晴れて晴天
うぅん……
目を覚ますと綺麗なふかふかのベッドの上に寝ていた。
真っ白だ。清潔感があり、独特のアルコール臭から病室なのだと感じた。
ベッドの上で上体を起こすと、ジジイーー只野博士はおらず、こちらに気がついた少女が声を掛けてくる。
「GUYコツ、目が覚めたの!」
「おまえ、アレグラか?ここはどこだ?」
前に見たときのような扇情的な衣装ではなく、白い清楚なワンピースに身を包み、印象が何処と無く柔らかなった少女がベッドの横に置かれた椅子から話しかけてくる。
「はい。わたくし、アレグラです。あと、ここは医務室です。わたしの為に戦ってくれた後、気を失うように倒れたものだから……あぁ、わたくし、わたくし、心配で、心配で……」
口を手で押さえてながら声を震わせている。
「今、博士を呼んできますから!ちょっと待っててください!!」
そう言う時、アレグラは部屋を飛び出して、何処かに行ってしまった。
部屋の見渡すと、6つのベッドがあった。俺が起きたことに気がついたのかと隣のベッドで寝ていた誰かかが語りかけてくる。
「GUYコツさん、起きたんですね。ご気分はどうですか?」
被っていた布団から凹凹マンが顔を見せる。スラッシュの奴に思いっきり叩き切られてたが、無事だったようだ。とにかく良かったと思う。
「凹凹マンか。お前、スラッシュに思いっきり切られてたけど大丈夫なのか?」
「あー、見られてましたか……お恥ずかしい。自分、身体は結構頑丈なんでなんとか大丈夫でした。追撃があったらヤバかったカモですね。全治3日くらいです。」
いつもと同じような調子で受け答えをする凹凹マンに少し安堵する。
「自分、倒れたんでよくわからんのですけど、あの娘と何かあったんですか?雰囲気もなんか変わってるし、ずっとGUYコツさんの横でオロオロしてましたよ。」
「そうだったのか……あいつ雰囲気変わったな。」
雰囲気を察したのか「そうですねぇ。GUYコツさんへの接し方が優しくなった?あっ……これは、土下座した謝罪したから甲斐ありましたね!」そう茶化す凹凹マンだった。
「で、なんだったんだ?怪人の歓迎会ってあんなに物騒なのかよ。」
「歓迎会であんなことが起こったのは初めて聞きましたよ。自分もビビリました。……まぁ、吸血鬼とは色々と確執がありましたからねぇ……同盟を組むとか、そりゃ良い思いをしない奴もいるでしょうね。吸血鬼が人側になったので、そいつらを潰すために怪人になった奴もいるくらいですし。」
「なんか、複雑なんだな……」
「人も怪人も吸血鬼もあんま変わらんとは思いますよ。立ち位置が違うだけで、根本は同じだと思ってますよ。」
何やら凹凹マンも覚えがあるのか、悟ったように締める。
「そんなことよりも、これから自分らどうなんでしょうね……?幹部のスラッシュと対立するとか怪人協会に居れないかもですね。はぁ……せっかく怪人になれたのになぁ」
「そんなに危ないのか?」
「怪人協会はめちゃめちゃ縦社会なので、上に目をつけられたらヤバイですね……」
「すまん……」
「GUYコツさんが謝る事じゃないですよ。色んな事情が重なった事が原因なんですから……ヤバくなりそうなら、ライ雷オンさんに守ってもらいましょう!」
「それもそうだな。」
そんな事を凹凹マン言っているとアレグラがライ雷オンと医……只野博士を連れて戻ってきたようだ。
「先生!ライ雷オン!早く早く!」
そう外からアレグラの声が聞こえると複数人の足音が近づいてくるのが聞こえる。話をしていた名前も聞こえたものだから、GUYコツと凹凹マンの間に少しだけ緊張感が走る。
「噂をすればなんとやらって奴だな……」
「なんです、それ?GUYコツさんって時々変な言葉使いますよね?……」
俺と凹凹マン会話を遮るかのように6名の人物が部屋に入ってきた。
痩せこけた面に汚れた白衣を着た只野博士
ライオンマスクをつけたライ雷オン
フードを被りその下から包帯が見え隠れするキャットシー
白いワンピースのアレグラ
灰色のスーツをきた渋いおじさん風のスルメン
あと、筋骨隆々の大男……?誰?
