束の間の休息
キャットシーに案内されて、GUYコツ達は校舎三階の教室にたどり着く。
電気は消えており、人気はない。
「お嬢ちゃん、戻ってきたにゃー。」
教室の中で、キャットシーが凪を呼ぶ。
ロッカーががたがたと動き、そこに閉じこもり、一人待っていた凪が飛び出してきた。
「小宮さん遅いよー! 良かった。戻ってきたんだね! 化け物と二人で待ってるとか勘弁だったんだからな。 って……その傷……」
GUYコツの顔はボロボロだった。
骨が見えており、とても普通の人ならば生きている状態ではない。
「凪! ありがとうな。キャットシーが来てくれなかったら、俺は戻ってこれなかったよ。」
頬からむき出しとなった骨を掻きながら、GUYコツはそういう。
「やっぱり、小宮さんも化け物なんだ……」
人ならざるものを見て、凪の体が一歩後ろに下がる。
「はっはっ……――はぁ……」
当然と言えば当然の反応なのだが、凪の明らかな態度の変化はGUYコツの心に小さく突き刺さる。
乾いた笑い声の明らかに大きなため息を吐き出してうなだれる。
「だから言ってたじゃにゃい。GUYコツは怪人にゃの。」
そう擁護してくれたのはキャットシーだった。
「でも、あんたはGUYコツに助けられたでしょう? にゃら、GUYコツには言う事があるんじゃにゃい?」
いつもは飄々としている割に、こういうところの礼儀には煩いらしい。
子供諭すように、凪に言う。
「……ありがと……」
凪はぶっきらぼうにそうつぶやく。
感謝、恐怖、嫌悪。ちぐはぐな感情をどうしていいのかわからない子供には精一杯の態度であった。
「全く世話の焼ける子だこと。」
やれやれと、キャットシーは手を上げる。
「意外だな。」
「意外とは失礼にゃー。あたいは、助けて貰ったら礼はちゃんとするべきって思ってるだけよ。」
「カッコつけて飛び出して負けて帰ってくるなんてダサい事になって無けりゃよかったんだけどな……」
「それはそうねー。ほんとにGUYコツはボコボコにやられたもの。」
GUYコツとキャットシーがじゃれ合っていると、凪は只野博士を指差しながら、おずおずとした態度で口を開く。
「……あの……ところでそのお爺さんは誰?」
凪は難しい顔をしながらGUYコツとキャットシーと共に現れた人物に訝し気な表情を向けている。
GUYコツは一度博士に視線を送ると博士はゆっくりと頷いた。
「このジジイは、ただの怪人博士だよ。」
「怪人博士? 小宮さんやキャットシーと同じなの?」
同じという事は博士が怪人かどうかという事を聞いているのだろう。
その問いに間髪入れずに答えたのは博士だった。
「儂はヒトじゃよ。怪人ではない。」
「人を怪人にしておいてよく言いやがる。まぁ、実質、怪人みたいなもんだろ。」
ぬけぬけと答える博士にGUYコツはボソッとつぶやいた。
「えぇ? 化物を作った人? そもそも化物って作れるものなの?」
「そうじゃな。無論、多くの怪人は自然に異形化する。しかし、それを強制的に引き起こすことは可能じゃ。」
「人を化物に変えるって! それむっちゃヤバイ人じゃん!! 小宮さんもキャットシーもこの人に化物にされちゃったの?」
「あたいは違うにゃー。博士の事も知らなかったしー。」
「俺はそうだよ。博士に怪人にさせられたって訳。」
「だが、そのおかげでもう一度人生をやり直せてるじゃろ。儂に感謝するが良い。」
GUYコツはため息交じりで呆れながら凪に注意を促す。
「はぁ……このジジイに全く話が通じないから、同じ人だと思わない方が良いぞ。信用しちゃ駄目だ。怪人よりも十分質が悪い。」
「でも一緒にいるんだ? どうしてなの?」
「うーん……俺は怪人になりきって、人を襲うって事は俺にはできなかったし。――流れでなんとなく生きてちゃ駄目だなと思ったから。かな? それに放置できない問題もあるってわかったしな。」
「放置できない問題?」
「怪人よりもヤバイ敵って奴さ。」




