『契約破棄の代償』
「おいおい。お前の体どうなってんだ? おっさんになって成長期って訳か?」
巨体をゆったりと揺らし立ち上がったアンザイに対してGUYコツは煽る。
アンザイはGUYコツの言葉に特に反応は見せず、クラウチングポーズの体制を取る。
「何するつもりだよ……」
そのまま、GUYコツの方に突進をしてきた。
ただの突進。とはいえ、今のアンザイは自分の四倍程度の体積がある肉の塊だ。
まともに受ければ無事では済まない。
幸いなことにレットのような目に見えない速度という訳ではない。
とは言え、攻撃の範囲が広すぎる。
回避がぎりぎり間に合うかどうかというくらいだ。
GUYコツは体を捻り、回避の為に走りだした。
「くそっ!」
頭から滑り出しギリギリのところで攻撃を避けた後、アンザイの方を振り返る。しかし、当のアンザイはGUYコツの方に方向転換するでもなく、突進の勢いのまま直進し、壁にぶつかった。
アンザイが壁を突き破った後、隣の部屋まで一直線の通路ができていた。この部屋の壁は決して薄い壁でないことは破壊された後からもわかる。
「なんて破壊力だよ。」
GUYコツの額と握った拳に冷や汗がにじみだす。
アンザイは何かの技を使った訳でもない。それでもあの威力だ。
そもそも体格差があまりにも大きすぎる。このままでは、ただただあの巨体による圧殺をされてしまうだろう。
なんとしても反撃の機会を見つけるしかない。
GUYコツは構えながらアンザイの追撃を待っていた。しかし、隣の部屋に消えたアンザイが戻ってくることはない。
「追撃が来ないな?」
GUYコツはアンザイの開けた穴から顔をのぞかせて、隣の部屋の様子を伺う。
そこでアンザイは座りながら呆けていた。
大きかった体も元のサイズに戻っている。
「お前、何やってんだ……?」
GUYコツは思わずツッコんでしまう。
「あぁ、疲れかたからな。少し休んでいただけだな。」
戦いの最中だというのに全くやる気の感じられない発言だ。
あまりの理解のできない状況にGUYコツもやる気が削られていく気がしていた。
「お前変な奴だな。のんびり屋というか……マイペースというか。」
GUYコツも思わずつぶやくと、アンザイは答える。
「まぁ、俺は戦闘能力が高い訳ではなく、元々は裏方の専門なんだな。だから、俺にとっての戦闘は何も意味を持たないんだな。体を大きくするのも、単に脅しの道具。俺自体の戦闘力が向上するわけじゃない。」
「そんな自分の事をペラペラと話して大丈夫なのかよ。」
「なっはっは。良いんだな。こうやって時間を稼ぐのも俺の戦い。既に俺の攻撃は始まっているだな。」
何を言っているんだ?
それはGUYコツが抱いた最初の感想だ。
しかしアンザイの言うことにも一理ある。このまま変にアンザイのペースに持っていかれても困る。
意を決して、GUYコツはアンザイに勢いよく近づいた。
特にアンザイは反応していていない。
ならば!
GUYコツは油断しているアンザイの顔面に目がけて
『骨キック』
思いっきり蹴りを浴びせた。
GUYコツの攻撃によりアンザイの顔が吹き飛ぶ。
しかしーーー
「どう言う事だ?」
顔が弾け飛んだまま、黒い靄が顔のあった場所を覆っている。
靄の中から、アンザイの声が聞こえきた。
「GUYコツ、お前は認めたんだな? 俺との契約破棄は自分が原因だと。」
「それがどうかしたのか?」
アンザイはニヤリと笑う。
「俺は『契約破棄の代償』が発動してるときに、契約を勝手に破棄した者の攻撃は俺には一切届かないんだな。」




