試合に勝って勝負に負けた
「……」
レットが完全に消え去り、静寂さが辺りに訪れる。
何も居なくなった場所をGUYコツは伏し目がちの瞳でただ見つめていた。
今回の戦い、自分が何かをできた訳ではない。
虚勢を張り、負けを認め、生を諦めた。
しかし、また生き延びてしまった。
何が起きたのかもわかっていないGUYコツには勝利の感傷に浸る事などできない。
ただ、自分は生き残り、目の前からレットとオレンシが消えた。その事実だけが、GUYコツの勝利を教えてくれていた。
「……」
止まっている暇はない。
それはわかっている。しかし、襲い来る虚無感に動く事ができなかった。
GUYコツがただ一点を見つけていると、自分を呼び声がする。
「GUYコツ!? おいぃ! GUYコツ!? 聞いておるのか!?」
GUYコツの視界が声のする方に振り向く。
そこには只野博士が立って居た。
手には何やら銃のような武器が握らられていた。
「博士? こんな場所で、何やってんだ?」
「何をとは、全く。お前らの帰りが遅かったからのぅ。様子を見に来たんじゃ。しかし来てよかったぞ。貴様、最後に戦う事を諦めておったろう?」
「そんなことは……」
図星を突かれて言い淀む。
「GUYコツ~!」
手を振りながら、キャットシーもやってくる。
「あぁ、キャットシー、お疲れさん。最後まで助けられっちまったんだな。」
「にゃはは。気にするにゃ。って、あれっ、博士も来てたのかにゃー? 機械直しは終わったのかにゃ?」
キャットシーは博士の方を見て、不思議そうな顔を浮かべている。
「いいや。まだ終わっとらんよ。しかし、主らは遅いし、ドンドンバタバタと煩いわで、居てもたってもいられなくて来たんじゃよ。
――じゃが、今回ばかりは正解じゃったようじゃな。あんな怪人に良い様にやられるとは情けない。」
「にゃはは。手厳しにゃー。GUYコツはともかくとしてあたいは、割といい勝負してたにゃ。」
「あいつらは強かったよ。俺には勝てる理由もなかった――痛っ!」
博士のチョップがGUYコツの頭に当てられる。
「主は阿呆じゃのう。怪人が強いのは当然じゃろ。勝負に勝つも負けるも、最後は心じゃ。心で負けた瞬間、どんな奴にも勝てる訳があるまい。主は最後の最後に諦めたから負けたんじゃ。」
「そう言われても……」
「ええい、うじうじとしとらんと、切り替えていけ。」
「まぁ、そうだな。」
「それで、今回の騒動に何があったか位はわかってたんじゃろう? 報告せんか。今はそっちの方が大事じゃわい。」
「実は分かってにゃいのよねー。」
「なにぃ? これだけの時間をかけて情報の一つもないのか?」
「仕方ないだろ。レットとオレンシとの戦いになっちまったんだから。本当はレットの奴から情報を聞こうとはしてたんだよ。」
「ちんたらしおって。この先が思いやられるのう。」
「それに何も分かってないわけじゃない。この騒動の大本の原因はネオ怪人協会が俺を狙って襲撃をしに来ているって話らしい。」
「つまり主が原因とな……あんだけ頻繁に外に出歩けば何処っからか主が学校に居るとバレるわな。」
「俺は学校の外には出てないぞ。」
「しかし、学校の中は気軽に出ていたじゃろ。はぁ……つまりGUYコツが蒔いた種でこの騒動が起きているのか。間抜けなのかタイミングが悪いのか。お主はもうちょっとだなぁ……」
博士の長そうな説教が始まりそうだ。
嫌な顔をしているGUYコツにキャットシーが助け舟をだす。
「ねぇ。GUYコツ? 博士と言い争いしているんじゃなくて、そろそろ助けた子の所に行ってやった方が良いんじゃにゃいの?」
「そうだな。凪にも礼を言っとかないとだな。」
「じゃ、あたいが案内するにゃ!」