「これは、これは、大所帯で……」
いつものように「フォッフォッフォッ」と笑いながら、只野博士が言う。
「目が覚めたようじゃのぅ、GUYコツ。君という奴は無茶をしおる。スラッシュに挑むとはのぅ。奴は強かったろぅ?」
「まぁ……な……」
「奴は怪人協会にいる5体のS級怪人の一人じゃわい。当然じゃな。」
「S級怪人ってのはなんだ?」
「怪人の脅威度を表す指標みたいなもんじゃ。A級からE級でランク付けされているのぅ。その上にいるのがS級という訳じゃ。因みにGUYコツ、お主のランクは既にA級じゃぞ?」
「えっ!?なんで?」
「まぁ、一般人に危害を加え、ヒーローータマキキャットを倒したんじゃからのぅ……」
タマキキャットの名前が出た時にピクッとキャットシーの耳が動いたような気がした。
「あと、体は治してやったぞい。ワシに感謝するんじゃな。」
やれやれと言った態度に若干の憤りを感じだが、博士はそのまま続ける。
「そうそう、君に良いニュースととっても良いニュースを持ってきてやったぞ。」
「良いニュース?」
「そうじゃ、どっちから聞きたいかのぅ?」
少し嫌な予感がした……
「良いニュースからで頼む」
「この吸血鬼の小娘が吸血鬼との縁を切り、怪人協会で引き取る事になった。」
アレグラを指差しながらそう博士は言う。
「はい、これから怪人として頑張るって決めたんですの!吸血怪人バンパイアーって怪人ネームも名前も貰ったんですのよ!」
「成る程……バンパーー」そう言いかけた時にアレグラは俺の唇に指を置き、言葉を遮る。
「貴方にはアレグラって呼んで欲しい……」
少女とは思えない色香に少し困惑してしまう。
「あっあぁ、わかった。アレグラ、これからも怪人同士仲良くやろうな。困ったことがあれば頼ってくれよ。」
「はい!」満面の笑みと共に、元気よく返事を返してくれた。
恐らくアレグラには、これから色々な試練は待ち受けるだろう。その一歩を踏み出した彼女の勇気に賞賛の気持ちでいっぱいになった。嫌な予感は外れたようだ。
良かった、良かった……?
「俺は今の知らせはとっても良いに当たると思うんだが、これより良い知らせがあるのか?博士の言うとっても良いニュースって何だよ?」
ふんっと鼻で息をして博士は言葉を続ける「お主はスラッシュを倒した。」少し大きめの声にビックリしつつ「お、おぅ…」と返事をする。まぁ、相打ちじゃがのぅと小声で聞こえたような気がするが博士は更に続ける
「これはお主とスラッシュが同程度の実力持ちという事じゃ。そこでじゃ、喜べGUYコツよ、主は6人目S級怪人として扱うことになったぞぃ。そして、お主は第7支部の支部長となる事が決まった。」
「んっ?……んっ?……それは……何のメリットが?」
「S級怪人と組織の長じゃ、これは名誉な事だぞい。」
「名誉だけ?あと、何をやる支部なんだ、それ?」
「それを決めるのはお主じゃろう?」
・・・えっ?つまり箱物は作ったから後は頑張れと?
