vs 百獣怪人 ライ雷オン part8
ライ雷オンがゆったりと通り過ぎる後、SUMOライダーの心中に浮かんだのは、助かったという安堵ではない。
――無視をされた。
その行為に対する屈辱の感情だ。
相手にダメージはなかったかも知れないが、自分の込められる最大限の力を発揮して、敵にぶつけていたのだ。
なのに、相手にされていなかったのだ。
力が入らず震える体を無理やり抑えつけ、立ち上がり、振り向きながら叫んだ。
「まっ、待ちなさいよ!!!」
唇を噛み震える事になったが叫ばずにはいれなかった。
自分の通う学校をめちゃくちゃにした元凶。
この閉塞とした状況を何とかしたいという思いは一層強い。
(他のヒーローが誰も来ないというなら自分が何とかするしかないじゃない
例え力不足でも――)
意を決して引き留めるSUMOライダーは、自分を見るライ雷オンの顔を見て心が折れそうになった。
その顔は決して敵に見せるものではない。
闘志、覇気、緊張、覚悟。
戦う時に必要になるそういった心構えが一切ない無気力な顔。
引き留められたことを面倒だと思っているのが明らかに感じ取れた。
「はぁ……お嬢さん。何ですか?」
その声もまるで子供を諭すような話し方だった。
「私はヒーローなのよ! あんたを倒すに決まってるでしょ!」
力の入らない体に無理やりに引き越して敵を見定めてSUMOライダーは構えた。
それでも敵は面倒そうな顔を浮かべているだけだ。
それは戦おうとするものに対する最大の侮辱行為に等しい。
(悔しい! ムカつく!!)
まるで相手にされていない相手の態度は怒りがこみあげてくる。
しかし、そういった個人の感情は今は相応しくないだろう。
ヒーローとしてできる事はここで敵を倒す事しかない。
SUMOライダーは自身の力不足を理解しながらも、ヒーローとして最後の矜持を胸に低重心の姿勢を取り、敵に飛び込んだ。
「やれやれ。仕方ない。また捕まるのも厄介ですからね。」
そう呟くと敵が一瞬で視界から消えた。
探す暇は必要ない。
「――遅い。」
敵の言葉が消えた時、地面から突き上げるようにライ雷オンの拳がSUMOライダーの腹を撃ち抜いた。
「ごほっ!!!」
たったの一撃。それだけで再び地面に腰を落としてしまう。
力の差は歴然だ。
腹に食らった一撃によってあばら骨が何本か折れてしまったかもしれない。
口から血が零れ、呼吸すらままならないのだ。
見下ろすように、睨まれている。
先ほどの蛮勇を後悔するほどの威圧感だ。
「ふっ…ふぅう……ふ……っっっ」
言葉は出てこない。腹に受けた一撃の所為もあるが、今はただただ恐怖が勝っている。
なぜか代わりに涙がこぼれてきた。
「また引き留められるのも面倒ですね。」
ライ雷オンがそう呟くと、ゆっくりと手が動きSUMOライダーの頭に乗せられようとした。
これから、何が起きるのか?
SUMOライダーにはそのまま頭が潰される光景が想像できてしまった。
「――――――――!!! んん!!! ん――――!!!!!」
喉奥で詰まり言葉にならない叫びによって嗚咽を漏らした。




