☆幕間☆
あの後、病室で寝ていたら閉館時間だからと巡回していた警備員に叩き起こされ、追い出されてしまった。凹凹マンに別れを告げて施設を出発した。
のはいいが、すでに駅と施設を結ぶ公共交通機関は最終便が出てしまっていたため、施設から駅までの長距離を徒歩で帰る事になってしまった。いつもは光が溢れるマンションの周辺も日付を超えた為か灯りひとつ無い真っ暗な状態になっていた。マンションの一室の前に着くと、すっかりヘトヘトになっていた。
ふぅ、疲れた、すごく喉が乾いたな……
今日はもう寝れそうだ。
ガチャリと鍵を開け、部屋に入る。玄関には見た事のない靴が何足か並べられており、部屋からは電気の光が漏れ、笑い声が聞こえる。
どういう事だ?
リビングにつながるドアを開け、中の様子を伺う。
それに気がついた、4人が俺を迎え入れた。
「おかえりにゃー!」
「おつかれ様です!」
「おかえりなさいですわ!」
「……遅かったな。」
出迎えたのは昼頃に病院へ来てくれたキャットシー、テッペキン、アレグラ、スルメンの4人だった。どうやら、俺の部屋でパーティをしていたようだ。お菓子の袋や酒缶がいくつか散らばっており、盛り上がっているようだ。
「おっ、おぅぅ……お前たち、何でここにいるんだ?」
スルメンが答えてくれる。
「……第7支部のメンバーはここを使って良い事と言われたのでな……お前も合流すると聞いていたが、随分遅かった。遅くなるなら連絡くらい入れてくれ。」
スルメンの小言を遮り、キャットシーが隣来るようにと椅子をパンパンと叩く。
「GUYコツ、早く卓に着くにゃ!酒にゃ!酒を持ってこいにゃ!テッペキンはやく!」
すっかりできあがっているキャットシーがエプロンを付けたムキムキのマッチョマン、テッペキンを顎で使っている。なんとも異常な光景だ……
「へい!姉御、直ちに!!」
キャットシーの合図で素早く慣れた動作でテッペキンは椅子から立ち上がり、冷蔵庫から酒を取り出し席に戻るとキャットシーのグラスになみなみと酒を注ぐ。
俺は呆然と立ち尽くしていた。
「ささっ、GUYコツの旦那も。」
テッペキンは呆然と立ち尽くしている俺の手を引き、席に座らせるとグラスに酒を注いでくる。
黄金色の液体に真っ白な泡が蓋をして、ビールと泡が7:3の綺麗な黄金律に注がれ、喉の渇きを思い出させる。それを見てついつい、喉がゴクリと動く。
「「「「かんぱーい!!!」」」」
ゴクゴクゴク。
喉を通るビールの感触を楽しみつつ注がれたグラスを空にする。染み渡る……
「飲め飲めー」と、空になったグラスにキャットシーが更に酒を注ぎ込む。
しかしよく考えると、何が何やら分からぬうちに宴会に巻き込まれてしまった……頭を抱えて席に突っ伏してしまう。
「GUYコツ、どうしたの?体調悪いの?」
頭を抱える俺を心配そうに話しかけるアレグラ。
何やら手に持ったグラスに赤い液体が……血……?
謎の赤い液体を見ていると、「あらっ?これに興味あるかしら?」ふふっと妖艶な笑顔を見せつつ「これはトマトジュースですわ。ご安心下さいな。」と俺をからかうように答え、優雅にグラスに口をつける。
その言葉を聞き流しながら、追加の酒をぐいっと一口飲む。
「アレグラ、もう深夜だぞ。良い子は寝ないとダメだぞ?」
「あらっ?この時間はわたくしにとってはお昼、一番元気になる時間なのですわ。もうお眠なんて、GUYコツはお子様なのね。わたくし、子守唄を歌って差し上げましょうか?」
「言うじゃないか。」
「夜は吸血鬼の本性が出ちゃうのかしらね?」ふふっと子供のような無邪気で何処と無く小悪魔のように話す。
そんな小生意気なアレグラと話をしていると、台所の方でキャットシーの笑い声が響く。
「にゃはは、もっとやれやれー!!!」
テッペキンとスルメンが何やら真剣に料理を作っている。そんな二人の様子を見て、キャットシーが笑いこけている。
普通の宴会みたいな感じだと思った。散々だった新人歓迎会だったがこういうのも悪くないと感じた。
***
一段落した後、スルメンが俺に話をふる。
「……ほら、新リーダーここで挨拶でもどうだ?」
皆は俺に視線を集める。
「そうだな。……えっーと……皆、あんまり見ないでくれ……照れる。」
「あー……色々と先が思いやれる展開になってしまったが、これからもよろしく頼む。」
「GUYコツは心配症だにゃー。ほら、酒飲めにゃ!嫌にゃ時は酒!これが一番!」
そう言いつつ、まだ酒の残っているグラスになみなみと酒を追加する。
「おいおい!こんなに注いで……」
「あたいの酒が飲めにゃいだって〜〜」
「……キャットシー、悪酔いし過ぎだ。今日はお開きだな。」
スルメンの言葉にキャットシーはブーブー文句を言っている。
***
宴会も終わり、部屋の片付けは中途半端な状態になっている。いつのまにか眠ってしまっていたらしい。既に朝日が昇り、部屋の中には太陽の光が差し込んでいる。
散乱した部屋を見てため息が出てくる。
「はぁ〜……ここは俺の部屋だったと思うんだが?」
「……残念だったな。ここは、第7支部のメンバーの拠点だ。」
「マジか……」
ピリピリピリ……ショートメールが届く。
ライ雷オンからだった。こんな朝早くに何の用だ?
「GUYコツ君ですか?今日、会議があるので怪人協会まで来てください。」
短文でそれだけの要件が書かれている。
帰ってきて酒を飲み、すぐに昨日の場所に呼ばれる……
正直、疲れは全然抜けていない。
大きいため息が出てしまう。
俺はスルメンに片付けを託して部屋を出て怪人協会へ向かった。




