vs 百獣怪人 ライ雷オン part7
(握力限界……っっっ)
相手を掴み続けてる為に手はずっと限界を超えて力を込め続けている。
例えるならば、指の力だけで、自分の100kgは超えるであろう物体を支えているに等しい。
身体が成長途中の身ではこの負荷はあまりにも大きい。
自分と気持ちとは全く関係なく腕がプルプルと震えだす。
今自分が捕まえている目の前の怪人を離したらどうなるかは簡単に予測できる。
「辛いでしょう? 手を離したらどうですか?」
平然と声を掛けてきたその態度は心に来るものがある。
120%の力を込めているのに、まるで気にしないようだ。
「ほら、息も荒くなってきてる。こんな拘束時間稼ぎしかなりません。」
そんな挑発を受けてる。
感覚が消えていき、肉体と精神的の両方から、ダメージが重なっていく。
それでも――
「私がここであきらめる訳に行かないわ!」
ありたっけの力を込めて目の前の相手を掴む。
なんという事はない。SUMOライダーは根性論で気力を振るい立たせた。
「まぁ、いいでしょう。 いつまで続きますかね? 捕らえているだけでは私は倒せません。何か策でも用意しているんですかね。そんなものがあると思えませんが。」
先の見えないゴールだ。
このまま怪人止めておくにしても、このままでは留めておくだけで、何か明確な策がある訳ではなかった。
あるとしたら、何か起きる事だ。
しかし、SUMOライダーには一つの予感があった。
今も学園の中に不自然な雪が降り積もるという異常な事態が起きているのだ。
きっと学園の外でも同じような騒ぎが起きているだろう。
何か異変が起きれば、必ずヒーローが動きだすはずだ。
ここが怪人に襲撃されてから、かなりの時間が経過している。
ヒーローが来るのは必然。
「私はあんたを止めておく。そうすれば、他のヒーローがきっと助けに――」
「来ません。残念ですが、それは敵わない。」
「……なんでそんな断言ができる訳?」
「簡単な事です。今回の我々の襲撃は、ヒーロー側に内通者がいるという事です。それも、ヒーローに命じることができる権力者。貴女は知りませんでしたか? 残念ですが、貴女が期待しているようなヒーローがやってくる展開は訪れません。」
「そんな……? 嘘よ…… ヒーローがそんな事する訳ないじゃない。」
「嘘かどうかはこれから分かりますよ。えぇ、貴女がこの手を離さないとしてもいずれ力はなくなるでしょう。私はただその時を待つだけでいいのですから。」
急に告げられた信じがたい言葉に力が抜けていく。
嘘だと信じられない気持ちはあるが、事実、一切の助けが来ないこの状況に頭から完全否定ができない。
ずっとライ雷オンを掴まえておくとして、一体いつまでなのか。ゴールがとても遠くなった瞬間に体が重くなっていく。
少し気が緩んだ時に手が僅かに離れた。
勿論、その隙を見逃すほど、ライ雷オンは間抜けではない。
SUMOライダーの体を突き飛ばし、拘束を解いた。
「きゃっ!」
小さな悲鳴を上げて吹き飛ばされたSUMOライダーはその場にへたり込んでしまう。
一度気を抜いたため、もはや体に力が入らないようだ。立ちあがる事すらままならない状態だ。
ゆっくりとライ雷オンはSUMOライダーに近づいてくる。
(殺られる……)
しかし、そう覚悟したSUMOライダーの横を興味をなさげに通り過ぎていった。




