裏切り者
この怪人の巣に唐突に表れた人物は、陽平とミュエが知る人物だった。
数日前にあった人物。この学園の理事を務めるゼクス。その人だった。
怪人だらけの体育館を見ても驚く様子はない。それどころかいつもの飄々とした態度のまま、普通に歩きだした。
「なんで、ゼクスさんがここに?」
陽平はミュエを見る。
その視線に答えるようにミュエは小さく首をふった。
「ミュエも知らない……もしかして、助けに来てくれたとか?」
「そんな雰囲気には見えないんだけど……」
囚われている生徒や先生。奴隷のように鎖に縛られて怪人に傍で俯いている梢。
ゼクスの視界には入っているはずである。
しかし、そういう物には全く目もくれず一直線に壇上に居座るライ雷オンの近寄っていく。
そして、ライ雷オンの前にたどり着くと一度止まり、ゼクスはゆっくりと口を開いた。
「貴方が怪人の王の方ですか?」
ライ雷オンも驚きの顔を浮かべてフェーンに目をやる。
フェーンが小さく頷いたのを見て、咳払いをしながら返事をした。
「えぇ、そうですよ。私はライ雷オンと言います。貴方がフェーン君の言ってた方ですね。」
「ゼクスと申します。お初お目にかかります怪人の王。」
ゼクスは帽子を取りながら丁寧に傅く。
敬意の現れがその姿からは感じ取ることができる。
「しかし、よく私が怪人のボスよくわかりましたな。」
「他の怪人とは纏うオーラが違う。一目でわかりました。流石にフェーン殿が褒めるだけあるなと思いましてね。」
「なるほど、慧眼がさえてますね。私もフェーン君から聞いておりますよ。優秀な内通者ができたと報告も受けています。今回も貴方からの情報があってGUYコツがここに潜むことが分かったと。」
その言葉で梢の顔を上げた。噛みしめる唇からはほんのりと赤い血がにじむ。
陽平もミュエも耳を伺う他ない。
ヒーロー側の人間、それも上層部が怪人と繋がっている。
そのことを言われているようなものだ。
「あのオッサン何者だよ……って、おい。陽平大丈夫かよ? めっちゃ顔青いぜ。」
陽平は「あぁ」と小さく相槌を返したが、クラスメイトの声が遠く聞こえいた。
ゼクスとライ雷オンの会話が続いている。
その話すらもどうでも良くなるくらいの裏切りを感じていた。
横にいるミュエは顔を青くして、口を抑えて震えている。瞳からは涙があふれているようも見える。
「お役立ていただけたなら何よりですとも。」
「して、ゼクス殿は何故ここに? この学園が危険な場所になるとわかっていたのでは?」
「私は今日が歴史的を刻む瞬間だと考えておりて、それをこの目で見たくてですね……お邪魔でしたか?」
「歴史を変える……?」
フェーンはニヤリと口角を上げながら話に割り込む。
「全く、ゼクスも来るなら連絡くらい事前に頂戴よね。急にくるとかいうんだもん。僕もびっくりしちゃうよ。」
「フェーン殿、それは失礼したね。だけど、君が教えてくれた事がどうしても楽しみでねぇ。」
「はぁ……悪趣味な奴~」
フェーンとゼクスは旧知の中の様に、話しだす。
それは、怪人とゼクスの繋がりが最近できた物ではない事を示してた。
陽平の握りしめる拳に力が入る。
「状況を読むとか。機会を伺うとか。そういうのはもういい!!!」
「ちょっ、陽平、どうした??」
ガタンっ!
檻の中で陽平は柵を掴み叫ぶ。
「ゼクスさん!!! いや、ゼクス!!! あんたがこの惨状を引き起こしたのか!! 絶対に許さね!ぇ!!」




