敗北
ライ雷オンが光っただけで、ビートブルーは吹き飛ばされた。
それを見ていた者が状況を正しく理解するためには少しの時間が必要だった。
芸術品のオブジェのような態勢で体育館の壁に張り付いたビートブルーの姿を見えてビートブルーが何かの攻撃されたと理解する。
そんなビートブルーは重力に負けるようにじりじりと地面滑っていく。
ビートブルーが息も絶え絶えになり地面に崩れ落ちるのを見て、誰かがぼそりと呟いた。
「たったの一撃で…… 戦いにすらなっていない……」
攻撃を繰り出したライ雷オンは体中から白い煙をまき散らしながらライ雷オンは
「ふんっ。準備運動はこんなもんですかね。」
と、言い放った。
その言葉に一切の疲れはない。
新しいおもちゃを見る子供のような目つきで倒れたビートブルーを一瞥し言葉をかける。
「もう終わりですか? ヒーロー君?」
当然、倒れたビートブルーから反応はない。
小さくため息を吐き出すと、一歩づつ、ゆっくりとライ雷オンは倒れたビートブルーの元に歩きだした。
「全く話になりませんね。ちょっとつついただけでお眠りですか?」
ライ雷オンは誰にも聞こえない声で小さくつぶやいた。
倒れたビートブルーの前に立つビートブルーを見るおろす時には、その目は飽きたおもちゃを見る子供の冷たい目に代わっていた。
「さて、このヒーローの処遇ですが、必要ありません。GUYコツをやる気にさせる人質は十分にいる。」
止めを刺そうとしていることは誰の目にも明らかだった。
ライ雷オンが拳を振り上げた。
「やめて!!!!!」
少女の絶叫が響いた。
羽の生えたミュエが手を広げてライ雷オンとビートブルーの間に立っている。
その目元には涙があふれている。
「ダメ!!!! ビートブルーを虐めないで!!!」
上ずった声で叫んでいる。
ライ雷オンは突然現れた少女を一瞥すると、興味がないかのように何も答えない。
拳をまさに振り下ろさんとするその時、横から少年の声によってライ雷オンの動きが止まる。
「ねぇ、ライ雷オン。ちょっとストップ!」
フェーンだった。ふよふよと宙に浮かびながら、ニヤニヤとしている。
「その子、有翼人じゃん。そのまま殴り殺すなんて勿体ないよ。いらないなら僕にちょーだい。」
「ええ。いいですよ。なら後はフェーン君に任せますね。そのヒーローもどうぞ。お好きに。」
「うん。いいよ、任せて。」
その場をフェーンに任せてライ雷オンはその場を離れ、体育館に設置された怪人の居場所に向かって歩きだしていた。
軽い返事を返してフェーンは唇をなめた。
その目には少年のものとは思えない厭らしい感じする。
ミュエは、ぞくりと背筋が凍るような感覚に襲われた。
「ヒィッ……」
「あはっ。こんなところで新しいペットを手に入れられるなんて僕はラッキーだな。」
「フェーン殿。ちょっと待って貰っていいかなぁ?」
そんなフェーンの動きを止めたのはゼクスだった。
「ちょっと待ってほしいんだよね。フェーン殿。その子はウチのメイドなんだ。ちょっと話をさせてもらっていいかなぁ?」
「ゼクス様! ビートブルーを――陽平君を助けてあげて! この学園でできたミュエのお友達なの!」
「そうだねぇ。いいよ。君のおかげで、この状況が作れたんだ。何かの褒美はあげなきゃだしねぇ。」
「えっ? ミュエのおかげ……?」
ゼクスの言っていることの意味が分からないミュエは混乱している。
「ということで、フェーン殿、悪いんだけど、そのヒーローに止めをさすのはやめてもらっていいかなぁ?」
「うん。別にいいよ。僕の興味はヒーローにはないから。それよりも……」
フェーンはニヤニヤとしながら、ゼクスの提案を飲む。
「その子は僕が貰っていいの?」
「お手柔らかにねぇ。フェーン殿はいつも乱暴が過ぎる。」
ミュエの目には二人が意味不明な会話をする悪魔に見えていた。




