vs斬刀怪人 風魔のスラッシュ
ステージの周りで騒いでいた怪人達も、突然明るく照らされる壇上を呆然と見つめていた。突然の事態に誰もわかっていない、徐々に状況を確認しあいガヤガヤと話し声が聞こえ始める。
「何があった?」
「なんか『変身』って聞こえたような?」
「おいおい、ここにヒーローが来てるのか?やばくね?」
「おいらに、状況を説明してクレーーー!!!」
周囲の戸惑いを含むガヤガヤした音は徐々に大きくなっていく。
その中にキャットシーに対してマウンティングスタイルを取り、顔を何度も殴りつけていた一人の怪人テッペキンはこの事態に顔を真っ青にしていた。
この生意気な猫の怪人に挑発されて、ステージの壁を解いた事でこの事態が発生した事は簡単に予想できた。
ヒーローがいるなんて話が出てるが、そこは重要じゃない。それより『ステージの上で何かがあった。』この事実だけでテッペキンが恐怖するには十分だった。
「テメー、仲間がいやがったのか!?クソがっ」
ぐったりとした猫の怪人の胸ぐらを掴み上げ怒りをぶつける。何度も殴りすぎた所為か既に気を失っているため反応は何もない。何の反応も示さない怪人を放り投げ、テッペキンはステージを見る。
***
「変身だと……?」
スラッシュも周囲と同様に事態を飲み込めずに混乱していた。
怪人が変身などと叫んだところでヒーローの真似事ができるはずはない。
しかし、先程まで眼前で何やらやっていた人体骨格が変身と叫んだ後、確かにヒーローの気配のようなものを感じた。そして現に眼前の光からはヒーローと対峙した時に感じる気のようなものと同じものを感じる。
ふははははははは
不思議と笑いが溢れる。怪人にヒーローの真似事をさせて、ここで邪魔をするかヒーロー?
まぁ良い。あいつが本当にヒーローかどうかは一先ず置いておいて、今は我がなすべきことーー吸血鬼の小娘を殺す事を為そう。
「練度は十分か…」
力を溜めるには十分な時間だった。
先程までの力による斬撃だけでなく、我の『技』も込めた必殺の一撃。偽りのヒーローもろとも消し飛ばしてくれよう。
『風魔一閃』
鞘に収められた刀を引き抜く。スラッシュから放たれた居合の一撃。その一閃は会場すらも両断する程の勢いの斬撃がGUYコツに向けられる。
斬撃の衝撃で光は消え、その余波によって煙があたりに立ち込める。
煙で充満するステージの上、GUYコツは口上を述べる。
「アレグラが抱えていたモンは俺には計り知れない。でもなっ!周りに頼ることも出来ず、助けての一言さえ言えないなんて……あんまりじゃねーか?」
「そんなアレグラが勇気を出して一歩を踏み出したんだ。そんなアレグラの勇気に俺は答えてやりたい……そして、大人って奴は子供を利用するもんじゃなくて、守ってやるものだって事を示してやらねばならない!俺は強くそう思った!!」
「だからっ!!!俺はアレグラのためにーーこいつが抱えている色んなしがらみに打ち勝つ勇気を与えるために俺は今、ヒーローになろう!!!屍英雄リボーンに!!!」
煙が晴れると目の前には赤いマフラーを身にまとった骨の怪人が立っていた。
「あんたにも色んな事情があるんだろうが、戦争のための道具にアレグラは利用させてやるわけにはいかない!!!」
GUYコツーーリボーンはそう言い終わると拳を前に構えてファイティングポーズを取る。
「貴様、怪人なのにヒーローを名乗るか……ふはははははは」
スラッシュは上を向き顔を手で覆い笑いながら言葉を続ける。
「まぁ、良い……偽りとは言えヒーローに対しては我も礼節を持って応え、叩き潰そうぞ……」
「我は斬刀怪人 風魔のスラッシュ……S級怪人の力、偽りのヒーローに破れるかな?」
スラッシュは長い刀を構える。互いに睨み合いながら戦闘の準備が整う。
先手で動いたのはスラッシュだった。
長い刀を振り上げ、GUYコツに肉薄しながら振り下ろす。
GUYコツは刀を掌で受け止めるもスラッシュの余りの力に膝をつく。
ぐうっ……単純な筋力が全然違う……
「ほぅ……受け止めるか?口だけではないようだ。中偽りとは言えヒーローを自称するだけはある。これはどうかな?」
スラッシュがそう言うと、受け止めている刀から邪気が溢れる。その邪気は鋭い刃となり回転し始める。まるで電動ノコギリのようにリボーンの受け止めている掌を容赦なく切り刻む。
リボーンは激痛に顔を歪ませる。そんな顔にポタリっと赤い液体が掌から顔の上に垂れてくる。
これは……ヤバいな。刀を支える手が滑りそうだ。刀が滑り落ちる前になんとかしないと。
足と腰に力を入れ、力任せに横に飛ぶ。
ダンッ!!!
