束の間の平穏
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ここは、カズノコ学園に備わっている森林エリアの中。ここは広い学園の中で自然が生み出した迷宮を形成していた。
謎の植物が自然の環境で育てられていることもあり、学生の間では危険な場所として認識されていた。
普通の学生は授業の一環で限定的に使われるだけであったが、実際はヒーローを治すための高度治療に使用する薬の材料を育てていたり、ヒーローの特訓場所として利用されている場所である。
そのため、傷薬や休憩スペースも併設されている。
怪人から身を隠し、梢は慣れた道を進むことができる。
この場所を一時の避難場所としたのは必然だった。
いつも訓練で使っていた場所にたどり着き一息つけるタイミングを取っていた。
避難してきた皆は疲れた表情をして緊張感はありつつも、どこか安らいでいるように見える。
それだけ休憩場のある場所は一息が付けるというものだろう。
束の間の平穏が訪れたことによって、ようやく思考がまとまりつつあった。
「リボーンさん、大丈夫かなぁ……」と、自然に梢は呟いた。
自分が不甲斐ないばかりに無理な戦いをさせてしまっているのではないかと。
今更になって、後悔の念がやってきた。
体が凍るほどぞっとする獣の咆哮から始まり、空を一面を覆う雷雲。飛び散る稲妻。大地を割るような激しい衝撃音の数々。
突然、激しい稲光が収まった途端に大地が大きく揺れた。
実際に見ることはなくとも、どれほどの戦いが繰り広げられているのか感じることができた。
しかし梢には祈ることしかできない。
昔の梢なら、皆を置いて直ぐにでもリボーンの元へ向かっていただろう。
だが、それをしようとすると足が竦んでしまうのだ。
それほどまでに梢の怪人に対する恐怖心は根深い。
「なんか静かになった?」
誰かがそう呟いた。
梢も思う。確かに地面が大きく揺れてから静かになった。
ここが戦場から離れている事を考慮しても、あまりにも静かだ。
それは戦いの終わりを意味しているのではないかと直感する。
ならば、GUYコツがやってきてくれるかもしれない。
そんな梢の希望はどこからか聞こえてきた男の声によってかき消されてしまう。
「ふむ。ここですか? 案内ご苦労。」
その声は梢が望む者の声ではない。
そして、想像を草木を掻き分けてできていた顔を見て、梢は絶望する。
その束の間の平穏は儚く砕け散っていく。




