ゼクス城にて
既に日は落ち始め、辺りを夕焼けが赤く照らす中、僕たちは今日泊まる場所に着いた。
「よし、着いたぞ。皆降りろ!」
優一の言葉で僕たちは談笑を辞めて、車から降りる。
目の前の大きなホテル、ホテル?ーー城って言った方が良いんじゃないか?に僕は言葉を失った。
「おっきぃ!!!なにこれー!!!お城!これ、お城だよ!!!」
「おっおおおおお、なにこれー、すごっ、すごっ!!!城なんて初めて見た!」
梢と薫は手を取りテンションを上げて、はしゃいでいる。
「すっげぇ……」
「ふわぁっ……」
陽平と歴は僕と同じく言葉を失っているようだ。
「おっ、お前ら、あっ、あんまり…はしゃぐなよ……」
優一も驚愕して吃ってしまっている。僕は優一の肩を叩き問う。
「宿は優一が予約したんじゃないの?」
「いや、俺もバタバタとしてて、宿が用意できなかった時に、ゼクスさんから『私の方で宿を用意しておくヨォ』って言われたから、お任せしてたんだ……まさか……まさかなぁ……」
そんな僕らの前にピシッと決まった黒の紳士服を身に包んだ初老の男が綺麗なメイドさんを数人連れて現れる。
「ようこそ、ゼクスキャッスルへ。我が主人であるゼクス様よりお伺いしております。ヒーローの皆様、長旅でお疲れでしょう。ゆっくりと寛いでいつてくださいませ。既にお部屋のご用意は整っております。」
礼儀正しく客人をもてなすように頭を綺麗に45°傾けて僕たちに接する。
「いやっ……これは寛げんだろ……」
ボソッと陽平が呟く。これには僕も全くの同意見だ……
執事のひとたちに案内され城の中に入ると、そこは異次元世界かと見誤るようなほど異質な世界だった。
まず、見たこともない絢爛豪華で煌びやかな装飾が施されたその内装は僕らの目を奪った。
次に学校の教科書で見たことのあるような絵画や彫刻が置かれていたが、それらは教科書で見た時と印象を変えているように思う。美術に趣のない僕ですら、その美術品の数々に見惚れる。
まるで僕らたちの方がこの世界にふさわしくないかのようなどこか居心地の悪さを感じつつ、目新しい景色にワクワクが止まらない。そんな不思議な気持ち。
「城内は自由にご見学を下さい。まずは客室までご案内致しますので……あちらで御座います。」
手で示した方には羽の生えた綺麗なメイドさんが6人立っており、僕たちにお辞儀をしている。
「彼女達の立っている扉の先に皆様の客室が御座います。ああ、このお屋敷にいる間の皆様のお世話は彼女達にさせますので何なりとお申し付け下さい。」
・・・
僕と陽平と優一と3人のメイドさんは学校の教室よりも広い部屋に入る。ここが僕たちの泊まるところらしい。例に漏れず、高そうな芸術品が至る所に置かれており、変に触ると壊れてしまうような緊張感が漂っている。
「すっ、すげぇ……」
一人一部屋用意されていたらしいのだが、優一が男女で別れるだけにしてくれと頼んだとの事。
僕は一人一部屋で良かったんだけどなぁ……
「なんか、合宿っていうより金持ちの道楽旅行って感じになってるよなぁ……」
優一はそうボヤく……
背中に生えた白い羽。そんなメイドさんが3人。
僕らが部屋の雰囲気に慣れた頃、メイドさんの一人がおずおずと話しかけてくる。
「あのぅ……改めて、ようこそゼクス城へ、榊優一様、榊勇二様、陽平様。本日より皆様のお世話の担当しますメイドのリュエと申します。もしも、お屋敷の中での生活にお困りの事がごありましたら、私達にお申し付け下さい。」
ぺこりとお辞儀をして、顔を上げる。そして他の2人の紹介をしてくれる。
「こちらの眼鏡をかけている者がテュエ、こちらのショートヘアーの者がミュエと申します。短い間になるかとは思いますが、皆様がしっかりとご休息が取れますよう私どもも精一杯尽くして参ります。何卒、宜しくお願いします。」
