救出成功?
アンザイは目の前の小さなGUYコツを見下ろして考える。
目の前に現れたGUYコツをどうするれば良いのか。どうするのが最も自分の益になるのかを。
今、自分に与えられた使命は有翼人を逃がさない事であり、GUYコツと争う事は無駄な労力に他ならない。
無論、この体格差だ、捻り潰す事は可能だろう。
しかし――
「ふぅーむ。」
自分の損益を計算し終えたアンザイがくたびれた息を吐き出した。
「なんだ?」
「めんどいんだな。」
そう呟いた後、アンザイから先ほどまでのギラギラとした雰囲気が一気に消えさった。
戦意喪失。GUYコツは突然の事態に、言葉を失い固まってしまうしかできなかった。
唖然としているGUYコツに向かいアンザイは話を続ける。
「わかった。お前の提案を飲んでやるんだな。人質なら解放してやる。だから無駄な争いはやめようじゃないか。」
それはGUYコツからすれば思ってもいない答えだった。
しかし、GUYコツにはなぜこんな発言をきているのかわからない。罠を疑い念を押して聞き返した。
「本当か?」
GUYコツは訝しげな顔でアンザイを睨む。
「あぁ、実を言うと無駄な戦いは俺も望んでいないんだな。お前と戦う事で得られるものが俺にはないんだな。」
確かに無駄な戦いを避けると言うなら、正しい選択肢だ。
理由としては納得できる。
「そうか。なら、俺も無理にお前と戦う気はない。人質が戻ってくるなら、それで俺の目的も達成している。」
無血で人質が救出できるとは思ってもいなかった。
話の通じない奴だと考えていただけに肩透かしを感じながら、GUYコツが捕まっている人の方に駆け寄った。
ミュエや陽平を含めて数人が牢の中で震えている。
GUYコツが近寄ってきたことで、ミュエは顔を明るくして牢の端にやってきた。
「司君! 来てくれたんだ!! ……あのね。陽平君が大変なの!」
「あぁ、聞いた。そして、お前たちが捕まったってこともな。まずは、ここを出て安全な場所に隠れよう。」
「安全な場所?」
「怪人達からはきっと見つからない場所だ。ちょっと離れていろ。今、扉を壊す。ミュエは他の人らに外に行くように言ってくれ。俺が説明しても聞いてくれないだろうから。」
ミュエは後ろを振り向くと、GUYコツは遠く離れた場所で震えている人たちの姿が見える。
どうやら、GUYコツを新しい化け物が来たのだと考えいるのだろう。
ミュエはこくんと頷いて、人質の方に向かって離れていく。
それを見届けてから、GUYコツは牢の柵を掴み力を籠める。
柵は捻じれ広がり、人が一人分通れるくらいの穴が開いた。
ミュエの協力もあったことで、特に騒ぎも起きずに数名の人質を連れていくことができた。
GUYコツは陽平を抱きかかえると、その後ろを人質が付いていく。
特にアンザイからは邪魔は入らない。
本当に戦意をなくしているのか。ただただ、暇を弄んでいるようだ。
この部屋に入ってきた扉の前に立ち開いた。
「今はこの先に敵はいない。君らには化け物に見えるかもしれないが、俺と同じように君らを助けるために、味方だ。そいつは安全な場所に送ってくれるだろう。だから安心してくれ。」
後ろをついてくる人質達に声をかけて、この部屋を出ようとしたときに、後ろからアンザイの声が聞こえてくる。
「GUYコツ、そこの有翼人は置いていくんだな。」
GUYコツが振り向くと、アンザイはミュエを指差していた。
「どういう事だ。人質は解放してもらうといっただろう。」
「そいつは人質じゃないんだな。そいつはフェーン殿の新しいおもちゃなんだな。既に所有者が決まっているものを渡すのは約束していないんだな。」
「おもちゃ……」
ミェエはしょんぼりしながらアンザイのセリフを呟いた。
酷い物言いを隠すようにGUYコツはアンザイに一歩近づく。
「この子はミュエって言うんだ。おもちゃでも誰かの所有物でもない。」
「そんな事どうでもいいんだな。で、置いていかないというなら、さっきの話はなかった。と、いうことで良いんだな?」
「それは……」
GUYコツが口を開くと同時にアンザイの手から何かが飛んできた。
ものすごい速度だ。目で追うのがやっとだった。
飛んできているものが、白い塊と気が付いた時には遅かった。
それは、GUYコツの顔の直ぐ横――頬をかすめると、そのまま後ろに飛んでいく。GUYコツは陽平を抱きかかえていることもあり、それを止める手段はなかった。
直後――
「ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!」「きゃあああ!!!!!!!!!!」
絶叫と悲鳴がGUYコツの耳に届いてきた。




