後悔と懺悔
絶叫と悲鳴。
GUYコツは後ろを振り向いた。
そこには出口がある。ただし、そのドアには夥しい量の血がぺったりと塗られていた。
ドアの前に人質の一人がうずくまっているのが見える。
ただし、その子の倒れている場所は血の水溜まりができており、嫌な鉄鯖の匂いが充満している。
そして、その原因は明白だった。
右肩から先がなく、腕の断面は抉れて、今も血を噴き出し続けている。
「おい! 大丈夫か!?」
GUYコツは駆け寄り声をかける。しかし、呼び掛けには答える事はない。手を握ると、肌温はなく、ただただ冷たさだけを感じた。
一人の犠牲者。
GUYコツは胸の奥に湧き上がる感情を堪えながら、ゆっくりと死体の目を閉じ心の中で謝罪するしかできなかった。
「GUYコツ、ここは穏便に済ませようじゃないか?」
背後からアンザイの声が聞こえてきた。
罪悪感のかけらもない先ほどと変わらない口調だ。
顔を見るとニヤニヤとにやけ面を浮かべている。
「穏便に?」
GUYコツはアンザイを睨みながらゆっくりと立ち上がる。
背中にある陽平の重みが殴りかかりたい衝動を抑えてくれた。
冷静に考えるとこのまま戦っても人質を的にされて成すすべなく全滅もあり得た。
「ミュエ、陽平を頼んだ。」
背負っていた陽平をミュエに向かって放りなげる。
「わわっ! 危ない! ちょっと、司君!?」
ミュエは体で陽平をキャッチしながらGUYコツに叫んだ。
「悪いな。俺は少しやることがある。」
その言葉を放ったGUYコツの視線は怒気と共にアンザイに向けられている。
ミュエは、GUYコツから放たれる怒気でこれから起きるであろう戦闘の気配を察した。
ミュエは俯いた。今、ミュエの心には後悔と懺悔しかない。
この怪人の襲撃は、自分の所為なのだ。
先ほどアンザイに殺された子も、ここで人質となり震えている他の子も、さっきの体育館で犠牲になった人も、今自分が抱きしめている陽平も、事件に巻き込まれてこんな目にあっている。
本来、自分がここにいなければこの事件は起きていないものなのだ。
それは、ずんっとミュエの胸に重くのしかかる。
「……待って。ミュエがここに残れば……他の子は解放されるんだよ……ミュエを置いて他の子を陽平君を助けてあげて……」
ミュエの口から自然とそんな提案が出てきた。
「それは駄目だ。自己犠牲を口に出すのは十年は早い。」
しかし、GUYコツはぴしゃりと答える。
「違うの。この怪人達が来たのはミュエの所為なの! ミュエが居なかったらきっとこんなこと起きてなかったんだよ!」
「そうか。その話は後で聞かせてもらうよ。だが、怪人の悪行は絶対にミュエの所為じゃない。……そもそもの話をするなら俺が――いや、そういうのも後にしよう。まずは、アイツの奴をぶっ倒してからだ。」
「ミュエ、他の人達を連れて一旦牢の方に戻っててくれ。もしも、何かを後悔しているなら、今はここを乗り越えるために力を貸してほしい。」
ミュエはこくんっと首を縦に振ると、陽平と他の人質を連れて牢の方へ戻っていく。
それを見送ってからアンザイに向き直る。
「取引は中止だ。やはりお前は倒してから出ていくとするよ。」
GUYコツは握り占めたこぶしに力を込める。
「うぅん? 取引中止とな? 全く我儘な奴だ。俺はどっちでもいいけど。しかし、なぜ? 理由がわからないんだな?」
「俺は人質全員を解放を条件に出したからだ。」
「そう、俺は人質全員は解放してやると約束したんだな。でも有翼人は人質じゃない。そこはお前の勘違いなんだな。」
「そうだな。勘違いしていたよ。だから、お前との取引をやめて、お前をぶっ倒して連れていくことにしたって訳だ。」
アンザイは不気味ににやりと口角を歪めた。
「認めたな? お前は取引を舐めすぎなんだな。一方的な契約破棄は極刑よりも重いんだな。」
アンザイは立ち上がる。
しかし、GUYコツは驚愕した。先ほど相対した時も自分よりも大きなサイズだったが、今は優に四倍を超えるサイズとなった体になっているのだ。
「戦うならついでにお前の首をライ雷オンに持っていくとしよう。」