そういうと今度は3人でお辞儀する。
「そんなに、畏まらなくていいですよ。俺たちは客人ではないのですから。寧ろ、そう畏まられてしまうと私達も緊張してしまう。我々にリラックスしてというなら、是非皆さんも普段通りにして下さい。」
「そうもいきまーー」「わぁい!やったぁ!ありがとー、お兄さん大好きー!」
3人のメイドさんの中で一番小さいミュエさんはそう言うとお辞儀を辞めると、近くのソファーに座る。
「はぁ〜だるぅ〜」
そう言いながらソファーに寝そべるミュエさんに僕らは唖然としていた。
「ミ、ミュエ!お客様の前でしょ!?」
「でも、リュエねぇ。この人がリラックスして良いって……」優一を指差してながらミュエはそう反論する。
「こういうのは、社交辞令って言うの!リラックスして良いってのはそういう意味じゃなくて……もっとこう……」
「リュエ姉さん、ミュエを責めるよりやらないといけない事があるだろう……」二人の様子を静観していたテュエさんがあわあわと取り乱した所リュエさんにそう言う。
リュエさんは、はっとした顔をした後、少しあわあわとしてから、僕たちに深く頭を下げる。
「たっ、大変、大変申し訳御座いません……この娘はまだ新米でして……後で私から強く言って聞かせますので、無礼な態度をご容赦ください……」
優一はバツが悪そうに左の頬をかいている。陽平と僕は互いに見合う。タイミングがバッチリ合ってしまった。そうすると、陽平がぷっと吹き出すと笑いだす。僕も自然と笑いがこみ上げくる。
「「はっーはっはっはっは」」
ビクッとした後、青ざめた顔でこちらを見るリュエさんに僕は言う。
「笑っちゃってごめんなさい……。なんかここって自分たちは場違いな所だなぁとか思っていたんですけど、メイドさん達が僕らとあんまり変わらないんだなぁと思ったら安心しちゃって……」
それに同調するように陽平と優一も続く。
「そうそう、俺らは全然気にしてないし、というか堅苦しいより全然良いと思ってるくらいです。」
「こう生徒達も言ってるので、お気にならせずに。寧ろ、そうして欲しいです。いや、本当に。」
「寛大な御心に感謝いたします。そして、お客様が居心地の良い空間を作るようにするのもメイドの仕事ですよね……わかりました。お言葉に甘えてさせていただきますね。テュエもあまりかしこまらないように接して下さい。」
「ほらぁ、リュエねぇは頭固い……」お菓子を頬張りながら、そう言いかけたミュエの言葉を遮り、リュエはミュエに告げる。
「ミュエは向こうで、お・は・な・し、しましょうね?」
そう放つリュエは顔は笑顔だったが怒っているのだろう。
「ひぃ……」
お気楽なミュエさんに引っ張られてか、僕たちは少し緊張が解けてきたような気がした。
***
少し休憩を取った後、優一が僕らに提案をしてきた。
「勇二、陽平、どうだ?軽く身体でも動かさないか?車に乗ってて、身体も鈍ってきてるだろ?」
「おっす!先生よろしくです!!!」陽平は元気よくそう返す。
「了解!僕も身体を動かしたかったよ。今日こそ一本取ってるやる。」
「よし、決まりだな。リュエさん、話は変わるのですが、何処かに身体を動かせる場所は無いですか?」
「体を動かせる場所ですか?えっ、えっと、うーん、確認して……」
「はいはい!ミュエ、身体を動かせるところ知ってるよ!」
「おっ、ミュエっちナイス!玉置達は呼びますか?!」
「そうだなぁ。呼びに行くか?」
「「おおー!」」
「それじゃ、ミュエさん、我々と一緒にきた女の子達の部屋に寄ってから、その場所まで案内お願いしますね。」
「うん!」




