呼ぶ。


「梢!」


「ふぁーい……」


 玉置は欠伸交じりに小さい返事をした。

 閉じそうな目を擦りながら、玉置は頑張って耐えているようだ。


 勿論、俺も眠い。花村や菊水も同様もだろう。

 ……あぁ、隣で玉置をチラチラ見ているむっつりスケベ以外は多分同じ気持ちだと思う。


 早く終わらないかなぁという空気がのっぺりと漂い始めていた。


 しかし、これから話す先生の言葉は俺たちの眠気を吹き飛ばすものだった。


「この中に報道速報を見たり聞いたりした奴はいるか?」


 ……突然の質問。誰も見てないに決まってる。今何時だと思ってるんだ?


「情報はすぐに見れるようにしとけよ。……っと説教するつもりじゃないだ……俺もまだまだ未熟だな。つい感情が先に出ちまう。皆、すまない。」


 先生は何やら自問自答しながら、画面に映像を映し始めた。


 画面に映された映像は俺たちの度肝を抜くものだった。

 何かの施設を遠方から固定録画機で撮影された様子が映る。のどかな風景。その直後、施設の至る所から爆発し、黒煙が至る所から立ち込め始める。瓦礫の山がその惨状をものがっていた。そして映像の中から救急や消防のサイレンが止まる事なくなり続けている。


 皆、驚愕したように目を見開いている。

 先程まで眠気に負けていた玉置すらも画面を食い入るように見ている。


「優一……これって……?」


 勇二が口を開く。


 ……正直、予想はできていた。


「近郊にある魚河岸市場の昨日の夕方頃の映像だ……」


 先生の回答はそれだけだったが、それは予想が当たっていた事の回答でもあった。


 夕方頃といえば、俺たちが遊びで街中を闊歩していた時だ。あの時にこんな事が!?


 あの時、遊ぶんじゃなくて、すぐに向かう事が出来れば!?

 そんな考えが脳裏をよぎり、罪悪感に駆られる。


 菊水も俺と同じ事を思っているのだろう。顔を真っ青にして震えて花村に抱きついている。


「これから俺はこの場所に行ってくる。これは、怪人の仕業だ……ヒーローが行かなきゃいけないんだよ。」


 先生も様子がいつもよりも苛立ちついてるように見えたのはこの事件の所為だったのか。

 俺はすんなり理解できた。そんな中、玉置がそんな疑問を口に出す。


「ゆーいち先生、なんでこの事件は怪人さんが起こしたって言えるの?」


「あー……いや、経験と勘って奴かな?それより、皆には今日一日はイクラシティの見回りをやってくれ。」


 先生は言葉に詰まり、回答をはぐらかしたように見えた。玉置も気のせいかもしれない。


「勇二、お前がリーダーだ。いいな。」


「えっ、僕?了解だけど……皆は良いの?」


 皆を見渡す勇二に頷きで返事を返す。


「良し!任せたぞ、勇二。皆も頼んだぞ。午前中は見回りをしててくれ。で、怪人を見つけたらすぐに報告すること。良いな。今は緊急事態だからな。すぐに動くぞ。準備次第玄関前に集合な!」


「「「「「はい!」」」」」


 先生はすぐに会議室を出て行った。そのあと、何かのエンジン音が鳴り響き、早朝とは思えないほど大きな音を震わせる。


「優一さんはバイクで市場の方に行くんだって。倉庫にあったバイクを引っ張りだしてきてずっと整備してるの。」


 ミュエがこちらに寄ってきて説明してくれる。


「さっきの映像ってさ。作り物とかって言事はないよな?」


「ここから撮った映像だから間違いと思うよ。それにね。実際昨日の夕方にどかーんって凄い音してたもの!凄かったんだよ!屋敷の中でも結構大騒ぎ!陽平くんも大変だね!」


 ミュエは無邪気に話す。先ほどの苛立ちもあり、俺は無邪気なミュエの様子に感情の昂りを抑えられず、少し黙ってしまう。そんな俺に気がついたミュエは俺の様子の気がついたのかこちらを伺ってくる。


「ん?」


「……気づいていたなら、なんで昨日に言ってくれなかったんだ?……昨日、教えて……」


 キョトンとした顔のミュエに当たるように乱暴な言葉をぶつけようとしたその時、横から花村の声が聞こえる。


「バカ陽平、メイドさんと話してる暇なんかないでしょ!さっさと準備しないといけないのに。緊急自体だってわかってるの?」


 花村に指摘されて、俺も我に返り、今、自分がしなくてはいけない事を優先するようにした。


「ミュエ、ごめん……」


 ミュエに謝罪して俺は準備に戻った。


 早朝に開かれた会議はものの10分にも満たなかったが、雰囲気の変わる一大事件だった。各々は準備を整えて、玄関に集まる。


 そこには既にバイクの整備を終えて準備をし終えた優一が待っていた。


「よし、みんな揃ったな。」


 優一はバイクに跨り、出発する準備をさ終えている。蒸したバイクから白い排気ガスか漂い見渡しと俺たちにアドバイスをくれる。


「お前たちはヒーロー見習いとはいえ一般人よりも強い!だから、一般人をなんとしても守れ。これは俺の予想だが、多分A級怪人にはいるだろう……その場合A級怪人に一人で立ち向かうな!チームの仲間で窮地を脱せよ!では俺昨日の現場に行ってくる。グッドラック!」


 先生はバイクのエンジンを吹かせると猛スピードで、飛び出していった。

 響いていたエンジン音がどんどん小さくなり、


「それじゃ、これからの話をしよう!」


 勇二が切り出した。


 ☆☆☆


 で、今に至る?


「A級怪人……」


 ビートブルーは驚きテッペキンに何度もみる。言われてみると迫力がある。仮面の下の顔は冷や汗でべちょべちょになってしまっている。


(しかし、この状況で俺が逃げる事は許されないだろ……)


 状況を考えると逃げることなど許されない。それにこいつを倒せれば……俺はヒーローとして自信を取り戻せるかもしれない。

 ビートブルーは気合いを入れ直し、声が枯れるほど大きな叫びを上げる。


「うおおおおおおお!!!!!!」


 体の捻り、脚力による加速、そしてありったけの精神力、全てを込めてテッペキンの体を殴る。


 バキィっ!!!


 殴った腕が大きなダメージを受けてしまう。テッペキンの鋼鉄の体には傷一つつかなかった。


「すまんね、ヒーロー。俺っちも本気だよ。」


 巨体がさらに巨体に。テッペキンから繰り出させたパンチは目の前に立つ青いヒーローを彼方に吹き飛ばしてしまう。

 大型のダンプカーに引かれてしまった衝撃だ。


 吹き飛ばされたヒーローは目には涙を浮かべて、満身創痍で真っ暗な闇の中に落ちていく。


 そう怪人のたったの一撃で勝負はついてしまったのだった。

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