大きな音共にステージに大きな亀裂が入る。
「なんて力だよ……」
態勢を立て直すために拳を握ると掌から違和感と激痛が走る。
「ほう、まだ立つか?ヒーロー、だがな。終わりだよ、貴様。」
『邪練風殺』
スラッシュは刀を鞘に納め、技名を叫ぶ。
すると、リボーンの体内から邪気が刃に変わり内部から切り刻む。
ぐぁああぁああああああああぁあああああ!!!!!!!
絶叫を上げながら血飛沫を撒き散らし、その場に倒れこむ。
「身体の内から切り裂かれる、その感覚はどうだ?何人のも愚かなヒーローを死に追いやった技の味は?」
・・・
「返事なし。終わりか……偽りのヒーロー、呆気ない幕引きだったな。」
アレグラは涙目になりながらリボーンの元へと駆け寄り、
「GUYコツ、いえ、リボーン……ありがとうございました。でも、もう十分……わたくしの為にそんなにボロボロになる必要なんて無いの。」
・・・
「貴方の狙いはわたくしのはずです!」
リボーンとスラッシュの間に入り手を広げアレグラはスラッシュに懇願する。
「どうか、わたくしの命でその矛を収めて下さい……」
グニャグニャに歪む視界の中、リボーンを庇うアレグラの声が聞こえる。
・・・
馬鹿野郎が……おちおち気も失ってられねぇな……
「潔し。せめてもの手向けだ。一刀にて楽に逝かせてやろう。」
目を固く瞑り、覚悟を決めるアレグラめがけてスラッシュは長刀を力のかぎり振り下ろす。
ガキンッ!
刀はアレグラを両断する前にリボーンの両腕によって防がれる。
「アレグラ、俺はまだ負けてねぇぞ。」
「リボーン……貴方はもうボロボロじゃない……」
目を開き、目の前にボロボロ心配そうな顔でこちらを伺い戸惑った様子で、オロオロとしている。
「俺の事はそんなに心配すんな!それよりも俺が絶対に勝つと信じて、応援してくれ。俺は俺の力になる。」
「……わかった……負けないで!リボーン!!!」
「当然だ!」
再び、魂のロウソクに強いの炎が宿る感覚をリボーンは感じる。あの時ーー玉置梢を守る為に戦った時と同じように1つの技が脳裏をよぎる。
「諦めの悪い奴だ…潔く諦めるのも大事な事だぞ?」
スラッシュは最初に放った技を放つ為に刀を鞘に収める。
スラッシュの周りには恐ろしいまでの邪気が立ち込める。練度が足りないが、まぁ死に損ないを始末する為には十分だろう。
『風魔一閃』
諦める?今、俺が諦めたら、誰がこいつを守るんだ?
「ヒーローが守る事を諦めたら、誰が守るって言うんだあぁぁぁぁあああ!!!」
腕を前に突き出しあの時の技を言葉にする。
『正義の鉄槌!!!』
前と同じく、両腕の骨がバラバラに砕け散るも、スラッシュの出した技はリボーンの出した技の前に空に消え去った。巨大な鉄槌はスラッシュを容赦なく叩き潰さんと頭上から降ってくる。
ドンッ!!!!!
強い衝撃がステージ全体に広がる。
「なんという力……我の技をかき消すとは……んんんんんん……」
降りてきた槌を体全体で受け止めて踏ん張っている。これ程の大技、そう長くもつまい。スラッシュはリボーンを見やる。その瞬間、スラッシュは負けを悟った。
ボロボロになりながらも、こちらに向ける闘志はまだ消えていない。
スラッシュは数多のヒーローと戦う事で経験から知っていた。
ヒーローは窮地に落ちるほど強くなる事を。
ヒーローは決して自分の信念を曲げない事を。
ヒーローは他者の為に力を出せる事を。
そんな事ができた目の前に立つこの怪人は紛れもなくヒーローであろう。
「先の偽りのヒーローという言葉は取り消そう……貴様は立派なヒーローだよ。怪人なのにヒーローとは忌々しい奴だ……ぐはっ……」
ドンッ!!!
そう言うとスラッシュはその場に正義の鉄槌により、押し潰される。ステージに加えられた衝撃は会場、建屋、周辺地域の大地すらも揺らす。その余波は会場にいた多くの怪人たちが足元のバランスを崩し倒れる。
終わった……消えゆく意識の中、アレグラが再び俺に駆け寄ってくるのが見えた。
なっ?お前のトラウマは消さないけど、迫りくる怖いものから守る事は出来るんーー
バタンッ!
言葉も発せずその場に倒れ込む。




