GUYコツの敗北
先ほど何かが壊れる音とGUYコツの叫び声が聞こえてから大分時間が経った。
騒音が嘘みたいに静かになった後、ミェエは狭い牢の中でGUYコツが再び戻ってくることを祈っていた。
戦いの行方はどうなっただろう。
それは、ミュエには知る由もない。ミュエには祈る事しかできない。
自分のために傷ついた陽平も、ここに囚われている人も皆が助けてほしい。
それだけを胸にひたすらに思いを募らせる。
ふと、部屋の中に何者かがやってきた気配がした。
それは、他の人も同様だったのだろう。ソワソワとした空気があたりに張り詰めた。
GUYコツが戻ってきたのか。
ここからではその人物を見ることはできない。何やら部屋の探しているようだ。
「やぁ、僕の新しいおもちゃ達。アンザイの奴が何処に行ったか知らない?」
そこに居たのはGUYコツではない。体育館でゼクスと親しげに話していた少年だった。
「……」
意外な人物の登場に、言葉は出てこない。
「黙られちゃうとわからないんだけどなぁ。まっ、いいや。君らを逃したわけでも無さそうだし。」
ケラケラと無邪気に笑いながら近づいてくる。
しかし、笑い声とは裏腹に少年の目は笑っていない。
ミュエは得体の知れない何かを感じてビクリと体が震えてしまう。
「ちょっと、君、来てよ。」
少年はミュエの手を掴み引っ張る。
「アンザイが戻ってくるまで暇だから遊ぼうか。」
ミュエよりも小さいのに、力は異常なほど強い。
ミュエは抵抗することもできずに、引っ張られて牢の外へと連れていかれてしまった。
☆☆☆
「ふぅー。ここまでやれば、こいつももう何もできないんだな。」
アンザイはボロボロになったGUYコツを踏みつけながら、ため息を吐き出した。
虫の息となったGUYコツの瞳からは光が消えている。そう、GUYコツは敗北したのだ。
攻撃も効かず一方的な展開だった。
「さて、戻るかな。」
アンザイがGUYコツを担ぎ、元の部屋に戻る。部屋に戻るとそこにはキュエが居た。
ペコリと律儀に会釈をする。
フェーンの付き人の有翼人の娘。
「あの娘がいるってことは?」
見渡すとフェーンが机に腰掛けて、ゆったりと座っていた。
そして、アンザイに見張ることを命じた有翼人の娘――ミュエが床に倒れている。
意外な人物の来訪と自分が居ない間に起きたことが理解できず、アンザイは首を傾げながらフェーンに声をかける。
「あれ? フェーン様? なぜここに?」
「あっ、戻ってきた。タイミング悪いなぁ。って、君が持ってるそれって?」
「えぇ、こいつはGUYコツですな。ここに来たので捕まえまして―――」
「司君!!!」
それは、ミュエのGUYコツを名を叫ぶ。
一縷の希望が砕けた瞬間でもあった。
ミュエの頬に衝撃加わった。何かに殴られたジンジンとして痛みが遅れてやってくる。
「五月蠅いなぁ。誰が喋っていいと言った?」
声の主を見ると、冷たい視線を向けている。殺意を感じた。黙るしかない。
ミュエは頬を押さえながら唇を噛みと自然と涙がこぼれしまう。
「GUYコツは君に負けちゃったの?」
フェーンはアンザイに聞く。
「まぁ、そうですな。素直な奴なのか敵を疑うことを知らない馬鹿なのか。搦め手で楽勝でしたな。もしかしたらシラセ殿を倒したというのも嘘かもしれません。たまたま運が良かっただけかもしれませんな。」
「ふーん。そっか。困るんだよなぁ。」
フェーンは何かを考え込んだ。しかし、直ぐに、「まぁ、アンザイの搦め手は初見じゃ対応無理か。うん。計画はこのままでいいか。」と言い何かを納得したようだ。
「それで、GUYコツをどうするの?」
「ライ雷オン殿の所に連れて行こうと思っていますな。で、フェーン殿もよろしかったですかな?」
「それでいいよ。僕も一緒に行こう。」