「まぁ、強いヒーローどもに狙われることになるがな……」
「とにかく、お主は怪人協会の要人となった。ゆめゆめ、その事を忘れる事の無いようにな。」
隣のベッドにいるベッドの横にいるアレグラはキラキラした目でこちらを見ているが、正直全然嬉しくない。
「俺には無理だって……そんな色んなもの貰っても支部の纏め役とか……」
そんな様子を見てかライ雷オンが横から口を出す。
「あー、言いにくいんですが、GUYコツ君ならびに今年の新人怪人を受け入れたいという支部がなく……しょうがなく新しい支部を作ってます……なので、第7支部は博士と私を除くこの場にいる6名だけです……募集はしたのですが、新しい支部に新人怪人が長の組織に入りたがる怪人はいないですからね……残念ながら……」
・・・
しばらく沈黙が続いた後、キャットシーが声を上げる。
「ちょっと待つにゃー!そんにゃの初耳にゃ!重要な話があるから来て欲しいってこれのことかにゃ?これだと、あたいの怪人協会での悠々自適な暮らしはどうなるにゃ!しかもコイツと一緒なわけー?何でいるのかと思ったら……」
キャットシーは筋骨隆々の男を指差して怒りを露わにする。
「嫌だなぁ、そんなに嫌がらないで下さいよ!キャットシーのあ・ね・ご。」
あっ、キャットシーがものすごくイラッとしたのがわかったので仲裁も兼ねて会話にねじり込んだ。
「いや、お前誰だよ……」
「俺っちは鉄壁怪人テッペキンです。スラッシュの奴をぶっ倒すGUYコツのアニキの勇姿に心打たれたっす!だから移動してきました!よろしくです!!!」
声量の大きさに圧倒され、「お、おぅ」と小さく反応してしまった。キャットシーの睨みつけるような視線が痛い。
「残念ながらキャットシーさん、先にお伝えした通り、新人怪人ら新しい第7支部にしか受け入れできませんので、ここに入らないとなると怪人協会との取引は無くなりますが良いですか?」
ムスーとした顔で渋々、「なら、わかったにゃ……」と呟いた。
「因みにテッペキンからスラッシュの下に戻ると殺されるから助けて欲しいと相談を受けました。ですので第7支部に移る事を勧めました。テッペキンはA級怪人なので多分ここにいるメンバーの中では一番の実力者だと思います。GUYコツ君の支部が新人だけなのは心配でしたので、両者メリットがあると思いましたので私の方で処理を進めました。一回敵だったので快く了承頂けるかは心配でしたが、杞憂に終わって良かったです。」
そうライ雷オンが補足する。時折、テッペキンがマッスルポーズを決め、アピールをしていたので、視界に入るとちょっと邪魔だと思った。
キャットシーは憎らしげにこちらを見ているが無視をする事にした。ライ雷オンはこの視線の意味を考えて欲しい……
「……組織の事はなんでも良いがっ、」突如、スルメンが声を出す。
「……GUYコツが怪人の癖にヒーローになったって噂は本当なのか?」
その疑問にアレグラが反応する。
「本当ですわ!GUYコツはわたくしの為に戦ってくれーー」
アレグラがスルメンの疑問に応えると途中遮るように只野博士ご割り込む。
「すまんのぅ、お嬢ちゃん。此奴、GUYコツが怪人のヒーロー、それは実際起こった事じゃが、それは秘密にしといてくれないかのぅ?皆の胸の内に留めておいて欲しいんじゃ……色々と面倒になるからのぅ。基本的には怪人はヒーローになれん。GUYコツは怪人でヒーローになれる原因は調査中じゃわい。この事実は万物の理を壊す、あってはならん事ぞ。だから、秘密にしといてくれなのぅ。それこそヒーローどもはこれを知ったらGUYコツを消しに来るじゃろうて……」
「……納得は出来んが了解した。GUYコツが来てたら支部も無くなる。それは困る。」
GUYコツ、ヒーローになるはここぞという時だけにしとくんじゃな。主自身の身を守る為にも……のぅ?」
梢には俺が怪人である事を隠しておいて良かった。
「君はもう大丈夫そうじゃの。少し休んだら家に帰ると良いぞ。今後の事はライ雷オンに任せるでの。後は頼んだぞい。ライ雷オン。」
博士はそう言うと病室をそそくさと出て行った。
「まぁ、GUYコツ君、色々とこれから忙しくなると思いますので、今日はゆっくり休養ください。明日以降の予定は後で連絡しますので。皆も今日は解散です。」と、ライ雷オンは告げる。
ライ雷オンのその言葉で、惜しみつつも皆はぞろぞろと引き上げていき、病室には凹凹マンと俺だけが残った。
「なんか色々と情報が入ってきて混乱してます……新しい支部だの、GUYコツさんがヒーローだの……時折変な人だと思った事はありますがよりにもよってヒーローってなんなんですか?」
少し凹凹マン声色が寂しさを帯びているように感じた。
「すまん……実は俺もよくわからん……」
「まぁ、今日は休みましょうか。自分もちょっと整理したいです。取り敢えず、GUYコツさんとは同じ支部で活動できそうなんで、これからもよろしくです。」
「そうだな。よろしくな。」
そんな会話をして俺達は再び深い眠りについた。
ご覧いただき有難う御座います。楽しんで頂ければ幸いです!




